表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

第一部 18話 良く言えば感覚派

「で、ニコの事情を改めて聞いて良いか?」

「まぁ、そうなるよね」


 むしゃむしゃと宿で夕飯を食べながら訊いてみる。

 ニコも予想していたらしく、苦笑を浮かべていた。


「そもそも、どうして家出なんかしたんだよ」

「……私がハイデリカの特殊ジョブを引き継ぐことになりそうだから」


 ニコは嫌そうに顔を顰める。

 何ていうか、ギルド長に向ける表情と似ていた。


「何が嫌なんだ? 領主の特殊ジョブは優秀だぞ」

「……あんたらには言われたくない」

「あはは! それはそう!」


 カイが訊いたものの、切り返されてしまう。シルが楽しそうに笑う。

 元勇者、元賢者、元聖女の三人は言い返せずに黙り込んだ。


「特殊ジョブの性質が嫌なのよ」

 俺たちが拗ねたように顔を背けていると、ニコは少しずつ話してくれた。


「性質? 回復士みたいに他人の役に立ちたいってこと?」

「どちらかと言えば『ああはなりたくない』ってこと」

「?」


 ニコはアリアの質問に答えるが、その回答は良く分からない。

 カイの話からは領主のジョブにデメリットを感じない。


 俺たちの様子に気が付いて、ニコは小さく溜息を吐いた。

 さらに口元を皮肉げに歪める。


「ハイデリカの特殊ジョブはね。

 ……『詐欺師』の異名を持つのよ」


 なるほど。それはハイデの領主らしかった。

 ああはなりたくない、か。


「私はハイデの小悪党っぷりが嫌いなの。

 だから回復士みたいな普通のジョブでありたいのよ」


 ニコがふん、と顔を背けた。ハイデで長く過ごした弊害だろう。

 地元を嫌いになる感覚は少し分かる気がした。


「私は『詐欺師』なんて呼ばれるジョブになるもんか!」

 ニコがテーブルを両手でばんばんと叩いた。




 翌日。

 朝から俺はカイと一緒に街の公園まで来ていた。


 以前話していた、剣の訓練を見てやるためだ。

 魔法を見てもらったしな。コイツに借りは作りたくない。


「だから! どうしてコレが出来ないんだ!?」


 俺はカイの一撃をひらりと躱して首筋に木剣を当てる。

 難しいことをしているつもりは一切ない。


「うるさい! コレじゃ分からないんだよ!

 教える気があるならコツや考え方を教えろって言ってるんだ」


 カイが青筋を立てながら俺の木剣をぺち、と弾く。

 腹が立つ動作だが、一応は頭をひねる。コツ……考え方……。


「バカだなぁ。考え方なんてねーよ。

 剣なんてひょいと避けてスパッと斬るだけだろ」


「驚いた……嘘だろ?

 こんなに頭の悪い台詞が他人をバカと呼ぶことがあるのか?」


 カイは呆然と頭を抱えていた。

 よほどショックが強かったらしい。


「何言ってんだ。これさえ出来れば魔王も倒せたぞ」

「それが出来ればそうだろうよ。流石に腹が立って来た。猿の言葉が分からねぇ」

「なんだ? バカにしてんのか……?」

「ここまで言っても確信が持てないのか……」


読んで頂きありがとうございます!

ブックマーク、評価など頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ