第90説 私が居住する苅田町には……
私が居住する苅田町には県の無形民俗文化財に指定されている祭りがある。苅田山笠であるが、歴史は古く、起源は十五世紀まで遡るようだ。以前は十月二日に固定されていたが、現在は十月の第一日曜日に行われている。祭りの準備から本番まで当番となった隣組が担当する。竹伐り、花つくりから始まって山車の組立て、飾りつけまで一ヶ月近くにわたって土日をつぶして作業が行われる。当番となった隣組の構成世帯は男女各一名を作業に出さなければならない。祭りの前日の土曜日の作業には勤務のある者は年休を取ってでも参加する。当番は六年に一回廻ってくる。この祭りを通じて隣組のメンバーは否が応でも互いに顔を合わせ、話を交わすようになる。祭りだけでなく、この地域には用水路や農道の整備、環境美化と称する草刈り・清掃など、居住民の共同作業が年に数回あり、それらを通しても区民の交流が行われる。農村地帯に残る昔からの風習だ。同じ集合住宅に居ながら互いに顔も知らないという都会の生活とは趣を異にする。居住民が交流することはいいことであるが、それゆえの人間関係のしんどさもある。地域ボスを生まず、区民が互いを尊重しながら親しみ合うという困難な課題がある。今年は私が所属する隣組が当番で、昨日が祭りの本番だった。山笠が終ってほっとしたところだ。




