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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第四十一話

消しては書き直し、消しては書き直しを繰り返して

やっとの投稿

前半の感じは非常に苦手です

「ふぅ……」


何だか気の抜けてしまった私は、頽れる百合を一瞥する

軽く睨みつけるが、それでも物足りなさを覚えたので、軽く制裁する事にした


「痛っ!」


やると決めたからには景気よく、バチンッと快音鳴らして百合の頭を叩く

最早恒例行事と化してしまっている

実は、毎回毎回同じ所を狙って叩いているのだ

そこから毛が薄くなって、禿げたら面白いなとか考えているのは、誰にも内緒だ


「変な茶々を入れないでよ、全く」


内心では結構鶏冠に来ているのだ

私だって、好き好んでイングリットを責め立てていた訳じゃない

一体誰が、友人に辛辣にしたいと思うだろうか

それでも、彼女が土足で踏み入った場所は、極めて繊細な部分だった

到底、許容できない程に


舞島くんは人殺し

その事を、当の本人から聞かされた時は、それは驚いたものだ

如何に大恩人の言葉でも、一女子高校生の器では、受け止められるものと受け止めきれないものがある

いえ、ちゃんと受け止めたけれど

それでも、大恩人……じゃなくても、同年代の男子から、自分は人を殺した事がある、なんて言われば、驚いて当然だと思う

性質の悪い冗談だと笑い流すのが普通だろう


でも、その辺りの事情を聞かせてもらって、ちゃんと受け入れる事が出来た

人を守る為に人を殺す

その行いに、賛否是非は在ろうが、私はそれを責めない

助けられた者が、どの口で助けてくれた人を責められるというのか

私はそれを知って、寧ろ舞島くんへの崇敬の念を強めた程だ

彼は、しっかりとした価値判断基準を持って行動している


そんな彼の思いも知らず、自分達の常識に則って、悪し様に非難しようとした

そんな友人に制止の言葉を掛けるのは、友人として当然の義務だろうと思う


流石に、感情的になり過ぎた嫌いはある

それは反省すべきだろう

だが、後悔は無い

たとえ、この件が原因で、イングリットとの仲が険悪になっても

譲れない一線が在るのだ


それも、百合の突拍子もない行動でご破算になったけど

取りあえずは


「……フッ!」


一発では足りないので、もう一発叩いておく

「人とは、痛みを伴わない教訓は忘れてしまうもの」

とは、百合のお母さんの言葉だったか


百合の教育に、相当苦労してきたのだろうな

そう慮ってしまうくらいには、含蓄のある言葉だった


「気軽にバシバシ叩かないでよ!もう…!」


……反省の色が見えないが、これでちゃんと省みてはいるから不思議だ

やり過ぎたと反省している今回に限っては、ここで強圧的に抑え付ける事は出来ない

更には、少し慰める必要もあるだろう


「はいはい、やり過ぎたわよ。ごめんなさいね」


なでなでする

すると、痛みで涙目になり、顰められていた表情が蕩ける様に緩められる


百合の特徴として、極めて野性的な気質を持っている事が挙げられる

決して頭は悪くないのに、直感的な行動が基本である為、どうしても短絡的になりがちで、結果馬鹿に見られてしまう

その実、極めて合理的な行動である事が殆どなのだが、それを理解できるのは、ごく近しいひとつまみの人間だけだ


そして、そのひとつまみの人間からの接触をこの上なく好むのだが、そうすると、あら不思議、ちょっとした不機嫌なら、一発で吹き飛んでしまうのだ


今回も、それは遺憾なく発揮され


「も、もう……仕方ないなぁ。今回だけだからね?」


彼女と友人になってから、何回目かの「今回だけ」が飛び出てくる


(こんなに簡単でいいのかしら?)


と心配してしまうのは毎度の事だが、少なくとも、件の”ひとつまみ”の中に、百合を害しそうな人は居ないので、直ぐに杞憂だと掃いて捨てる


因みに、この撫でるのを最高効率で行えるのが、他ならぬ舞島くん

彼が撫でれば、それこそ発禁レベルで蕩けてしまう

写真に撮ったなら、モザイク修正しなければ、とても他人様にお見せできないくらいだ


「こほん!」


気を取り直して……


「イングリット、貴女がどう思おうが、それは貴方の自由よ」


でもね……


「私達には、私達の道理があるの。それだけは忘れないで」


滑ってしまったけれど、これだけは言っておかなければならない

ここで譲ってしまえば、最悪、この世界が舞島くんの敵になる


何を思っているのか知らないが、どうやら王様以下重臣方は舞島くんにご執心の様子

私達の中で唯一、能力が劣っていた舞島くんを、非常に厚く遇してくれている事からも、それが窺える


(本当なら、ここまでの支援は得られないのが普通でしょうし)


食事や寝床、衣服等の支援はあって然るべきだと思うが、彼が実際に受けている内容はそれを逸脱している

はっきり言えば、彼に戦闘回りの支援をする必要など無いし、何らかの仕事を与えるのが普通の対応だと思う


(彼の能力を買っているというのなら、尚更実務に駆り出すべきなのに、それをしない)


そこから推測できるのは……

一つは、彼を心底から取り込む為

お世辞にも、舞島くんの戦闘能力は高いとは言えなくなってしまっている

そんな彼が戦いの中に赴けば、手痛いしっぺ返しがあると考えるのは自然な流れだ

そうして心折れた彼を取り込むというのは、割とありがちな話ではなかろうか


二つは、本当に単純に、彼を気に入っている為

この場合は単純だろう

気に入っているから、好きにさせるし、支援も出来る限りする

為政者的には在り得ないとは思うが、権力者という観念から見れば割とありがちとも取れる


結局は、今後の推移を見守るしかないという結論に至るのだが


「それも、全ては舞島くんが目覚めてから……」


そう、思わず口から漏れ出た言葉は、少し弛緩し温まっていた部屋の空気を、一気に急落させるに足る力があった

しまった、と思うも、時すでに遅く、後悔は先に立ってはくれない


「……理、まだ目覚めないね……」


明らかに落ち込んだ様子を窺わせる、百合の声色に、どこか楽観視していた自身の認識の甘さを突き付けられた様な気持ちにさせられる


(確かに、あれだけの大怪我とは言っても、目覚めるのが少し遅いのではないかしら?)


身体が怪我の回復に専念しているという訳でもない

相当に体力を消耗しているのか、とも思うが、それでも一度生まれた不安は消えてはくれない


「……回復魔法には反動……と言いますか、大きく疲労してしまう副作用があるのです。マイシマ様が未だに目覚めないのは、そのせいなのかもしれません」


「そう……」


イングリットの気遣いから発したであろう説明も、百合には効果が薄かった様で、気の無い返事だけが空しく響き渡った


「……百合、気が急いているのね。あなたらしくないわよ」


百合なら大体の事は、なんとなく、の一事で直感してしまえる

その百合が、舞島くんの目覚めの遅さを心配しているというのは、個人的には良くない傾向だと思う

だからこそ、それを百合の焦りだと断じてしまいたい

そんな、私自身の焦燥感から発した言葉だったが、百合には割と効果的だった様で


「そう、かな?そう、かも…」


自分に言い聞かせている様にしか聞こえないが、それで状態が良くなるなら、それもまた人間の知恵というものだろう


「ええ、そうですよ。それに、状況を聞いた限りでは、相当に厳しい戦況だったようですし、その際の精神的な負荷があって、それで心身の疲労が強く出ていてもおかしくありません」


「うん、本当に…もう少し到着が遅れていたらと思うと……」


それは私も同様に思う

次があると思って行動するな、とは言うが、幸いにして次は残されている

今度が無い方がいいのは判り切っているが、もし次があったら……


三者三様に、思考の淵に沈みこんでいた時だった


「……う、ぐっ……」


舞島くんが身動ぎした、ただそれだけ

だが、それだけのことが、私に、そして百合に与えた衝撃は殊の外大きかった


「百合!いま」「美樹!理が」


「「動いたわよね!!!?」」


漫画なら、大きく擬音が描かれる程に大きな所作で、互いに向き合い叫ぶ百合と私

だが、忘れてはいけない、ここは所謂病室だ


「静かにしな、騒ぐんじゃないよ」


何時の間にやら、部屋の中に入ってきていた白衣の熟年女性が、私達の頭を叩きながら注意する

本当に、何時の間にか接近されていた

油断大敵とはこの事だろう


白衣の女性は、私達の頭を叩いたであろう手に持った硬そうな板を脇に抱えなおすと、徐に舞島くんに近づいて


「今日は起きるかなー?ほれほれ」


昏々と眠りに就く、その頬をぺしぺしと手のひらで叩き出した

呆気に取られたが、流石にこんな事を見過ごす事は出来ない


「ちょっと、何してるんですか!?」


止めようとしたところ、流石の百合が間髪入れずに制止に入ってくれた

こういうところは、ホントに見習いたい


「あん?起こしてるんだけど、見て判らないかい?」


自分は何もおかしな事してません、寧ろ制止する百合がおかしいと言わんばかりに、その手は一切留まるところを知らず、ぺしぺしと舞島くんの頬を叩き続ける

どうでもいい事だが、やけに仕草が堂に入っている気がする


「酷い怪我をしていたんですよ!?それを無理矢理起こすなんて!」


「何言ってんだい。怪我なんかとっくに治したさね。回復魔法の反動も、こんだけ寝れば問題ないよ」


説明にも、強い説得力が籠っている気がする

その格好といい、もしかしてお医者様なのかしら


「ねえ、イングリット。あの人は誰なのかしら?」


「彼女は、この施設勤めの治療師ですよ。マイシマ様の治療を担当したのは彼女です」


腕のいい一流の治療師ですよ、と説明する言葉からは、強い信頼感が窺えた

過去にお世話になった事があるのだろうか、と疑問が湧いたが、尋ねるべき事ではないと蓋をする


「なら……百合!止めなさい!」


「でも、美樹!こんな……」


「いいから落ち着きなさい!」


動揺する百合を、女性から引き剥がし、椅子に座らせて抑え込む

後は、頭を撫でれば……あら不思議

激しく動揺していた百合が、ぬるま湯に浸かった様に落ち着きを取り戻したではありませんか


と、冗談はここまでにして、女性を問い詰める


「舞島くん……彼は目覚めるのですか?」


何はなくとも、これだけは聞いておきたい

これが知れるだけで、お医者様に保証を頂けるだけで、どれだけか安心できるのだから


「覚めるさ、何を当たり前の事を」


ほっと一息を吐く

傍からも同じ気配がしたので、きっと百合も同じ気持ちなのだろう


「それは何時になるでしょうか?」


ならば、もっとと、欲張ってしまうのが人間で、それは私達も例外では無い

目覚めるという保証があるなら、それは何時になるのか、尋ねたくなっても仕方ないのではなかろうか


「それが判ったら、こうして毎日起こしに来やしないよ」


毎日来ているのか……

私達も毎日来ているのだけど、入れ違いになっていたのか


「あの……そうやって、無理に起こす必要があるのでしょうか?」


実に度し難い質問だと思う

起きてほしい、起きるのか、それは何時だ、と尋ねておきながら

だが、それもまた偽らざる気持ち

大変な思いをしてきたであろう彼を、暫く休ませてあげたいと思う事は、ごく自然な感情の発露だと思う


「無いよ」


どうも、この女性はサバサバしていると言うか、豪快な性質と言うか……

物凄く端的に話すから、逆に理解に苦しむ羽目になる


「えっと……それなら、暫くゆっくりと休ませてあげたいのですが」


会話のキャッチボールが出来ない、投げても本塁打にされてしまうのだから

ならば、仕方ない

こちらはただ一方的でも、要求を伝えるだけだ


「……」


すると、急にこちらに顔を向けて、じっと見つめてきた

今まで、会話をしながらも、その手は止まることなく舞島くんの頬をぺしぺしと叩き続け、その眼は舞島くんの様子を観察し続けていたのに


「えっと、な、何でしょうか?」


「アンタ達、コイツの女かい?」


「そうです」「違います」


百合と私の返答が被る

いえ、私は違います、というか百合も違うでしょうが


「なら話は早い。コイツの身体はもう万全だよ。連れて帰っとくれ」


話が出来ない人との会話は本当に疲れる

でも、大事な話なので、切り上げる事はしない


「あの、私達は彼のお、おん、女ではありません。それに、彼を連れ帰るって、大丈夫なのですか?」


「大丈夫だって言ってるだろ?寧ろ大丈夫だからこそ、とっとと出て行って欲しいんだよ」


やっと話の趣旨が掴めてきた

つまり、こういうことだろう


「彼を起こそうとしていたのは、もう起きても大丈夫だからで、早くここから出したいから、という事ですか?」


今迄の会話を纏めるとこうなる

合っています様に、と祈る一念が通じたのか


「そう言ってるだろう?で、連れて帰ってくれんのかい?くれないのかい?」


返ってきた答えは、さっきまでの不安を、一気に払拭してくれるものだった

完全に安堵した私達は、心なしか弛緩した心持ちで、この疲れる女性に向き合う事が出来る様になった


「ねぇねぇ、連れて帰ってもいいの?おばさん」


「そう言ってるだろうが、あと誰がおばさんだい。あたしゃこれでもまだ三十代だよ、お姉さんと呼びな、お姉さんと」


三十代なら立派におばさんではないだろうか、とは口にしない

私もそうだが、女性は特に年齢を気にしがちだ

甚だしい例を挙げれば、誕生日を祝われるのすら嫌だ、という人も居るのだから、相当だろう


「あの、私達は他人様のお家に厄介になっていまして、その……気軽に連れて帰る訳にはいかないのです」


間違いでは無いし、嘘でもない

私達が宿としているのは王城で、王城は国の持ち物である

少なくとも、借りている部屋に男をつ、つれ、つれれ連れ込むなんて事は出来る訳が無い


「あぁ?何言ってるんだい。アンタたちもコイツと同じなんだろう?」


一人内心で動揺していると、予想外の答えが女性から返ってきた


「え?ご存知なのですか?」


「当たり前だろうが。私は治療師だよ?アンタたちの面倒を見る様に、陛下から仰せつかっているに決まってるだろう」


考えて判らないもんかね、と愚痴る女性

確かに、と納得してしまった私

何やら飲み込み切れていない様子の百合

我関せずと傍観者を決め込むイングリット


四者四様の室内で、ぺしぺしからパチンパチンへと、何時の間にやら強度が変化していた頬を叩く音だけが鳴り響いていた

さて、大分投稿が遅れました

前書きに書いた通り、前半の重苦しいというか先の見えない感じの空気は、書いてて凄い苦痛です

嘆きが何時までも続きそうで、でも強引に思い切らせるのもおかしいと感じられて

その度に消しては書き直しをしてました

結局は、使い古された技法「機械仕掛けの神」「デウスエクスマキナ」「時の氏神」に頼るしかなかった次第です

流石に何も無かった、全部元通り、という訳にはいきませんのでひねりを利かせましたが、如何でしたでしょうか?

ちょっと強引ちゃう?と感じられましたら、そこは私の不徳の致すところ

今後精進致します

いや、そんなん言われるまで気付かんかったわ。と思われた方

(・`ω・)ドヤッ


と、前置きはここまでにしまして

次回は理くんお目覚めです

視点は、恐らく二転して、理→イングリット→理、となると考えています

はい、イングリット視点が挟まる時点で、どうなるかはお分かりでしょう


では、次回を乞うご期待、と締めまして筆を置かせていただきます



ところで、理くんは既に今回で目覚めているのですが、どのあたりのタイミングか解るでしょうか?

流石に一切そうした描写をしていないので、ここだ!とは断言できないでしょうが、ここ以降なら起きててもおかしくないよな?という部分は描写しています

そこら辺を考えるのも、一興かもしれません

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