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「お客さーん! もう閉園ですよー!」


いつの間にか時間は17時にもなっていた。

周りには人影も無く、陽もかなり陰っているのに気付いた。


どんだけの間、キスしてたのかー!? 考えただけで、卒倒しそうになった。

くちびる、腫れてる気がする・・・。

本当に2人の世界に入り込ンでたようで、周囲にまで考えが及んでいなかった。


鈴本も時計を見て驚いていた。

多少、動揺が窺えるが、それでも平静を装いつつ、無言のまま私の手を引いて起き上がらせてくれた。

私も何と言っていいか分からず、黙って黙々と毛布を畳んだ。


気まずいし・・・。


英国での長い生活期間では、人前でキスする事もあった。

X'masやNew Year Party では親しい友人から唇にキスされた事もある。

それでも殆どが頬への親愛を現すモノであったし、恋人とのキスを人前で披露した事など無かった。


イタすぎる・・・。

何たる愚行! 10代の若者でもないのに・・・!!


「ゴメン・・・。 暴走した・・・」


ポツリと鈴本がつぶやいた。


「こんなつもりじゃ無かったのに、止まらなかった・・」


「ゥン、大丈夫・・・」


何と返していいか分からない。

何が大丈夫なんだ?! と心の中で自分に突っ込みを入れる。


「帰ろうか・・・?」


という鈴本に頷いて応えた。

鈴本に手をとられて駐車場まで歩く。


♪~♪~

鈴本の携帯が鳴った。

ポケットから取り出して、画面をチェックした鈴本は「チッ」と舌打ちをした。

それに驚いて、彼の顔を伺うと


「岩木だよ・・・。出ても良いか?」


「勿論!出てあげて」


そう言った私の目を見つめながら、電話をとった。



★★★★★


「サンキューな! マジで助かった!!

今日は奢るよって言いたいトコだけど、しがない団体職員の俺に社長とお医者さんが奢られるなんて、なぁ~?」


「イエ、全く気にしませんケド?奢って貰えるなら、喜んで。ねぇ~?」


美晴の問いかけも耳に入っていないのか、


「近くに居たから良かったケド、何で俺が・・・」


研修で出掛けていた岩木は、自分の車の駐車先を電車の乗り換え時に考えなかったらしい。

バスを待つのも、タクシーを使うのもイヤだった彼は、鈴本に迎えに来て貰う事を勝手に決めて連絡して来たのだ。

岩木を迎えに行って、食事でも・・・と目に付いた居酒屋に入って、今に至っていた。



ブツブツ言っている鈴本を横目に、美晴はニッコリと最上の笑顔を向けて


「デートの邪魔した罪は大きいですよ!

遠慮無く社長とお医者さんに奢って下さいね」



内心、あの公園でのキスから、気まずくなるのでは・・・?と心配していた2人の何とも言えない雰囲気を打破してくれた岩木に『幾らでも奢る!』と言いたい位であったが、ココは岩木をイジっておく事にした。


本当に助かった!

岩木さん、ありがとう!!と感謝を隠し切れずニッコニコの美晴だった。



世間話や仕事の話の合間に、2人の仲の進展具合を問われた際は少し動転したが、鈴本が卒なく返答してくれた。

今は、隣のテーブルに座る女性3人組みからの視線が気になって仕方無い。


鈴本は童顔だと言うのが美晴の考えだったが、世間一般ではイケメンと呼ばれる部類である事は分かっている。

岩木の外見は、そのしゃべりとは違った、知的な印象を与えるであろう事も分かる。

要はイケメン2人を連れている私が邪魔なのね!と苦笑いする美晴だった。


が、実は隣に座る3人の内の1人は県病に勤めるナースで、美晴の事を知っていたのだ。

そして病院内で人気のある美晴を快くは思っていなかった。

彼女は、偶然に入った居酒屋で隣り合わせた美晴と、会話からその彼氏だと伺える鈴本の話に耳を傾けていた。

そして、美晴はその事に全く気付いてはいなかった。


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