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決勝

「はあ、はあ、危なかった」


割とギリギリの戦いで一撃をくらったときには負けもあり得るなと思うほどだったからまあ覚悟はしていたけど、まあなんとかなってよかった


ひとつ心残りなのは、おれが勝ってしまったことで渚というのが誰のことなのかが謎のままになってしまうことかな


まあその辺はこの武闘会が終わってからじっくり問い詰めればいいか








もうひと試合も決着がつき、なんとあの爽やか野郎が勝ち上がってきたようだ


万が一負けでもしたら、あいとあいつが永遠に結ばれるとかいう胸糞悪すぎる展開になってしまうからそれだけは避けたい


「うおっ」


また唐突にワープさせられ驚いて変な声が出てしまう


今までの試合は同じような部屋に飛ばされてきたが、今回は違った


城の大広間のような場所で、いかにもシンデレラが踊ってそうな雰囲気漂うお洒落な部屋で、 とても武闘会が行われるようには見えない




正直県大会決勝なんかよりもすごい気合いが入っている気がする


あいつを倒すためにこの大会を頑張ってきたんだ


目を閉じて集中力を高める


「では、決勝戦開始っ」


開始の合図とともに目を開けた


「えええっ、誰だお前???」


目の前には爽やか長谷川隼人がいるはずだと思っていたら、全く別人の爽やかとは程遠いぽっちゃり君が立っていた


「おれ?おれは柔道部の松本だけど」


「あいつは?長谷川はどうなった?」


「あいつはふつうに予選で負けてたな」


「はあ?」


あんだけでかい口叩いといて実はたいして強くなかったなんて


よくよく考えたらあいつが戦っているところなんか見たことなかったし、おれが勝手に勘違いしていただけだからおれが悪いんだけど


「お前、インターハイ盲腸出れなかったやつだろ?おもしれーなほんと」


煽り上手な松本君はおれを怒らせるとどうなるか知らないらしい


試合では一度も使ったことのなかった突きを披露するときが来たようだ


突きは痛そうだから人に打つのは好きじゃないんだけどまあこいつがおれに打たせるのが悪い


ちゃんとあいつが笑い終えてから駆け出し、喉元目がけて素早く突いた


「ゔええええ」


流石のガタイがいいことだけあって一撃では仕留められなかった


だが致命傷を与えることはできたし、多分あと一発で倒せるだろう


とりあえず今までの思い出を振り返りながら、思いのたけを込めて、斬る





味気のない大会だったが、まあ目的は達成できたわけだしめでたしめでたしだろう


1人目を閉じて勝利の余韻に浸っていると


「おめでとう、神野圭太君」


仮面の男がどこからともなく現れた


「ああ、ありがとうございます」


「それで早速なんだけど、君が一緒に踊りたいのは安達あいでいいかな?」


「はい、、、ええ???なんで知ってるんですよ」


「それは、」


笑うはずのない仮面が笑って見えたのは気のせいだろうか


「私はゲームマスターですから」


冗談ぽく言ってはいるがおれには冗談なのかどうかゲームマスターとやらはそんな神のような存在なのか知るよしもないのでひとまず信じてみることにした


「では早速誘いに行きましょう」


そう言って指をパチンと一回鳴らす


するとおれはやたら女子がたくさんいる部屋へと飛ばされた


数百人もいる中であいを見つけるのは簡単だった


なぜならちょうどあいの目の前にワープしていたからだ


「圭太...」


これだけの人の前で話すことになるとは思わなくて手に汗をかき恥ずかしさでいっぱいだけど


「おれと、踊ってくれませんか?」


怖くて目を閉じて、あいの返事を待つ





10秒、体感では5分くらい待っても返事は聞こえてこなくて、もう無理かもしれない、そう思って顔を上げると


「こっち見るなぁ」


弱々しい力でおれの顔を押さえつけて、泣き顔を必死に見られないように抵抗するあい


「なあ、返事は、返事を聞かせろよ」


また何秒か間があいて、けれど今回は5秒が5秒に感じるくらい不安はなかった


あんだけ嬉し涙を流してくれるんだから、断られるわけないだろうという自信に満ち溢れたおれは、さっきとは変わって余裕を持って待った




「いいに決まってるでしょ」



あいがおれの手をとった瞬間、会場にいる女子たちは一斉に湧き出した


いろんな祝福の言葉とか投げかけられてたんだろうけど、何も聞こえないくらい、おれたちの世界は出来上がっていた












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