九 レオの尻尾
目の前の彼はひとしきり笑った。
私はそれを茫然と眺めていた。もしかして……その優しい琥珀色の瞳って、まさかね。
(レオさん?)
「ティーさんはまだ気付かない? 俺だ、レオだよ」
この人はやはりレオ? ……たてがみともふもふが無いわ。レオは私が驚くたびに嬉しそうに身振り手振りで説明してくれた。
「ティーさん、よく見て」
まず、先に頭耳を指して、次にしなやかな長い尻尾を私に見せた。
「そうか、まだわからないかぁ? 俺の耳に尻尾を触る?」
「レオさんの耳に触ってもいいのですか?」
いいよと、私が届くように前にしゃがんでくれた。その耳に触ると触り心地のよ良いモフモフ。ライオンの可愛い見た目から、こんなに素敵な男性になるんだ。
次にレオの尻尾も撫でさせてもらった。
サワサワすれば、するほど尻尾が動く。
「フフ、くすぐったい。ティーさんは俺の尻尾がお気に入り?」
「はい、尻尾も好きですが、全部お気に入りです」
「え、全部?」
思っていたことがスルッと出てしまい……慌てて、両手で口元を押さえた。
「全部?」
「ちがっ、わないけど……うぅ」
恥ずかしい……変なことばかりレオに言ってしまう。でも、レオは嫌がるところか大きな手で髪を撫でてくれた。
「ティーさんありがとう。俺の全部を気に入ってくれて嬉しいよ」
レオは嬉しそうに笑った。
♢
その日の夕食後。ティーさんの部屋はと言った後にレオはハッと手持ちのろうそくを持って、キッチンから部屋を見に行ってしまう。私もその後について行くと、奥の部屋を開けてレオは呆然としていた。
私も覗こうとしたけど見えない。
「どうしたのですか?」
「ティーさんごめん……奥の部屋なんだけど、しばらく使ってなくて、ここ掃除をしないと使えなさそうだ……ベッドのある部屋ってここしかないんだ。ティーさんしばらく俺の部屋で寝てください」
の後に。
この屋敷はね、俺の大きさに作り直しちゃって……あまり部屋を作らなかったんだ、と言うレオの困り顔に、耳がすまなそうに下がっていた。
「気にしないでください。明日、私がここを掃除をしますから……他の部屋の掃除も任せてください」
「そう、わかった。俺も明日の用事が終わったら手伝うからね」
「はい、レオさん」
今日もレオの部屋で、彼の側で眠りについた。
♢
次の日の朝。
朝食後に人型となったレオはビシッとした黒服を着ていて、それがまた素敵で見惚れてしまった。
「ティーさん、今から王城に書類を出しに行ってくるよ」
王城?
お城?
「ここの森と場所は国の管轄だからね。いつもの報告と、ティーさんをここで雇う事を上に伝えてくるよ」
「はい、お願いします」
王城に向かうレオを見送りして、私は掃除道具片手に、奥の部屋の掃除を始めた。