俺を自称する影
文才の無い俺にはここら辺が最難関...
前までもずっと難関だったけど...
『なあ、お前は結局何がしたいんだ?』
気がつくと、やはり暗がりにいた。
だが、先程までとかなり違う。
その違いを生み出している、見知らぬ影が話しかけてくる。
「何がしたいって?」
こいつには意思があり、知能がある。
それは、俺の思考とはかけ離れたものだが。
『お前は、世界を変えるんじゃねえのか?』
そう問いかけてくる。
『この理不尽な世界を変えるために生きてきたんじゃねえのか?』
「そうだ」
俺はこの腐った世界を変えるために今この時を必死に生きている。
『じゃあ、何故その力で滅ぼさない?それほどの力があれば一瞬でこの世界を一から創り直せるだろうに』
「俺に力なんてないさ...」
どうやらこいつは、俺のことを過大評価し過ぎているようだ。
才能のない俺に世界を滅ぼす程の力などない。
大切な人の一人すら守りきれなかったんだからな。
『お前に力がないと言ったら、この世界のやつらはこぞってなんの力も持ってないことになるぞ?』
そんなはずが無い。
彼らは強者だ。何もない俺の、絶対的な壁だ。
『いい加減気づけよ。自分に力があるってことくらい』
ため息混じりのその言葉が俺の中の何かに触れた。
「じゃあ、何故俺は努力しても報われない!?
何故あんなに同族に嫌悪されなければならない!?
何故あんな痛苦を味わわなければならない!?
何故、誰一人として守ることができない...」
消え入るような声で最後の言葉を絞り出す。
「強さの質が違うからだ」
そこに、一切の情をかけない言葉が投げられる。
「強さの...質だと?」
強さに質なんてない。強さを決定付けるのは才能と努力だ。
結果、みんなが似たり寄ったりになる。
『系統といった方がわかりやすいか?』
系統...だと?
『ああ、お前が考えてるのでだいたいあってるが...そうだな、
父さんを思い出してみろ』
ある単語で思考が吹き飛んだ。
心の中を疑問や怒りが埋めつくしていく。
そして──
吹き飛んだ。
「がっ!」
砲弾の様に吹き飛んだ体は勢いそのままに地面とぶつかり、10m程度転がって停止する。
停止と同時に思考が回復し、影に詰め寄る。
「おい、何すんだよ...」
低く、威圧するような声に対し、そいつは何の反応もなく、ただ、頭は冷めたか?そう聞いてきた。
「感情の制御位できるようになれ」
そいつはそう言ってさっきの続きを話始めた。
「父さんの才能は言わば自己強化系統。
んで、あの墓石みたいなやつの才能は観察系統。
そして──」
一呼吸挟んだ口から
「お前の系統は破壊系統だ。」
全く理解できない言葉が吐かれた。
「はかい...系統...?」
それは、どういう意味だ?そのままか?
「さっき強さの質と言ったな。父さんは自己強化に強さを発揮し、墓石野郎は観察に強みを持つ。
俺は破壊に対して強さを発揮する」
「は...?言ってる意味がわかんねえよ。父さんが才能を持っててそれが自己強化に強さを発揮するってことはわかる。でも、才能のない俺が、なんで破壊に対して強さを発揮できるんだよ」
こいつは、何を言っているんだ?
俺に才能が無いなんて、周知の事実だろう。
「何回も言わせないでくれ。俺には才能があるんだ。認めろ」
真面目な表情で手を胸に当てて言ってくる。
「そりゃあお前にはあるだろうよ!」
なんたってこの世界には俺以外無才のやつは今いないのだから。
「まず前提が噛み違ってるなこれは...」
何か言ってる。でもよくわからない。
「おい、お前は何者だ?」
上から目線の物言いにイラッときた。
「まず自分から名乗れ!」
反射的に怒鳴り返した。
「答えろ」
そこに、絶対零度を思わせる凍てついた声が突き刺さり、
俺は一秒も持たずに自分が誰か言う。
「金森 翔吾という名前に聞き覚えはないか?」
「ない」
即答する。誰だそれ。
「やっぱりか...」
そいつは深くため息をつき、
「いいか、よく聞け。今俺が言った名前は俺の名前であり、お前の元の名前でもある。」
そう衝撃の言葉を言ってきた。




