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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第四十三話

頑張った!俺超がんばった!

そんな俺の頑張りをどうぞ

初見の感想は「精悍な美人」だった


俺の頬を叩く白衣の女性に驚き、よく見知った二人の顔に安堵し、そして初めて見る女性の姿を捉えて、ここだけの話、少し警戒心を抱いた

百合を指して人見知りすると言う俺だが、見知らぬ他人を警戒するのは俺も同じだ

寧ろ、俺の方がよりそういう傾向は強いと思う


だが、そんな事よりも驚いたのは、百合が全く不快感を覚えていない事だ

先にも言ったが、百合は人見知りする性質だ

俺達の生家と稼業を思えば、それは無理からぬ事ではあるが、百合のそれは一入だと言えるだろう

それについては、ここで説明する事ではないので省くが、そんな百合が側に置いているというだけで、割と驚きものだ

それは俺だけでなく、この場に居る木野も、この場に居ない百合の家族達も同様の筈だ


さて、肝心のその女性だが、その出で立ちを何かに例えて表現するならば、キャリアウーマンというのが最も当てはまるだろうか

それもとびっきりキツそうな、正直上司にしたくないタイプの女傑という表現が適当だ

ただ、傍から観賞する分には、寧ろこういうタイプの方が良いと、個人的にはそう思う


話を戻そう

そんなキツそうな女性だが、今は何か、苦悩を抱えているというか、苦悶に耐えている様な表情をして、こちらを、俺を見つめているのだ

状況も判らず、目覚めたら白衣の女性に頬を叩かれていて、人見知りするいとこは見知らぬ女性を引き連れて、その女性は痛ましげに俺を見つめている

それは混乱もしようというものだ


最も、白衣の女性の雰囲気はそれを優に上回り、すっかり巻き込まれ飲み込まれてしまった為に、自身の辿った経緯については完全に忘却の向こうへ行ってしまったのだが

いや、それまでも散々に驚かされたが、まさかそれ以上の出来事が待っているとは思いもしなかった


思いもしない王妃様との遭遇とマンツーマンの質問タイムに嬉し恥ずかし………出来る筈もなく、怒涛の質問デンプシーロールに翻弄されただけの、一方的な尋問タイムを何とかやり過ごし、なんやかんやあって、何故か百合と木野、ついでに王妃様が退室

残されたのは、件の妙な女性

イングリットさんという名前らしいが、それ以外が未だ以て謎だらけ

そんな人物と密室で二人きりになる、心穏やかでは居られない


ドキドキワクワクなど出来る訳も無いそんな状況下で、何やら聴き取りとやらをされるらしい

迷宮内でどの様な経緯を辿ったか、それらをどうして実行したのか、それを顧みてどう思うか、それは事細かに尋ねられたが、幸いにして記憶力は良い方で、更に迷宮内では常に緊張状態であった事が功を奏して、細部に至るまでしっかりと記憶していたので、聴き取りは滞りなく済ませる事が出来た


そして、ずっと気に掛かっている、彼女の表情

目覚めた時から今の今まで変わる事無く、何かを思い悩んでいる様な、苦しんでいる様な表情を絶える事なく浮かべている

しかし、それを指摘する事は出来ない

そんな親しい関係ではないし、何より彼女に対してあまり良い感情を持てないからだ

つまりは、彼女の苦悩を分かち合う義理など全く感じないのだから、指摘する理由もまた存在しないという事である

我ながら冷淡だとは思うが、これが俺だ

何もかも背負えるなんて、傲慢な事は決して言わない

俺が背負えるのは家族だけ

俺が気に掛けるのは家族の安全のみ


聴き取りは終わった様子なので、解散を提案したところ、彼女から話したいことがあると言われ、それに付き合う事にする

百合と親しい彼女が、どういった人物かを知るのは、俺の責務でもあるからだ

後は、純粋に好奇心からだな


「先程、私をユリさんの友人だと、そう仰ってくださいましたね」


急に先程の、世間話程度に発した事を持ち出され、僅かに戸惑いと疑念、警戒を抱く

在り得ない事だとは解っているが、近しい関係を免罪符にして群がり集る蝿の様な人間が、実際に世の中には相当数存在するからだ

そんな警戒心に、気付いているのかいないのか


「ええ。私も、マイシマ様とお呼びしてもよろしかったでしょうか?」


こんな言葉を続けるものだから、一層警戒心を強めてしまうのは、我ながら悲しい習性だと思う

だが、幾ら資産が有ろうが、誰彼構わず受け入れていては、直ぐに枯渇してしまうのだから、これも自衛の為と割り切っている

そんな軽い逃避を蹴飛ばす様に、それらがただの杞憂であったと気付かされる


「……それは、これからの話次第ですね」


彼女、イングリットさんの態度が、妙に自虐的というか、それでいて不自然な害意を感じさせるものへ変化したからだ

丁度、裏切りを犯そうとする感じに似ているだろうか

だが、俺達の間に、裏切るに足る関係性など一切ない

ならばこれはどういう事なのか


返す言葉が険しさを増すのも、そうした疑念より発しているのかもしれない

自然と気が引き締まり、防衛迎撃体勢が瞬時に整う

その緊張感が伝わったのだろう

目の前の女性が身を固くするのが解る


(……意外と程度が低いんだな)


俺達に付けられた彼等は、この国でも有数の実力者だと聞いている

あのいけ好かないアルベルトも、一等近衛騎士って言ってたっけ?

少年漫画みたいに、その上に超級とかS級とか秘密の隠密部隊とか無い限りは、その位が近衛的には最上級だろう、責任者階級を除いて

ならば、やはり奴もイングリットさんも、相当の実力者……の筈だ


そんな実力者が、俺の準敵対姿勢に怯む………うん、在り得ないな

単純に彼女がそうした弱点を抱えているのか、これがこの国では普通なのか


そんな事を考えながらも、不穏な会話は続く

彼女の口調はこちらを責め立てるものだが、その全てから躊躇と罪悪感を撒き散らしているので、はっきり言って脅威も恐怖も感じる事は無い


(これは、彼女特有の弱点なんだろう)


早々に評価を下す

これが標準でない事に安堵しながらも、百合と木野付きの人がこんな様では、強く不安を感じて仕方がない


(こんな人任せな事を考えるようになるなんて……)


他力本願な思考に、自身の堕落を痛感してしまう

だから、きっとそのせいだ

この後の言葉に、異常なほど取り乱してしまったのは


「そして、その結末は惨めな敗走。いえ、敗走も出来なかったんでしたね」


「っ!」


何と言った?

今、何と言ったのだ?


俺が敗走?

俺が敗けた?


(そう、そうだ)


そもそもからして、初めに聞いていたではないか

俺は酷い怪我を負ってここに運び込まれた

イングリットの言葉を借りるなら、百合と木野に助けられて、ここに連れて来られた

それが意味するものは一つ


(俺は……敗けたのか……)


一度は逃げて耳を塞いで隅に追いやった事実

それを、唐突に突き付けられ、急速に理解させられる


瞬間、全身の血の気が引く音を幻聴した

先程まで全身に横溢していた意気は、見るも無残に破れ散った

何とか繋ぎとめていた矜持も、遥か彼方へ消え去ってしまった


「貴方は、一体何がしたかったのですか?」


誰かが何かを言っている

間違いなく俺に向かって言っている

誰が…?何故……?俺に………?

さっきまでしていた事にも思考が向かない

在るのはただただ茫漠と広がる荒野にも似た絶望と虚無感


「……マイシマ様?」


それは俺の名前……

いや、どうだったか


歯を食いしばる

そうしないと、体から全ての活力が失せてしまいそうだから

強く拳を握る

そうしないと、遮二無二暴れ出してしまいそうだから

呼吸を止める

そうしないと、胃の中を全て吐き出してしまいそうだから

瞼をきつく閉じる

そうしないと、涙と一緒に何か大事なものが流れ落ちてしまいそうだから




どれくらいそうしていただろうか

いつの間にか周囲には誰も居なくなっていて、白い殺風景な部屋に一人きり

息が荒い

はっきりと判る程の喘鳴を鳴らして、喉が気管が肺が空気を求めている


「フゥーハァー」


深呼吸する事で、体だけでなく心にも平静になれと命じる

落ち着きを取り戻した思考で、今すべき事を考える


「……いや、もうそんな事をする意味も無いのか……」


正に乾坤一擲だった

ここを乗り切れるなら、まだ希望は繋がると

どんな困難でも、どれほどに絡まった結び目も、一つずつ解いていけば、何時かは光明も見えるのだと

そんな儚い希望に縋りついた、その末路がこれだ


「クフフフフハハハハハハ……そもそもの前提が間違っていたんだよな」


よしんばレベル上げを恙無く終えられたとしてもだ

完成するのは一般程度の身体能力だけ

アビリティ周りに強化の道を見出せるか?

いや、望みは薄いだろう

調べた限りでは、それほど劇的な強化が施されるものではなかった

では魔法か?

それもどうだろうか、疑念は尽きない

それに惨めな敗北を喫した身で言うのも厚顔だが、あれにそれほどの戦力があるとは思えない

軌道が単調すぎるのだ

ただ放出するだけ、ただ前に飛ばすだけ、ただ垂れ流すだけ

言い方は様々だが、総合して言えるのは、応用性が無いという事だ

戦技戦術というものは、単調ではダメなのだ

一つの基礎を、数多に応用分岐出来てこそ一流の技法と言える

自分が使えないからと、強がりや嫉妬心から貶めているのではなく、純粋に応用法を思いつく事が出来なかった

実際に自分で使えればまた変わるのかもしれないが……


そこまで瞬時に思考を発展させて、ふと壁に阻まれる心持ちになる


「……はぁ……だから…もう意味が無いんだって……!」


用意周到に突き詰めて、細心注意を払って、万難を排して臨んだ戦いだったのだ

はっきり言ってあれ以外の方策は、悉くが成果を望めない程度のものしか思いつかなかった

あれが、最初で最後の第一歩だったのに……


「敗けた……俺は敗けた」


敗けたらダメなんだよ

俺は一枚の盾

その盾が貫かれたら、何が守ってくれるんだ?

その盾が砕けたら、誰が救ってくれるんだ?

俺の大事な者達……母さん、叔父さん、叔母さん、百合、牡丹、木野………アイギナさん……


もう誰も失いたくないから、だから強くなったのに……


「ふっ……くっあっ……」


俯いた俺の視界に、雫で濡れるシーツが映る

知らぬ間に溢れ出た涙は、そうと自覚した途端に我慢の堤防を決壊させて氾濫した

父が女と逃げて、涙する母の姿に流して以来の涙が、止め処無く流れ落ちる

この場に人目が無い事だけが、唯一の救いだった

さて、イングリットさんの、更にはその裏に控える国王ギュスターヴさんの思惑とは少し違います

彼の考えでは、守るべき対象を危険に曝した事を指摘して心を折ろうと画策しました

ですが、理くんはそれには触れていません

それは偏に、理くんの百合ちゃんへの接し方にあらわれています

それが何なのかは、皆様でお好きな様にお考え下さい

説明するつもりはありませんので


さて、あまり関係ない事ですが、今年の抱負をここに掲げたいと思います

ひと月三話投稿!ひと月三話投稿!

去年は途中で更新が大きく失速しました

気分転換にと、適当な話を投稿するも、速度の改善には至りませんでした

それは今も変わりませんが、二つの理由から、今の様な投稿速度ではいけないと思い至り、ここで一つ自分を追い込んでみようかと

というわけで、来月から三話投稿を心がけていきますので、期待しないで待っててくださいませ

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