メルク
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ありがとうございます!
「あ〜いいねいいね〜」
真っ白な空間に20対の黄金色の大翼が広がる。
その翼の主は空中に映る下界の様子を見て、笑っていた。
映る下界は真紅に染まり、影と銀閃、狂笑と叫喚がどんな場面かを伝えてくる。
映っているのは後に亜人戦争と呼ばれた人族と亜人の戦争だ。
空が切り裂かれ、鮮血が舞い散り、命が無惨に踏み潰される。
抵抗する牙を失った者に牙を向け、首をとり、腰にぶら下げる。その後ろから敵の牙が強襲し、儚く命が散る。
その後ろでは、戦場だと言うのに亜人の女を凌辱するハイル王国の鎧があったり、更に人族本陣では酒を飲み舞い上がる火の粉を華にして宴会をも行われ、人の欲望の強さが鑑みられる。
そして、それを目の前で見ている20対の大翼の主...唯一神メルクはそれを止めようとせず、むしろもっと楽しませろと言わんばかりに興奮していた。
「そうそうそれ!いい!いい!
あ!お?こっちもいいねぇ!」
神が住む世界、神域には、暇を潰す娯楽などはない。
唯一、下界の様子を見ることが楽しみなのである。
そして、メルクは人のクソ加減を見るのが大好きだった。
特に好きなのは裏切り。
人が落とされていく様を見るのが極上の楽しみだった。
が、世界広しと言えども、何故かこの世界には差別やらなんやらの胸糞悪い行為が少なかった。
何十年かは我慢してきたメルクだったが、次第に我慢ができなくなり、
「そうだ、一人だけ才能あげないで送り出してみようかな〜」
実験的に一つの魂に才能の芽を与えず下界に送り出した。
その魂は、10まで元気に育ち、友達も多かった。
「さてさて、どうなるかな?」
メルクの顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
案の定、才能の芽がなかった魂にはそこから派生できる才能は無く、無才の、たった一つの世界の例外が出来上がった。
それから毎日、メルクの嗤いが神域に響いていた。
「実験は成功だ。これで飽きなくて済む。なんでこれに早く気づかなかったんだろ?」
最初は何かの手違いかと思っていたような素振りの人間たちが、天啓を求めて祈りを捧げていたが、何もないことを悟ると一転して無才の魂を虐め始めるのだ。
そしてその虐めの波は王国全土に広がり、
国をあげて自分達とは違う存在を排除しにかかる。
面白いことに、
「メルク様の為にぃ!」
そう言って人はそいつを排除しにかかる。
「俺はなんも頼んでないんだけどな」
そう言ってメルクは豪快に笑う。
「メルク様、次代の魂、集めて参りました」
桃髪のロングヘアを後ろ束ねた女性、メルクの側近であるリルがただ平穏な日々が映し出された空中を死んだ魚のような目で眺めているメルクに声をかける。
「わかった今行こう」
「こちらが今回下界に送り出す魂です」
「浄魂は?」
「済ませております。ただ...」
「ただ?」
「一つ指示を仰がなければできないものがありまして...」
「どれだ?」
「こちらに」
『お前かメルクってのは』
黄色に染まっている魂が思念を飛ばす。
「そうだ」
「リル、これのどこに私の指示が必要なんだい?」
「その魂はおそらく異界のものです」
「あ〜なるほどね」
メルクの口が裂ける。
「君、どこの世界から来た?」
この世界は人口が大きく増加したり減少したりしない。
何故か。この世界はこの世界だけで廻っているからである。
死者の魂は潔白にされ、新たな命を込められてまた下界に送り出される。
死者が多ければ多い程翌年生まれる子供の数は多くなり、
逆に少なければ少ない程子供の数も少なくなる。
が、稀に異世界の神々から魂が送られてくることがある。
彼らはみな等しく強大な力を持っている。
だからメルクは慎重に魂を診た。
(何も...ない?)
何も無かった。その魂には一切の力が無かった。
(なのに、枠は埋まってる)
才能の芽を植える箇所がない。
メルクの喉から声が漏れる。
『地球だ』
(地球か...初めてだなその名を聞くのは)
メルクは閃いた。
この魂を次の娯楽にしようと。
だって、どう足掻いてもこいつに才能は発現しないのだから。
この世界で生きる価値は、自分を楽しませること以外ない。
「のう、お前、欲しい物はあるか?お前の前世の記憶を封印するかわりに何でもやるぞ?」
『んー無双したいからチートをくれ』
「ほう...いいぞ。ただし、私よりも強くなることはできないようになっとるからな、注意してくれ」
メルクはその魂に力を入れた。使い手次第では化ける、感情の強さに比例して強くなる一つの力を。
『サンキュー』
「では、記憶をしまうぞ。」
メルクはその魂に刻まれていた記憶という名の傷を全て流した。
その後メルクは時空門に全ての魂を投げ込み、またモニターの前に座り込んだ。
「なあリル。あの魂は、このレンってやつみたいに幸せに死なないよね?」
映像の中で周りに泣かれながら息を引き取った30代半ばの男。
その男の顔は笑顔つつまれていた。
「彼は特別だったのでしょう。これまでにこんなことがありましたか?おそらくこれが最初で最後のハッピーエンドでしょう。
今回の地球からきた魂はおそらく見るも無惨に殺されますよ。
精神も肉体も」
「ふ、確かにそうだな」
メルクはそう言ってまた豪快に笑った。
「ん?おい!リル!」
「はい、どうされましたか?」
「この神父...今あの地球から来た魂のやつを哀れんだぞ!」
モニターには一人の少年と少し悲哀の顔を見せる神父がいた。
「そんなはずありません!既に今年の洗脳は終わっているはずです!」
少し焦った様な声がなる。
「現に見てくれ。」
メルクは体をズラしてモニターを見せる。
「あ...」
「もう一度やり直してくれるか?これじゃ楽しめない。」
「ただちに」
この世界。祝福を受けた人間は皆等しくメルクに洗脳される。
神の寵愛だのなんだのと言われている才能というのは、
実を言えばメルクの洗脳により改変された事実である。
才能は才能の芽から発芽した時点でその者の思考に、
ある一つの考えをインプットする。
神はメルクしかおらず、神の命は絶対。才能は力であり、寵愛の証だと。
これにより、他の神々、地神、空神、龍神、その他神々の存在は一気に人々の記憶から消えた。
メルクの本当の神の分類は廻神。
生命の輪廻転生を扱う神である。
ある時のメルクの過ちが、今この時を生んでいる。
「メルク様、終わりました」
モニターに目を向ける。悪意むき出しの少年が彼の手を掴んでいる。
「よし、いいぞ」
どちらに向けて放たれたのか分からない言葉を皮切りに、メルクは映像に没頭した。
親の言う意味のわからない罪と唐突な暴力。
彼が描いていた理想の人物像が壊れ、彼を襲う失望感。
親の声で入ってきた長大な一振の剣を見た時の恐怖。
全てがメルクにとって心地いい。
「ああ、やっぱり最高だよ君たちは」
そのあとも苦しみや絶望があると期待して──
「は?」
次におとずれたのは、結婚だった。
「は?」
また声が漏れる。
「はあああああああ!?ふざけんなよ!?てめえはただ必死こいて全員から逃げて俺を楽しませればいいだけなんだよ!!幸せになってんじゃねえ!」
最っ高に胸糞悪い。結婚してあんな幸せそうな顔。
「モーリーがいたな...」
『モーリー、聞こえるか?聞こえるものとしておく。暴れろ』
メルクはそう言って自身が創り上げた最高の魔獣の一頭に命令を下す。
「ギャハハハハハ!アッハハハハハ!腹痛てぇ!」
画面には現実を直視できていない虚ろな目が映っている。
その口からはチヅル...?と弱々しい声だけが漏れている。
「最っ高に気持ちいい絵面じゃねえか!まさにリア充爆発だぜ!ギャハハハハ!」
「ハハハハは、は?」
散々笑いまくったメルクが画面を見た時、そこにモーリーの姿はなく、血まみれの彼だけが立っていた。
「は...?リル?」
「お呼びですか?」
「今、画面を見てたかい?」
「いえ、見ていません」
「そうか」
(なんだ、何故今モーリーが倒された!?何故だ!?)
そのあとも、沢山のクソ人間を見た。その度にメルクは興奮し、落胆した。どれも、彼の都合のいいように終わっていく。
「もうそろそろこいつ殺してもいいかな。」
画面に映る猫耳の獣人に看病されている彼を見てメルクはそう呟いた。
「いえ、それはまだ早計かと」
それにリルは異議を唱えた。
「画面をもう一度見てください」
「ん?この流れって...もしかして」
画面に映るのは亜人の門兵と人。
話している内容は彼を返せということ。
「はい、前にもありましたよね?」
リルが半目で言ってくる。
メルクの顔に狂気が戻る。
「もっかい、あれ見れるのか」
おもちゃを見つけた子供のような笑顔には周りをゾッとさせる狂気が含まれていた。
「以外にも楽しませてくれるじゃないか、アデル君?」
なんか、書きたいことがありすぎて上手くまとめれませんでした。(いつもの事)
実を言うとメルクさんの話、出すつもりなかったんですよ。ここから先の展開が簡単に予想できるようになってしまうので...。
でも、やっぱりなんか書いてみようということで書くことになりました笑
それと、あまりにも行き当たりばったりに
この小説を書いているので話の前後で辻褄が合わなかったりします、
もしそんな点があれば誤字報告?みたいなので教えて欲しいです。(どういうのか知りませんが...)
最後に、もう少しで完結する気配がプンプンしますね。
連載小説とは?と言われそうですが仕方ないんですちょっとだけでも評価されるのが嬉しいんです。
まあもう少し粘ろうと思うので
今後ともよろしくお願いします。




