プログラマー
「まだ負けたわけじゃないでしょ」
恐怖の闇に包まれていた私の心を晴らすように一筋の光がさした
ハッとして我にかえると、こんなときも動揺せず勝ち筋を探す優秀な妹が叫ぶ
「相手の能力限界まで下げたから、お姉ちゃんは圭太くんを助けて」
その言葉と同時に圭太を踏む力もみるみる弱くなり、圭太は自力で敵を押しのける
それを見て私は回復魔法を撃つ準備に入る
そして、妹が敵へ飛び込む
空いていた右手に光が集まり、立派な勇者の剣のようなものが形成される
「いけーーーーーッ!」
回復魔法を放ったあと、妹の背中を押すように私と圭太は叫ぶ
キイイイイイイイイイイイインっ
剣がぶつかり合う音が響き渡る
この勝負、真衣ちゃんの圧勝で終わると思っていたから、まさかこの音が鳴り響くとは思いもせず、私を激しく動揺させる
「あんた、なんで能力が戻ってるの?」
両者互角の攻防のすえ、立ち尽くしていた真衣ちゃんが聞いた
「お前らとやってることは一緒だよ。能力を下げられたから上げただけだ。プログラムを書き換えてね」
「あなたそんなことしてなかったじゃない」
「おれじゃねえよ、この基地にいるプログラミングの精鋭たちが書き換えてくれたんだよ」
「精鋭?」
「ああ。お前みたいな人工知能のせいで用済みとされ、このヘンテコな世界へ連れてこられたプログラマーたちが、必死で能力を書き換えてくれてるんだよ」
「はあ」
人工知能を目の敵にしてくるが、残念ながら私は人工知能知能ではなかったので本当に見当違いなことを言ってくるので思わず笑ってしまいそうになる
まさかそんなことを企む組織があったなんて、まるで私たちが悪役のように思われているのに呆れてしまいそうだ
「わかったろ?お前たちの小細工は通用しねえんだよ。だから」
真衣ちゃんも能力をカンストさせているようなので、お互い能力値が一緒だ
「正々堂々実力だけの対決しようぜ」
「望むところよ」
戦いが始まろうとしていたそのとき
何者かが相対する2人の間に立ちはだかる
「やめとけ、あい」
遠くから援護射撃しようとしていた私の目論見を一瞬で見抜いた人影の正体は...
「お父さん?」
人前で仮面もつけずに現れた父親の行動に私たちは驚いた
圭太に見せてはいけないと思い咄嗟に魔法で眠らせてしまった
さらに私たちを驚かせたのは
「そんな、あなた、もしかして...」
「久しぶりだな、安田」
この2人がまさか知り合いだったとは
まあ父親も安田という男もプログラミングに長けていることから、もしかしたら同業者として何かつながりがあったのかもしれない
「今日は手を引いてもらえないか?私はは君たちと戦いたくないんでね」
「なんであなたがこの世界にいるのかわからないけれど、いいですよ。今日は引きますよ」
「悪いね。いつか必ず君たちには真実を伝えるから、気長に待っててくれ」
「そうですか」
まるであてにしてないように、素っ気ない返事をして安田は基地へと戻っていった
「さあ、私たちも戻るぞ」
怒涛の展開についていけずあっけにとられていた私たちにそう呼びかけると、あっという間に転移させられる
「お前たちも詳しい話は後で聞くからな」
初めてイラついている父親を見て恐怖におののきながら、もといた4層の宿へワープした




