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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
32/130

第三十一話

続いて三十一話です

これも、当初予定していた話とは大分変っています



「…!?な、何!!?今の大声!!?」


ここは王城の一画

政務を司る区画を、私達は歩いていた


それは何故か

いつ間にやら、割り当てられた部屋から居なくなっていた理を訪ねにやって来たのだ

事が発覚したのはつい先程、早朝から昨日の狩りの反省会をしていた時の事だ


私と美樹は、朝食を済ませた後、王城の一画にある私に宛がわれた部屋に集まり、今後の事を相談していた


「だからぁ!私が突っ込むから、出来た隙を突いて美樹の剣を叩き込むんだって!拳と違って、剣は殺傷力が高いから、それでお終いでしょ?」


「前提がおかしいって気付いて?突っ込むのは、まあいいとしましょう、本当は全然良くないけど。そもそもどうやって隙を作るの?無策で突撃して、必ずしも上手くいくとは限らないのよ。アンタ、そんな不確か過ぎる安直な案に命を懸けるの?私は嫌よ、立てられる作戦をいい加減に済ませた結果、惨めに死ぬのは」


相談…というか、私がバンバン案を出して、それを美樹が片っ端からダメ出しするだけなのだけどね


「あと、この世界では拳だから剣だから、では殺傷力は変わらないわよ。忘れたの?」


「……あ」


「あ、じゃないわよ。まあ、出血による継続ダメージがある分、刃物の方が有利なのは確かだけどね。あとは間合いかしら」


ずっと論破されてきた私に、美樹がダメ出しをするが、流石に戦いの技術は私に一日の長があるね

美樹がふと漏らした言葉を拾い上げ、勝ち誇った様に反論する


「ふふーん、美樹ちゃんや。間合いが遠い事、広い事は必ずしも有利に働くわけではないのだよ」


掛けてもいない眼鏡を持ち上げる仕草をしながら、若干偉そうに講釈を垂れる


「間合いが遠いと、懐に入られた時に一気に不利になるし、間合いが広いと攻撃の連続性が損なわれ、結果として大きな隙を生み出してしまうんだ」


生えてもいない口髭を撫でる仕草をする

何だかとてもいい気分


「そうなのね…流石は舞島くんだわ。ホント、為になるわね」


あれぇ〜?


「いや、舞島くん、じゃなくて、舞島さん。私、舞島さん」


自分を指差しながら、私だよ〜、と空しいアピールをする、空しい私

確かに、今の解説は理の言葉をそのまんま流用、いや引用したものだけど、何故にバレたの?


「だって、百合にそんな事が解説出来るわけないもの。アンタ、直感で理解してるクチだから、説明が凄く下手なのよね。今のだって、近寄られたら危ない、とか、何だか動きにくい、とか言いそうだし」


「ぐう…私の事をよくお分かりで……」


確かに言いそう、とか思ってない、思ってないったら思ってない

嘘です、ホントは言いそうと思いました、というか、理がその話をした時に言いました


「このまま、二人で相談していても埒が明きそうにないわね」


それは主に私のせいですね、ホントに申し訳ない

いや、私だって頑張ってるんだよ?でも、どうしても直感でしか語れないんだよね


「ねえ、舞島くんって今何をしているのかしら、百合は知ってる?」


私が自虐していると、美樹がそんな事を言い出した


「理?ううん、あれから会ってないから、噂程度しか知らないな」


我ながら、呆れるほど薄情だと苦笑する

あれだけ好きだなんだと言ってながら、この状況でその動向を一切把握していないなんて

確かに、理を信じて待つとは言ったが、だからって完全に放置して良い訳じゃない

やっぱり、こっちに来てから忙しかったからかな、と言い訳する


「考えたのだけど、舞島くんに相談に乗ってもらわない?彼なら、いい助言をくれると思うのだけど」


「それだ!」


漫画だったら、大きい一コマを一人で占有する勢いで、ビシッと美樹を指差す

美樹は若干驚いた様で、軽く後ろに退がった


「……じゃあ、早速舞島くんの部屋に行きましょうか」


「うん!行こう行こう!!」


善は急げとばかりに、ズンズンと先を行く

後ろで美樹が苦笑していたが、私がそれに気づくことは無かった



「……理の部屋ってどこ?」


部屋を飛び出し、廊下をしばらく進んだところで重要な事に気が付いた

そもそも私は、理がどの部屋を与えられているか知らないのだ

あまりに不覚に、軽く呆然とする


「そんな事も知らずに、あんなに喜び勇んでいたの?まったく、しょうがないわね」


そう言って、慈愛に満ちた微笑みをこちらに向ける美樹

もの凄く居た堪れないです


「あ、ちょうどいいわ。あの人に訊いてみましょう?」


廊下の向こうからやってくるお手伝いさん、エプロンドレスを着ている女の人を指して、美樹がそう提案する

提案というか、完全に事後承諾みたいな感じだ、寧ろこちらの意見は聞いてない

さっきとは真逆で、美樹が妙に行動力を発揮し、私はその後をチョコチョコと付き従った


「すみません、ちょっとお時間を頂けますか?」


美樹がそう、エプロンの女性に声を掛ける


「はい、何か御用でしょうか?」


エプロンの女性は、営業スマイルを浮かべて対応してくれた

大人な対応に、少し気を良くした私

そんな私とは違い、美樹は特に気にした様子もなく、早々に質問した


「友人の部屋を訪ねようと思ったのですが、その友人の部屋を知らない事に気付きまして」


「御友人の御名前を教えて頂けますか?」


実に話が早い

これが出来る大人なのかな


「舞島 理です」


美樹がそう言った時、一瞬相手の顔が強張った様に感じた


(なんだろ?何かおかしなこと言った?)


そう考えてみるが、言ったことといえば理の名前だけ

まさか、理の名前が引っ掛かった?


(そんな訳無いよね)


疑問もすぐに振り切って、気のせいだと結論付けた


「マイシマ様ですね。少しお待ちください」


丁寧にお辞儀して、曲がり角の向こうに消えるエプロン女性…言いにくから召使いさんでいいよね

少しってどれくらいだろう、なんてどうでもいいことを考えてたら、本当にすぐに召使いさんは戻ってきた

早いな〜、流石に働いていると、そういう動きは速くなるのかな〜、などと暢気に考える


「マイシマ様ですが、今はこの区画にはいらっしゃらない様です」


その言葉を聞いた途端に、そんな暢気さは消し飛び、驚愕に思考が彩られた

今にも飛びつきそうな私を制し、美樹が代わって問いかける


「それはどういう事でしょうか?彼は今どこに?」


美樹から滲み出る並々ならぬ迫力に、召使いさんは何か失言をしたかと焦りを見せる


「え、ええっと、マイシマ様はどうやら政務局にある大書庫に通っていた様です。それで、住まいはそこに近い場所が良いと仰られたので、その様に対応した、との事です」


どうやら、理が理不尽な目に遭っている訳ではないようだ


「じゃあ、理はその政務局、とかいう場所の近くに住んでるの?」


私がそう質問すると、召使いさんは頷いて、そうです、とだけ答えた


「その政務局というのはどう行けばいいのですか?」


美樹がそう尋ねる

そうそう、私達は理に会いに行くんだった

それ聞かないと、理に会いに行けなくなるところだった


「ご案内します。ここからかなりの距離を歩くことになりますので」


どうやら相当に遠いらしい

理が部屋の移動を願い出るくらいだもんな


私達はその申し出を受け、彼女の案内で政務局のある区画までやって来た

ちょっと隣町まで、くらいの距離は歩いたと思う

これは、毎日通うつもりなら、部屋の移動も当然だわ

こんな距離、毎日歩いて通うのは大変だもん


聞くところによると、城内に住んでいる人達は皆、自分の勤めている部署のある区画の中に部屋を持っているのだそうな

こう、円形に建物を配置して、その中心に住まいを集めた建物を造るとか出来なかったのかな

絶対にそっちの方が効率的だと思うけど


と、まあ、その道中で突然の叫び声、というか吠え声を聞いた訳で

その事に驚いていたら


「ははっはははははははっははっははは!!!!!見たか、聞いたか!?胆が据わってるだけじゃない、揶揄っても面白いときたもんだ!!俺は益々気に入っちまったなぁ!!」


前から、そんな豪快な笑い声が聞こえてきた

更に少し進むと、その声の主が、皿と盃を手にこちらに歩いてくる様子が見えた


「何だか豪快な人ね……どこかで見た事ある気がするのだけど………誰だったかしら?」


「さぁ……?」


隣を歩いていた美樹が不意にそう溢した

私も呆気に取られて、生返事を返す


「お二人ともご存知の筈ですよ。あの方は国王陛下です」


意外や意外な御人の事が出てきて、流石に私も驚きを禁じ得ない

どうやら隣の美樹も同じようで、珍しく目を丸くしていた


「え、お、王様?え、でも、前に見た時はもっとこう、しっかりした印象だったけど…」


「ええ、これぞ正しい王様、って感じの、カッコイイおじ様だったと思ったのだけど……」


廊下の向こうからやって来るおじさんは、どう見てもただのおじさんで、多分だけど酔っ払ってる

誰かを揶揄ってきた後みたいで、その人が面白いから気に入ったとか言ってたな

誰かは知らないけど、御愁傷さま

酔っ払いに絡まれるほど鬱陶しいものはないと思う

王様に気に入られるっていうのは、本当ならいい事なのかもしれないけど、あんな酔っ払いはゴメンだね


「はぁ……そんな事言って、嫌われても知りませんよ、私は」


国王様一人かと思ったら、後ろに付き従う様にもう一人居た様だ

……何か大きな樽が浮かんでるな、とは思ったが、あれ、人が持ってたのか……そんなの当たり前か

その会話相手の声には聞き覚えがあった


「あれって元帥さん?」


「そうみたいね。あの二人って、相当偉い人だと思うんだけど、暇なのかしら?」


いやいや、美樹ちゃん

いくら忙しいって言っても、流石に休日くらいあるでしょ

で、二人は休日の朝っぱらから酒を飲んで、誰かに絡んで揶揄って遊んでいた、と

うん、仲良くしたくないタイプだ


「何だか面倒そうだし、軽く挨拶するだけにしよっか」


「そうしましょ。すまじきものは宮仕えと酔っ払いの相手って、昔から言うものね」


何それ?と思ったが、訊くのは止めた

わざわざ自分から藪を突っ突く必要は無いもんね


「馬鹿、ヘクター!アイツはそんな事で怒るようなタマじゃねぇよ!」


「陛下、本当にサトルを気に入ってますね。それ、暗に嫌われたくないって言ってる様なものですよ?」


理?今、元帥さん理って言った?


「……美樹、どういう事だと思う?」


「……解らないわ…ただ、あの二人とかなり親しくしているみたいね……」


いや、まだ、別のサトルさんの可能性が……サトゥルヌさんとか


「こら、現実逃避しないの」


ベシッと頭を叩かれて、ハッと正気に戻る


「まだ理と決まった訳じゃないもんね!」


「戻れてないじゃないの。この西洋風の世界でサトルなんて名前がある訳無いでしょ!」


今度はバシッときつめに叩かれた、ちょっと痛い


「ん?サトル?」


叩かれた痛みを訴えていたら、急に渋いおじさんの声がした

どうやら声を掛けられたみたいで、先導していた召使いさんが凄い恐縮している


「お前らサトルの知り合いか?」


そう言ったのは国王様

青紫色の髪と瞳が、何だか目に悪そうな人だ

話口調から、柄も悪そうだ


「陛下、彼女らはサトルと同じ異世界人です、お忘れですか?」


そう説明したのは、頬に走る傷が中二心をくすぐる元帥さん

間違いなく私の腕じゃ回り切らないくらい大きな樽、恐らく酒樽だろうが、それを抱えていて本人かどうか確認が出来ない

今も、声だけで判断しているくらいだ


「そうだったか!これは失礼した、覚えておられるだろうか。この国の国王、ギュスターヴだ」


私達が異世界人だと知って、即座に態度を改めたが、私の中ではチョイ悪親父として定着しました、悪しからず


「あの、先程、理と仰っていたようですが、お二人は舞島くんと親しいのですか?」


気になっていた事を美樹が二人に尋ねてくれた

ちょっと呆気に取られていて、質問するタイミングを逃してしまったのは内緒だ


「ん?サトルなら、今さっきまで一緒に居たが……お二人はサトルの友達かな?」


「陛下、彼女らはサトルと随分と親しそうでしたよ。もしかしたら……」


何やら言葉を濁らせた元帥さん

その、もしかしたらの先は何を言おうとしたのですか?

恋人、とか?いやん、百合困っちゃう!


「イタッ!!」


なんて事を考えていたら、美樹に思いっきり頭を叩かれた

反射的に抗議の視線を向けると、額にぶっとい青筋を浮かべて半目でこちらを睨みつける美樹の顔が見えた

怖かったので、直ぐに視線は戻しました


「それで、二人はサトルに用なのか?」


私達のそんな遣り取りはスルーして、国王様が話を進めてきた

ちょっとは構ってほしい……スルーは悲しいです


「はい、彼に相談したい事がありまして。彼の部屋がこちらの方で間違いないですよね?」


美樹もスルー……叩いといて、そりゃないよ

と、冗談はここまでにして、ちゃんと話を聞こう


「相談?何の相談なのか、訊いても構わないかな?」


国王様がそう尋ねてきたので、私達はここ最近の事を含めて色々と話をした

別に隠す様な事でもないので、殆ど全てだ


「なるほどな…連携の問題か……ヘクター、これは検討しなければならんのではないか?」


「はい。私達は幼い頃から魔物狩りを集団で行いますから、連携などの基礎的な戦闘技術は自然と身に着いています。ですが、彼らは戦いのない世界からやって来たのですから、そうした事もしっかりと教えなければいけなかったのではないでしょうか」


「うん……で、それをサトルに相談する為に来たのだったか……うーん……」


何やら勝手に話が進み、急に唸りだした国王様


「何か都合が悪いのでしょうか?」


美樹が責める色を載せた口調でそう問いかける

さっきは理自身の意思で動いたと思ったから、安心していたが、この人達は権力者

その気になれば、私達なんかどうとでも出来る人達なのだという事を忘れてはならない

ここは、私達にとってアウェイなのだから


「いや、別にその様な事はないが……実は今までさんざん絡んで、更には去り際に軽く揶揄ったから、今行くのは止めておいた方がいいのではないか、という意味なのだが」


そう言えば、この人さっきまで理の部屋でお酒飲んでたんだっけ

会話が始まってからずっと、酔っ払ってる気配なんか微塵も感じさせないから忘れてた

さっきの叫び声は理だったのかな


「二人は聞かなかったか?さっき、大きな声が響いたんだが」


「ええ、聞きました。まさか……」


「そう、サトルが怒って叫んだのだ、と思う。俺達はさっさと立ち去ったから、直接は見ていないが」


美樹と元帥さんの会話を、話半分で聞き流した

それよりも、理が近くにいるという事実に舞い上がってしまったからだ


(久しぶりに理に会える!!)


私の脳内はその一事に染まり切り、耳から入る言葉の意味を理解する事を放棄していた

その心中を見抜かれたのか、国王様がこちらをじっと見ているのに気付いた


「……サトルなら、この先の角を曲がって少し行った先の部屋に居るぞ。部屋の前に椅子を置いていったから、それを目印にすればいいだろう」


声色がさっきまでと違い、揶揄う響きを多分に含んでいたが、それは私にはどうでもよかった

理の部屋の情報を聞いた私は、矢も楯もたまらず一目散に駆け出した、一心に理の顔を思いながら

背後で美樹の制止する声が聞こえたが、それは今の私を止めるには力不足だった



「マイシマさん、怪我をされたと耳にしましたが、大丈夫でしょうか……」


「心配し過ぎよ。大事があれば、わらわ達の耳に入らない訳無いでしょうに」


そんな喜色満面な私の耳に、理の話をする綺麗な声が届いた

不思議と意識に引っ掛かったその声に、矢も楯も堪らない勢いは見事に殺され、その声のする方に視線を向けさせられた


「あれって……王女様?」


なんで王女様が理の心配を?

それに、もう一人いる褐色美女も気になった


「でも、マイシマさんは、何だかどこまでも走っていってしまいそうで……」


「確かにね。でも、そんなに気になるんだったら、さっさと告白でもしてしまえばいいのに。恋文でも送ってみる?」


恋文!ってラブレター!!?


「あら、あの二人、というか王女様。彼女、舞島くんに気があるみたいね」


その会話内容に驚いていたら、妙に平坦な声が響く

急にそんな声が、すぐ近くから発せられて、反射的に振り返ってしまった


「み、美樹!?驚かせないでよ!」


つい怒鳴ってしまったが、それも仕方ないだろう

誰だって、すぐ近くで感情を感じさせない声が急に響いたら、心臓が縮こまる思いするに決まっている

有り体に言えばビックリして、冷静さを欠いてしまった


「百合が私の制止を振り切って走っていったんでしょう?まったく…朝ご飯がまだ消化し切れてないのに……」


そう言われると、私には反発する事が出来ない

最早ぐうの音も出ない私は、しゅんと落ち込んだ様子で反省を表す


「はぁ……別に怒ってないわよ。王様達も面白そうに笑ってただけだったから、別に不敬だ、とか思われてないでしょうし」


そう言えば、国王様の前を飛び出してきたんだった

不敬罪云々って話にはなってないみたいだけど、下手したら国王様を怒らせてたかもしれないんだよね

多分、そのフォローもしてくれたのだろう美樹に、ますます頭が下がり、もはや彼女から私の表情を窺う事も出来ないだろう


「いいから、頭を上げなさい。ほら、向こうから王女様達がやって来るわよ。そんな体勢で迎えるつもり?もしかしたら、恋敵かもしれない相手を」


恋敵!?

その言葉に全身が引き締まり、自然と姿勢が正される


「こここ、恋敵って!!?わたわた私はそんな!!?」


私は理の傍に居られればいいだけで、恋のさや当てをしようとかそんな事はははははは


「顔が真っ赤よ。少し落ち着きなさい」


「おち落ち着けって言われたって!!?」


言われてみて気付いたが、今まで理の周りには女の影は一切なかった

それこそ、高校に上がってから、美樹と親しくなったくらいで、人気者だった中学時代も、不思議と女子は一定の距離を保っていた様に思う

だからだろうか、理に女の影が、というか明らかに影じゃ済まないくらいの存在感があるのを実感してしまったら、自分でも驚くほどに動揺してしまっていた


(私……理が幸せならそれでいいとか独占したいわけじゃないとか言っておいて……)


何だか自分自身の気持ちに裏切られた気がして、軽く自己嫌悪してしまった


「ほら、王女様達が来たわよ。いい加減、顔を上げなさい」


自己嫌悪は未だ継続中だったが、それでも恋敵、かもしれない相手に、情けない姿は見せられないという意地で、何とか取り繕う事に成功した、表面上は

内心はボロボロです、言わないで……


「あら、貴女方は……」


「サトルと同じ髪の色……という事は、貴女達も異世界人?」


向こうもこちらに気が付いたのか、あちらから話し掛けてくれた

なんか、こう、纏う雰囲気が違うんだよね

だからか、こちらからは声を掛け難かったんだけど、これは嬉しい誤算


「あ、はい。舞島 百合です。王女様ですよね、よろしくお願いします」


「木野 美樹です。お察しの通り、舞島くんと同じ異世界人です。よろしくお願いします」


……何だか、美樹の、よろしくお願いします、に妙な棘を感じた気が……気のせいかな?

自己紹介して、軽く頭を下げた私達を見て、何故か王女様が慌てだした


「あ、あの、私などに頭を下げられずとも……あ、私はアイギナ・ファーレン・カエシウスです。こちらこそよろしくお願いします」


何だか王女様って人種に抱いていたイメージと、目の前で慌てふためく人が結びつかない

なんというか、こう、可愛らしい、というか

これは、かなりの強敵か!?

そう思っていると、もう一人の褐色美女が続いて自己紹介をしてくれた


「わらわはレイリア。東大陸の覇者、偉大なるラルオウム帝国第一皇女、レイリア・ゴルダナス・ラルオウムである!!!!」


こちらはイメージに合ってる王女様、いや皇女様か、皇女様だった

わらわ、なんて現実で初めて聞いたよ、恥ずかしくないのかな?


「な!?は、恥ずかしい訳無かろうが!!」


え、もしかして声に出してた?

焦った顔をする私に美樹が


「百合。確かに声に出てたけど、更に顔にも出てるわよ」


「ええっ!!?うそ、そんなに!?」


思わぬ事態に、顔を両手で覆って隠してしまう

そんな私を見て、王女様は面白かったのか


「ふふっ。面白い方ですね」


ふふっ、だって!凄く上品な笑い方だよ

しかも凄く板についていて、全く違和感とか無いの

私が、ふふっ、とか笑ったら、寧ろ周囲が大爆笑だよ、間違いない


「あの、不躾な質問で申し訳ありませんが、もしかしたら、マイシマさんのご家族でしょうか?」


「あ、はい。私は舞島 理のいとこです」


「御親戚の方でしたか。もしや、マイシマさんに御用が有ったのでは?それでしたら、呼び止めてしまって申し訳ありません」


そう言って、深く頭を下げる王女様

その様子が、何だか余裕を感じさせて、軽く苛ついてしまった私は、


「いえ、私達、お城の中を散歩していただけなんですよ。ねぇ、美樹?」


つい、そんな嘘を吐いてしまった

何故かは分からないが、こうしなければと思ったのだけは確かだ


「え?え、ええ。気ままに歩いていたら、随分と遠くに来てしまって」


調子を合わせてくれた美樹の言葉に、乙女の直感が閃く

それはもう、ピコーン!とかピキーン!とか効果音が聞こえるくらい明確に


「はい、そうなんです。それで、あの……王女様に対してするお願いではないとは思うんですが、私達の部屋のある区画まで案内をお願いできないですか?つい調子に乗ってあっちこっち歩いてたら、帰り道が分からなくなってしまって」


恐らくだが、彼女達は理に用が有って、ここまでやって来たのだろう

さっきの国王様達がそうだったように

なら、ここで阻止しなければ

何故か分からないが、そんな使命感が不思議と湧き上がり、疑問すら抱かなかった

因みに、初めに案内してくれていた召使いさんは、私が走り出した時に置き去りにした

追ってきていないみたいだ

多分、国王様がどうにかしたのだろう


「え、あ、はい。分かりました。ご案内します」


そう言って先導してくれたので、私達は揃ってその後に続いた

後ろから、妙な視線を感じながら

女の子の会話は本当に苦労します

どうですか?違和感とかないですか?

全く自身がありません

周囲の女の人を参考にしようにも、そんな物語の女性らしい話し方をする人なんかいませんし、何より女子だけの会話なんて、聴く機会は全くありませんから

キャラ把握にも四苦八苦している状態、正直言って、女子回は今後も投稿が著しく遅れる可能性があるでしょう


さて、前話後書きで書いた通り、これから盛大な良い訳タイムに入ります

いつも通り、知ったこっちゃない、って人は読み飛ばしてください

次回投稿は一週間以内です


当初予定していた内容と異なると、そう言うのはこれで三度目です

さて、では、その当初予定していた内容とは何だったのか

まず三十話ですが、純粋な理、国王様、元帥さんによる反省会になる予定でした

そして、そこからどこそこの迷宮(作中にて名称を挙げています)へ行く、となって次話へ

という予定でした

そして、続く三十一話

百合ちゃん視点で、これまた反省会というか、以前話した連携の話を、百合と美樹がして、軽い雑談後、どこそこの迷宮(理の行く迷宮と同じ)へ行こう!となって次話へ

そして、更に続く三十二話

ここでは、アイギナ視点で、国王様、アイギナ王女、レイリア皇女の三名の対談が行われる予定でした

その中で、理の怪我の話や反省会について、そして雑談の後、理がどこそこの迷宮へ行く、という流れで終わる予定でした

二十九話後書きで書いた、演出的な問題とはこれの事です

その試みの為に、二週間といういつもの倍の締め切りを設けたのですが、三十話を書き上げた時点(12日には書き上がってました)で、今の展開を閃きまして

で、まず三十話を現在の話に書き換えて、そこから更に三十一話を書き出した訳です

更に、当初は個人的に設定している、一話5000字程度の法則を大きく逸脱して(今更ですが)、三十話は約三倍、三十一話は約二倍に膨れ上がりました

正直、書いてて楽しかったですが、予定調和も大事だな、と痛感しました

次回からは、出来るだけこの様な事が無い様に努めます

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