結末…
ガイルに冷や汗が浮かんでいた。今まで隙だらけで遊んでやっていた目の前の女の雰囲気が変わったのだ。
「雰囲気が変わったな」
「…」
すごい集中力だ。しかしあの女は目をつぶっている。隙だらけだ。このままきり込めば目を閉じた女は一刀両断されるだろう。
しかし、ガイルはその考えを否定した。
「姉ちゃん…なんだその構えは」
「…」
目の前の女は腰を落とし腰の剣に手を添えていた。だが、剣は鞘に入ったままだ。はたから見れば隙だらけ。自身の頭に何度も浮かび上がる隙だらけの文字を直感で否定していた。
踏み込めばこちらが切られる。
果たして経過した時間は1秒か、もしくは1時間かもしれない。対峙した二人が息を呑む中。シエルが動いた。
「はっ!!」
後ろから火球が飛んできたのだ。おそらくホルンの流れ弾なのだろう。それをシエルは両断した。
ガイルは突如湧いたチャンスを逃すまいとシエルに突撃した。
「なっ!!」
「神抜刀!!」
そこには焦げた鞘から抜き身の刀身を引き出すシエルがいた。
「がぁぁっ!!くそっ!!」
なんとか一瞬自身の速度を落とすことによって両断は免れた。しかし傷は深かった。
「なんだその剣術は!?」
「抜刀術というらしいな。まだまだ未熟だな。急な速度変化に惑わされて両断できないとは…ご主人の言う通り訓練が必要だな。」
だが、今回抜刀術の使用によりシエルは理解することができたのだ。剣術の奥深さ、そしてこの剣術に目は必要ないと。気配を感じ、最速の抜刀を相手の通り道に置くだけ
魔力がなく魂を認知できるこの身体にはもってこいの剣術だった。
「くそがぁ!!」
切りかかってきたガイルを次こそは…と抜刀し息の根を留めにかかる。
その最速の剣術がいとも容易く防がれる。
「はいストップ。この勝負はお姉さんの勝ちだよ。だけど殺させるわけにはいかないよ」
そこには剣の峰を掴んで止めた青年が立っていた。
コノハ視点
「あーもう!うざいなぁ!!」
「そんな事言わずこちらはこちらで時間稼ぎさせていただきます」
コノハもホルン相手に打つ手がなく膠着状態だった。コノハは予言を使いホルンを殺そうとする。
しかしあたったものは一つもなかった。
「串刺し!焼失!岩石」
予言が次々と防がれる。
「その能力とても厄介ですね。おそらく現実事象への干渉といったところですかね。ですがこれでは負ける要素はありません。」
「もう早く死んで!停滞!」
「加速」
コノハの時間停滞を加速によって相殺する。
コノハは徐々に打つ手がなくなっていく。
このままではジリ貧だがコノハは自分の主人を信じていた。口では焦る様子のコノハだがすごく冷静に判断できていた。
「相性悪すぎ…」
「ほんとにそうですね。お互い決め手がありません。私たちは決着がつくことはないでしょう。ですが他はどうでしょうか?」
「他?」
「あなたのリーダーやもう一人の彼女はおそらく死ぬでしょう。その後あなたを殺せばいいのです」
「お姉さん面白いね。でも逆だよ。」
「逆?」
ホルンは首を傾げた。目の前の女の子の発言がまったく分からなかった。
「ふたりが勝って3対1になる。これは予言じゃない。事実だよ。」
目の前の女の子は信じて疑わない純粋な笑顔をホルンに向けた。ホルンは鳥肌が立った。
「そうなると面白いですね。」
その時、妙な気配を感じた。ガイルが相手している彼女の気配が濃くなったのだ。
「?」
「やっぱシエルはすごいなぁ」
目の前の女の子、コノハが憧れのものを見るかのようにシエルの方向を見ていた。
「よそ見は厳禁です。火球」
「してないよ。堕ちる」
コノハの眼の前に火球が落ちていった。
「やはり、あなたの能力は相性が悪すぎます。」
「こっちのセリフだよ。あなたの未来予知に相性悪いもん。」
「やはり気づいていましたか…」
「じゃなきゃ予言は防げないもん。だから貴方を倒すのを諦めた。皆の応援が来てから倒すね。」
「私もそうしましょう」
その時ホルンの未来予知が発動した。
「っ!!ガイル!」
ホルンはシエルに向かって火球を放っていた。ホルンには一刀両断されるガイルの姿が見えた。それは事前に防げたようだがガイルが大怪我を負っていた。駆けつけ回復したいが目の前の女の子に隙をさらけ出すわけにはいかなかった。
ホルンは攻撃を再開したがどれも女の子には届かなかった。
「無駄だって。そんなに助けたいの?両竦みなんだから突破できるわけないって」
「ガイル!…」
「やっぱりご主人様は正しかったんだ!ご主人様のアドバイス思い出してくれてよかったよ。」
目の前で年相応の表情をしている女の子がいる。まるで恋する乙女かのような…
何がこの子たちを惹きつける魅力があの青年にあるのかホルンは理解できなかった。
「もうすぐあの男は死ぬね。そうなれば私たちの勝ちだよ。時間稼ぎできてよかったよ。」
「…」
「安心して。お姉さんはおそらくご主人様の駒になると思うから。死ぬことはないと思うよ。さらなる高みにいけるよ?お姉さんも正直になって?」
「それは僕が困るなぁ」
コノハは本能に任せて後ろに飛び退いた。今までホルンが立っていたところにもう一人青年がいるのだ。
この距離まで気配に気づかず近づける人物。それほどの手練れだと警戒した。
青年の一挙手一投足に目を離せずにいたところ
「コノハ!!」
シエルが近くに駆けつけてくれた。
「シエル!あの男は?」
「わからん。だが私の相手を回収すると言っていた!」
「おそらくあの男つよいよ!」
「わかっている!」
警戒を続けている私たちに青年は飄々と話しかけてきた
「ああ、そこまで警戒しないでほしいな。さっき君たちのご主人さまからこの子たちの回収を許可されたから回収するだけだよ。君たちに危害を加えることはないよ。」
「おそらくホントだね」
シエルとコノハはこの場で軽く息を吐き、警戒を緩めた。
「ご主人が望んだことならこちらは拒否することはないな。」
「そうだね~」
「ありがとうね。でもここまで全員がボロボロにされたら僕の立つ瀬がないよ…」
「それは知らないよ」
「まあ、ここにいる理由はもうなくなったから御暇するね。もう二度と会わないことを願ってるよ。それと…」
「??」
「処刑免れてよかったね」
「なぜそれを!?」
「最後に意趣返しができてよかったよ。それじゃぁね」
目の前から人の姿が消えた。まるで何もいなかったかのように。そうして2人は主人の場所へと向かった。
「こうして敵のいなくなった私たちは主人と合流したというわけだ。」
「そうだったのか…」
「私はまた自分の向かう場所が見えた気がしたからこれからきわめてみようかと思ってるぞ。」
「コノハは不完全燃焼だぁ〜!」
「まあ、よかったじゃん。コノハもいい訓練になったでしょ?」
「まあ、そうなんだけど…」
「ところでご主人はどうだったんだ?」
「俺の方は…」
こうして俺達はあの戦いの話をしながら次の目的地へ向かった。
各々違う思惑を腹に抱え次の犠牲を求めて進む。




