ボーナス
光線銃やビームサーベルを渡されたところで私にこんなもの使いこなせるわけない
ここに来て傍観するしかないのか
「お姉ちゃん、お父さんからのプレゼント」
上の階から真衣がひょいと投げてきたのは中身がすっからかんな木の杖だった
「ここでも魔法使えるよ」
半信半疑で手頃な水魔法を撃ってみると、ドピュッと水が出てきた
初めて魔法を使えたときの感動はきっとこんな気分なんだろうなんて思っていると、野太い男たちの叫び声が響いてきて、女子の甲高い叫び声も鳴りだして、何事かと周りを見ると皆等しく上を向いていた
「尚、このクエストで最も多くの敵を倒したクラスには海外旅行を進呈します」
ああ、これは間違いなくお父さんの仕業だな
このご時世旅行なんてとてもできないはずだからどうせ仮想空間で擬似旅行するだけだろう
そんなもののために頑張るのはちょっと
「あいっ、何ぼーっとしてんだ。おれら1年5組が絶対に勝ち取るぞ、ハワイ旅行」
「いやいやいや、ハワイなんて海とヤシの木だけだろ?ここはやっぱりエジプトに」
「あんな他人の墓見て何が面白いんだ。だいたいハワイにはな、」
海外旅行を奪取すべく熱く燃えている圭太と坂本に若干呆れてしまいそうだが、だがそこがいい
「私もハワイがいいなあ」
「あいちゃん無理して圭太の言うこと聞かなくていいんだよ?どうせこいつはあいちゃんが行きたいとこならどこでも賛成するから」
「はあ?そんな訳あるか。おれはハワイ以外認めねえからな」
圭太がなぜここまでハワイに拘るかはわからないけど、クラスで協力して何かをやるって体育祭みたいでとても楽しい
いや、体育祭じゃここまで活躍できないからこっちの方が何倍も楽しいかも
現実世界に戻ったらどうなるとかそんな先の不安も頭から抜け落ちるくらい走って敵を見つけて魔法を撃ち込む
こんな楽しいこと、あっちじゃできないだろうしもうこのままここで一生ゲームしてたいくらいだ
でも、それじゃダメなんだよね
敵が残り3体、2体、1体
最後の敵は私が魔法で拘束して圭太が上から脳天を突き刺した
クエストクリア
ランキングが表示された
1年5組は、他を圧倒してぶっちぎりでトップだった
「よっしゃあ、ハワイだ」
最後はクラス全員で輪をつくりハワイを喜んだ
とてもテンションが上がっているはずなのに私の意識がだんだんぼーっとし始めて、気がつくとみんなの顔がボヤけてきて、いつのまにか深い眠りについていた




