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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第7章 京・政争編

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第315話 嘉兵衛は、将軍御成りに同行する(1)

永禄8年(1565年)3月下旬 京・三好屋敷 松下嘉兵衛


「本日はこうして我が屋敷に御成り頂き、誠にありがとうございます」


玄関先で義輝公と義元公を相手に、そう口上を述べた三好筑前守様が早速我らを屋敷の中へと案内し始める。その後ろを摂津中務、細川兵部ら幕臣たちと俺や半兵衛、それに尾張から駆け付けた信長を加えた今川家の面々が固めて、奥書院に入った。


「……少し、手狭ではないかな?」


「摂津殿……それはこれだけの人数となったわけだから、仕方がないのでは?」


まあ、確かに摂津の言うとおり、この部屋は今、物凄く手狭だ。上座に御所様と義元公が座られて、下座に我ら家臣たちが座っているのだが、一列に並べば廊下にはみ出るから、二列になって座っている。文句を言う気持ちもわからないでもない。


「そうは申すが、細川殿。今川様がこうしてお供なさることになったのは、三好筑前守殿のご意向であろう。誠に御所様への忠義の心というものがあるのであれば、やはり快適に過ごして頂こうという気配りは当然必要ではないかな?」


だが、今の言葉の通り、摂津は明らかに三好家に対する嫌味で言っている。だから、快適でない空間がさらに居心地の悪いものとなり、こちらとしても何か言い返したくなる。


しかし、俺が口を開くよりも先に、隣に座る信長が口を開いた。


「……ならば、摂津殿。御所様に快適に過ごして頂くためにも、貴殿が外に出られてはどうかな?そうすれば、この部屋もその分広くなると思うが……」


「な……!今、何と申されたか、織田殿!!」


「御所様への忠義の心は、貴殿が一番だと推察してそう申しただけだが……それとも、某の見当違いでしたかな?」


いやあ、見事な嫌味返しだ。俺たち今川方だけではなく、細川ら幕臣たちの中にもクスクスと笑い声を漏らす者もいる。


「お、おい!笑うな!笑った奴は外へ……」


「おまえは外へいかぬのか、中務よ。尾張守が申す通り、余はそなたをこの日の本で一番の忠臣だと見込んでおったが……あれれ、おかしいのう。余が窮屈にしていると知ってなおもそこに座り続けるのか?」


「ご、御所様!?」


「ふふふ……まあ、戯言だ。そのように顔を青くする必要はないぞ」


そこで義輝公は大笑いしながら席を立たれて、自らが庭に出られた。天気が良いし、庭も美しいから、こちらの方が快適だからと言われて。そして、そこに義元公も続かれた。「真にその通りでございますな」と同じように言われて。


「ところで、今川殿」


「なんでございましょう」


「どうして三好との仲立ちを引き受けたのだ?面倒ごとに巻き込まれるだけで、利などないと思うが……」


「ははは、まあ……色々と事情がありまして」


ちなみに、その事情とは……あの日、松永右衛門佐殿から渡された書状に書かれてあった「仲裁に来られないのであれば、我らは京を引き払うことにするから、幕府の後は任せたい」という文言の事だ。三好が京を捨てるというのであれば、拾えばいいと俺は思ったのだが……


『今、京を拾えば、三好の苦労を我らが同じように負うことになるでしょう。時期尚早かと存じます』


……などと半兵衛が言い出し、それなら引き続き幕府の相手を三好家に任せるために、今回は望み通りに仲裁の役を引き受ける事になったわけだ。もちろん、そんなことは義輝公に言えるはずがないから、こうしてお茶を濁すしかないけど。


「そうか……そちらも色々あるのだな」


但し……そう仰せられた後、義輝公は我らに聞こえないように何やら二、三言ほど義元公に話された。途端に義元公の顔が驚かれたように変わられる。


「畏れながら申し上げまする。大広間にて饗応の準備が整いましたので、これよりご案内いたしまする」


「相分かった。では、今川殿……今の話はもうしばらく内緒という事で」


「心得ました」


案内役として現れたのは、松永右衛門佐殿であったが……それよりも気になるのは、内緒話の内容だ。共に大広間へ向かう摂津らの顔にも戸惑いがあるようなので、義輝公の独断で何かをなさるつもりのようだ。


もっとも、今は確認する間もないので、それは後回しにするしかない。大広間に入ると、そこには三好筑前守様が一族重臣たちを率いて、義輝公の御成りを出迎えた。


「改めて申し上げますが、本日の御成り、誠にありがとうございます」


「うむ。大儀である」


「ははっ!」


そして、まずは目の前に並べられている献物の目録が読み上げられる。いずれも南蛮交易で得た品物ばかりで、中でもレイピアはすぐに手に取られるほど、義輝公は気にいられたようだ。


「しかし、このような薄い刀で折れないのかな?」


「南蛮人が申すには、斬るのではなく突いて刺すための武器とか……」


「なるほど。つまり、そもそもの話として剣術の流儀が違うのか。世の中は広いな……」


そう仰せになられながら、義輝公の表情はどこか儚げであった。一体どうしたのかと思いながら、筑前守様は列席する一族重臣たちを紹介して、その後宴へと場面は移った。


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