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帰り道  作者: 夜半侍士
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顧未知(かえりみち)




「しかし、胸糞悪い事件だな」


 最近一世を風靡していたアイドルの、飛び降り死体の検死を見ながら、巡査部長は言う。横にいた巡査が、今回の事件のあらましを述べる。


「本事件では、熱狂したファンの1人が、当該アイドルと付き合ってると妄想。現実と妄想の区別が付かなくなった彼女は、出待ち、無言電話、snsへの粘着行為など、ストーカー行為を繰り返しました。事務所とアイドルは警察への相談も検討しましたが、軌道に乗り始めたこの時期に、余計なスキャンダルは避けたいと、ストーカー行為を黙殺」


「黙殺されたファンの行為はヒートアップし、郵便受けに動物の死骸を入れることもあった。当該アイドルは、いつのまにかメンタルの限界を迎えた」


 巡査部長も事件を整理しようと応えた。


「限界を迎えた彼は、ファンを自宅に呼び出し、殺すことにしました。部屋にファンを迎え入れた彼は、ファンを部屋に閉じ込めると自身はベランダから投身自殺。部屋は時間差で硫化水素が発生するようになっていましたが…」


「アイドルの死を見たファンは、その場で持ち歩いていた睡眠薬を飲み、自殺を図った。睡眠薬に耐性ができていた彼女は、本来気を失える量では無かったが、飲み物にもアイドルが仕込んだ睡眠薬が入っており、結果的に気を失った。意識を失いかなり呼吸が浅くなった彼女は、硫化水素をろくに吸い込むことなく、致命傷には至らなかった。どうやら、さっき意識を取り戻したみたいだな」


 ストーカーが生き残り、被害者が死ぬ。ストーカーはそもそも通報されていないから大した罪にはならず、被害者は殺人未遂…全く胸糞悪い事件だと巡査部長は思った。


「意識を取り戻した彼女、アイドルに夢で会ったって言ってるみたいですよ。自分の分まで生きてくれって言ってたそうです」


「そんなこと、言うわけないだろ。言うとしたら、恨みの言葉だよ」


 世の中で一番強く、一番怖いのは、思い込みの激しい人間かもしれない。巡査部長は、自身もそうなってしまっていないか省みるのであった。


「しかし、奇妙な死体だよな」


 アイドルの死体は、飛び降りた際にどこかに引っかかったようで、首と身体が切断されてしまっていた。


 身体の方は、部屋の真下に落ちたので、すぐに見つかった。


 首の方は、しばらく見つからなかったのだが、現場近くに置いてあった、当該アイドルグループのマスコットキャラの着ぐるみの、頭の位置にすっぽりはまっているのが見つかった。


 当該アイドルの首が、白熊をモチーフにしたそのマスコットキャラの頭の代わりに、とてもアンバランスに、すっぽりとはまっていたのだった。


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