十 煤けたティーラ
お昼過ぎには戻ると聞いていたので、朝の残りで昼食を終えて、それまでこれから私の寝室になる部屋の、できる場所から掃除を始めた。
しばらくして玄関から声がする、どうやらレオが帰ってきたみたいだ。
「ティーさん、ティーさん帰ったよ」
「お帰りなさい、レオさん」
報告と仕事を終えて、時間通りお昼過ぎに帰ってきたレオは膨らんだ紙袋を両手に持っていた。
「帰りに知り合いの服屋に寄って来たんだ……って、え、ティーさん? 俺がいない間に無理をしたね」
え、レオのいない間に無理をした。
レオの視線が私のシャツを見てる?
(あぁーしまった)
わたしのいまの格好は埃だらけだった。
「シャツをそんなに汚して。ティーさんは僕の帰りが待てなかった?」
彼の少しムッとした声に慌てた。
「ち、違うのレオさん。これは違うの……」
「なにが違うの?」
「その……あのね、怒らないで聞いてね。べ、ベッドがふかふかでつい」
「ベッドが、ふかふか?」
「ずっと寝るとき布団だったの。少し掃き掃除をしていてね、あの部屋のベッドがわたしの物だって思って……こ、子供みたいにベッドに飛び込んだの」
うぅ恥ずかしい、そんな理由で……呆れたよねレオ。彼をチラッと見ると彼は大きな体を揺らし、持っていた紙袋を床に落とした。
そして
「ぷっ、くくっ……はははっ、ティーさんベッドに喜ぶなんて可愛すぎる。そんな汚れたベッドじゃなくて、僕のベッドですれば良かったのに、フフッ」
「それはダメ。レオさんがいないのに入れ、ない……それに」
「くくっ……そんなことは気にしなくていいのに、それにの後は何?」
笑いながらレオさんが訪ねてくる。
「……その、寝ちゃうから」
「え、なに?」
「正直に言うわ。ごめんなさい本当はもうやったの……レオが出た後にもうやったの……ベッドに飛び込んだら、ふかふかで、そのままぐっすり寝てしまって……」
「はははっ、そうか寝ちゃったのか……ふふっ。そうだ、ティーさんこっちにおいで」
レオはわたしを呼ぶと落とした袋を開けてその中身を見せてくれた。袋の中にはメイド服にワンピース、パジャマが綺麗に折り畳まれて入っていた、もう一つの紙袋の中身は下着だった。
「これは?」
「ティーさんにお土産、俺は人の服屋には行けないから、知り合いの店で見つけてきたよ」
「え、わたしに? ……こんなに貰ってもいいのですか?」
「いいよ、でもね一つだけ問題があるんだ。ほら、後ろのここに尻尾穴が空いてるんだ。だから隠すように、はぎれの布も貰ってきたから縫って使って」
と、見せてくれた、どの服にも尻尾穴が空いていたけど、たくさんの可愛い服と下着。
「嬉しい、ありがとうございます」
「でも、その前にティーさんはお風呂が先だね。袋は寝室に置いておくね」
そう言い紙袋を持って、自室を開けたレオは目をまん丸にした。なんとベッドの上には思いっきり飛び乗ったであろう、わたしのアトが布団に大胆に残っていたのだ。
それを見たレオはまた紙袋を床に落として、今度はお腹を抱えて大笑う。その後ろでわたしは真っ赤になるのだった。
この日、ずっとレオの笑い声が屋敷に轟いた。
「ハハハッ、クク、ティーさんて大胆だな」
「……あうっ、」
♢
王城で報告を終えた、その顔見知りの管理官は俺に嫁か? 嫁が来たのか? とぐいぐい聞いてくる。
「できれば、嫁にしたい人です」
と、つい口を滑らせてしまった。
彼は顔をニヤケさせて"よかったな、とうとうお前にも春がきたなぁ!" と、辺りに聞こえる声で話した。
しまった、これは管理官に酒の肴を与えてしまったな……次、ここに訪れたとき色んな人がこの話を知っているだろう。でも、俺の本当の気持ちだがらいいか。
報告も終わったし、次は知り合いの服屋でティーの服を見繕ってもらおうか。獣人街にある知り合いの服屋の店主に、女性物の服が欲しいと言うと彼女は丸い耳を立て、長い尻尾を揺らし、驚いた表情の後に顔をニヤつかせた。
これは、さっきもしたやり取りがくるか。
「なぁに? レオ。あんたも隅に置けないねぇ、とうとう嫁を貰うのかい」
「できれば嫁に欲しい。でも、彼女は獣人では無く人間なんだ……俺を怖がらないけどね」
彼女はそうなのかいと奥から売れ残りや、買い戻しの良い服をたくさん大きな紙袋に入れてくれた。
「レオの嫁になる子は獣人を怖がらないか……へぇ、珍しいね。レオ、しっかり捕まえるんだよ」
彼女はこれは"お祝い,だと、たくさんの服と下着に、尻尾の部分を縫うはぎれをくれた。
「大切にするんだよ」
「当たり前だ大切にする。ありがとう。リコ」
ティーはこの服を見たら喜んでくれるかな、彼女の喜ぶ顔を思い浮かべて帰った。玄関で「帰ったよ」と伝えるとパタパタと、彼女の足音がこっちに近づいて来た。
「お帰りなさい、レオさん!」
笑顔で迎えてくれたのは良かった。でも、彼女の格好はその煤けていた。……かなり煤けてたんだ。
一緒に掃除をしようと言ったのに。まさか一人で部屋を掃除したのと、少し大人気なくムッとしてキツイ言い方をしてしまった。
「シャツをそんなに汚して。ティーさんは僕の帰りが待てなかった?」
彼女は焦りの色と段々と頬を赤くした。
その後の彼女の発言に、俺は驚くことになる。
掃除をしたのでは無く、奥の部屋で汚れたベッドに飛び乗ったと、ティーは照れながら話してくれた。大胆な彼女の行動に驚き、余りの可愛さに持っていた紙袋を落として笑ってしまった。
「ぷっ、くくっ……はははっ、ティーさんベッドに喜ぶなんて可愛すぎる。そんな汚れたベッドじゃなくて、僕のベッドですれば良かったのに、ふふっ」
俺のベッドなら自由に使えばいい。
ティーはそれは僕がいないからダメだと言ったけど、段々耳まで真っ赤にして実はもうやったと告白した。
そして、そのままぐっすり寝てしまった、だって……あぁ、なんて可愛い人なんだ。このまま照れる君も見ていたいけど、喜ぶ姿も見たくて貰ってきた紙袋を開けて服を見せた。
紙袋を覗いた彼女の目が大きく開き、嬉しそうに笑った。俺は心の中でガッツポーズをとったよ。
ティーに尻尾の穴の説明をして、その部分は縫ってねと伝えて、紙袋を持ち自分の部屋を開けて驚く。
だって、ベッドのど真ん中にアトが残っていたんだ。それも大の字に飛び込んだと分かる、大胆なアトがくっきり残っていた。
もう、俺は腹を抱えて笑ったよ、大笑いだった。君はさらに真っ赤になって照れていたけど。
はぁ、本当に君は可愛い人だね。




