ゲイツ
昔は華やかだったここ官邸も、今の氷河時代による国の貧困状態のおかげで寂れてしまった
使用人など次々と減っていったことで静寂に包み込まれたこの官邸に再び栄華をもたらし、世界各国を牽引していたあの頃の日本という国を取り戻す
首相である室井は裏で画策していた
「おい、田代。数字が全然伸びていないんだが」
「は、はい。それはその、ゲイツの仕様上致し方ないことでして。ゲイツは己の知的好奇心が満足されて初めて殺戮マシーンとなるので、まだ少し時間がかかると思われます」
「そうか、それならいい」
手にしていたデバイスを置き、
「この計画を成功させればアメリカに恩を売ることができ、アメリカとの貿易再開に大きく前進できるんだぞ。そこら辺わかってるよな?」
「もちろんです」
返事を聞いた室井は、それ以降何も言わなかった
「はあ、何であんな怖いんだあの人は」
首相のもとへ週に一度の定例報告を終えた私は逃げるようにして研究所へ戻ってきた
「田代おつかれー、早速今日の報告書読んでおけよ」
電脳世界で何が起こっているか、その全てが書かれた分厚い紙の束が目の前に置かれてげんなりしてしまう
「それにしてもあのおっさんなんで毎週毎週報告させるのかね」
こっちはわんさか仕事がたまっているというのに、西のやろうは呑気にソファーにぐったり横たわり端末で動画鑑賞をしている
「おれが聞きてえよほんと。なんであの時じゃんけんに勝っちまったんだろおれ」
自分とぐうたらしてる西は日本電脳空間監査機関という名前は立派だが、現実は人員2人という極小規模の機関といっていいのかためらわれるような機関であり、日本政府が管理している電脳空間の監視だけをするという首相直属の機関である
業務内容は本当に監視しかない
電脳空間で日本国民がより良い生活を送れるように管理している別組織があり、そこがこの空間への干渉する権利を掌握してしまっているため自分たちが何かできるわけではない
ではなぜこのような機関が存在するのかというと、それは先程首相が言っていたある計画のためである
今後各国で導入されるであろう現実と電脳世界への民の分離政策を見据えて、戦争において電脳空間での戦力の重要性に気づいたアメリカが開発した殺戮プログラム「ゲイツ」。これの実証実験なるものを日本の電脳空間で行うというのが大まかな計画の全貌である
首相主導により行われているこの計画は未だに食糧大国であるアメリカから食べ物をもらえ、ついでに国民の数も減らせるという一石二鳥の計画なのだ
もちろんこんな計画存在がバレれば国民から袋叩きにされるのは目に見えているので、あくまで本当に極々少数の人間によって行われている
そしてその計画において、ゲイツの行動を監視し、成果を報告するのが我々の仕事である
こんな非人道的なことをしているのにこんなゆるい雰囲気で仕事をしているのは我々に倫理観がないとか人格が欠如しているとかではない
もちろんこんなこと初めは心を痛めながらやっていたはずだ、たぶん
実は我々はある人に頼まれ、まるでこの計画ぎうまくいっているように虚偽の報告を行っているのだ
そのある人は今頃この計画を阻止しようと躍起になっているはずだ
プレイヤーのフリをしているゲイツを倒すために




