第35話なんとなく左翼な竜馬と当時の右翼たちとの関係
竜馬は面白いこと大好き人間であり、金儲けも上手で競争社会でも十分生き残れるタイプの人間だったが、哲学や経済学の勉強を積み重ねていくに連れて最後は、少し社会主義的な思想に行き着いていた。
日清戦争、日露戦争くらいまでは竜馬も国と国が戦うことにある程度の意義を見い出せていた。しかし、第一次世界大戦におよび、戦車や飛行機、魚雷や地雷、はたまた毒ガス兵器など残忍な大量破壊兵器が戦場に登場し、人間がむごたらしい殺され方をするのを目の当たりにして、竜馬は戦争反対の平和主義者へと変貌を遂げたのだ。
「人間同士が憎しみ合い殺し合う世界線はやはりまちごうちょる。ひとはみな、等しく平和のうちに家族や友人、恋人と愛し合って生きるべきだ」と。
ただ、一方でアメリカで頻発する過激な労働争議などを見るにつけ、マルクス主義的な、武力革命的な、共産主義思想にも限界を感じていた。
「資本家も労働者も。単純な二項対立ではなく、なんというか、もっと「あいまいな」現実を認める必要があるぜよ」。
「暴力は暴力による反発しか生まない。人は信じれば信じてくれるし、許せば許してくれるし、愛すれば愛してくれる。昔から東洋に上手いことわざがあるがじゃ。「情けは人の為ならず」と」。
竜馬は、師匠は勝海舟からジョン・デューイ。政治は、ウッドロウ・ウィルソンからフランクリン・ルーズベルト。文化は、ベーブ・ルースやチャールズ・チャップリン、ビリー・ホリデイ。経済は、ジョン・ロックフェラーやアンドリュー・カーネギー。たいていハト派か、もともとタカ派であっても竜馬と付き合ううちにだんだんハト派になっていった仲間たちばかりである。坂本竜馬は天性の人たらしであるとともに、天性の左翼でもあった。ゴリゴリの右翼だった人間たちも竜馬と付き合ってるうちに、しまいにはこう言い出すのだ。
「わたしを愛してくれれば右翼でも左翼でも、どっちでもいい」と。




