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タクシーのフロントガラスに虹が浮かんでいた。
「ああ、これ。スワロなんとかっていうシャンデリア用のクリスタルですよ。タクシーの中が殺風景だと言って、うちの娘が作ってくれた飾りなんですけどね。手先が器用なんですよ」
「ふうん、綺麗ね」
娘の自慢話をする運転手は、ホテルから一人で出てきた女の事情には無関心でいてくれた。財布から紙片を取り出す。
宇田がくれた樹の名残だ。クレジットカードの明細書。日付は樹の誕生日。樹が誕生日にクレカで購入したのは高級ブランドのワンピースだった。
恋人に買ってもらったと姉に嘘をついた弟はもういない。
くもりも澱みもないプリズムの虹を見て無邪気に喜ぶことはできなくて、窓の外に灯台の灯りを探したが見つけることはできなかった。




