これからも、あなたの隣で
彼は、幼い頃からの想いを話し終えると、私をまっすぐに見つめた。
「今までライラを傷つけてきたこと、本当に申し訳なく思っている」
彼の碧い瞳から、目を逸らせなかった。
「俺は本当にライラのことが好きなんだ。小さい頃からずっと」
「……」
「俺は、君を守っていたつもりだった。けれど、結果的に君を追い込んでしまった。本当にすまない」
彼の顔には、苦悶の表情が浮かんでいた。
「俺は、君とやり直したいんだ。もう一度、ここから始めてくれないか?」
彼の言葉に胸が痛くなる。
彼の表情が、その言葉に嘘がないことを物語っていた。
最初は嫌われていると思っていた。……けれど、違った。彼は不器用なだけなのだ。こんなにも私を想ってくれていた。その事実が嬉しくてたまらなかった。
そう思うと、私の頬から涙が伝った。もう、私の答えは決まっていた。
「……はい。私もずっと前から、ルーカスが好き」
その言葉に、ルーカスは目を見開いた。
次の瞬間、ルーカスは私を抱き寄せた。私も彼の背中に腕を回した。
「ありがとう……」
彼は小さく呟いた。
傷ついた心がすぐに元通りになるわけではない。それでも、これからは互いの気持ちを言葉にして、少しずつ乗り越えていける。そう思えた。
屋敷に帰ると、胸のつかえが取れたように気持ちが軽くなっていた。両親にも報告すると、これまでの私の想いを知っていたからこそ、とても喜んでくれた。
そして私は、ルーカスのご両親にも、今回のことをきちんと話したいと伝えた。
ルーカスのお母様は、当然驚いていた。しかし、今回のことが、私たちの気持ちを伝えられなかったことによるすれ違いだったと順を追って説明すると、少し笑みを浮かべた。
「それだけ度胸があれば、伯爵家でも大丈夫ね」
「このたびは、ご心配をおかけして申し訳ございません。これからはアルギロス伯爵家の一員として恥じぬよう努めますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「ふふ、いいのよ。ルーカスもしっかりしなさいね」
「はい。もうライラを一人で悩ませたり、悲しませたりすることのないよう、きちんと向き合っていきます」
凛とした態度でそう言う彼に、胸が高鳴った。
◇◇◇
──翌日。
学校に登校し、コンラートにも報告をした。
これまでのすれ違いを説明すると、彼は全てを理解したように笑った。
「お前ら昔から目で追っかけ合っているもんな。見ているこっちは面白かったけど」
「え? そ、そうかしら?」
どうやら彼にはすべてお見通しだったようだ。
「まあ、また嫌なことされたら俺に言いなよ。やきもちくらい焼かせてやってもいいんじゃない?」
「ふふ、じゃあその時はよろしく頼むわね」
すると、近くで様子を見ていたルーカスが突然現れた。
「お前、またなんか企んでいるだろ」
「別に」
そんなやり取りに少しだけ笑ってしまった。コンラートは私に目配せをすると、その場から去っていった。
やっぱり、気持ちが通じ合っていても、言葉にしなければ伝わらないことは山ほどある。
私たちはたくさんのすれ違いを経験し、言葉の大切さを学んだ。
これからは、私も彼も、自分の言葉で気持ちを紡いでいく。
好きな人の隣で笑い合えることは、奇跡に近いことなのだ。
これからも、未来へとつながる今この瞬間を、大切に生きていこうと思う。
「ライラ、俺は生涯ライラだけを愛すことを誓う。愛している」
「ええ、私もルーカスのことを愛しているわ」
私たちは、そっと唇を寄せ、お互いの体温を確かめ合うように口づけを交わした。
「ふふ」
「……どうした?」
「今度は魔法のための口づけじゃないのね」
「当たり前だろ」
私がからかうと、彼は少しむっとしていたが、どこか照れているようだった。
『毒を飲んだ私を救ったのは、冷たい婚約者の口づけでした』
──おわり──
あとがき
『毒を飲んだ私を救ったのは、冷たい婚約者の口づけでした』
完結までお付き合いいただき、ありがとうございました。
私にとって初めての短編小説となりました。
ライラとルーカスの恋の物語は、お楽しみいただけましたでしょうか?
二人をここまで温かく見守ってくださり、本当にありがとうございます。
この物語は、『言葉を伝えることの大切さ』をテーマにしたお話でした。
ボタンの掛け違いがあっても、きちんと話し合えば、分かり合えることもあると思っています。
このお話が少しでも、皆様の心に残るものになれば嬉しいです。
感想や、評価などもお待ちしております!
Xでの感想もお待ちしておりますので、Xでも仲良くしていただけると嬉しいです。




