あとちょっと
そういえば初めに圭太のことを見てビビッと来たのは、私の圭太への想いが記憶を失ってもなお私の中に存在したおかげなのだろう
私と圭太はきっと頑丈な赤い糸でがんじがらめに縛り付けられているという夢見がちな少女漫画のヒロインが考えてそうなことで一人きゃっきゃしてると、流暢な英語のアナウンスが流れて、1秒1秒を刻む電子音が鳴りだした
私は今までたくさんの物語を読んできたが、こういうハッピーエンドを迎えると思われるときにタイマーが作動するときは爆弾なり人工衛星が降ってくるなり大抵登場人物たちが再び危険に晒されている
電子音の正体が何か確かめてみると、例に漏れず私たちも危機を迎えてしまったようだ
「まずいことになったなあ」
「お父さん!?」
どこからともなく父が現れて衰弱しきったゲイツの身体をあちこち調べた
「ゲイツの自爆プログラムが起動してしまった。あと10分でこの世界は無くなってしまう」
「たったの10分???」
「世界が消えると真衣たちがいる世界にも影響が出るかもしれないから、お前たちプレイヤーだけでなくて全日本国民を現実世界へ戻さないと大変なことになるかもしれない」
いくら人口が減少していってるとはいえまだ何千万人もいる国民の命が私たちの手にかかっているなんて
「いいか、お前たち全員をログアウトさせるから目が覚めたらすぐにみんなを現実世界に帰してあげるんだ、わかったか?」
私がすることはたった一つ、それだけだからすぐに理解できたけど、ここでわかったと言っていいものなのか
ついさっき思い出した母親のこと
最期に見た母親の微笑みと重なって見えた
「お父さんも一緒に来るよね?」
「...それはちょっとできないかな」
隠れんぼで見つかった子供みたいに柔らかい表情で私を見つめてくる
私はその視線に何も言えなくなってしまった
「じゃあ、圭太くん、あいをよろしくね」
もしものことを考えていたら父は準備を済ませていたみたいで、すぐにでも私たちをログアウトさせようとしている
「ぜったい、ぜぇったいに戻ってきてよ?」
「わかった」
目に焼き付けようと父をマジマジと見ていたけど、あっと言う間に目の前に暗闇が出てきて、父を飲み込んでいった
気も遠ざかっていき、私は浅い浅い眠りについた




