怪しい村
「馬場君によるとこのジャングルのどこかに遺跡があるんだって。たぶんそこがボスのいるダンジョンかな」
海沿いの爽やかな風や波の音など一切無い
ジメジメしていてカラフルな鳥や虫の鳴き声が響き渡るこのジャングルを私たちはさまよっていた
遺跡なんてすぐに見つかるだろうと思っていたが、この層のマップを見てみるとほとんどがジャングルが生い茂っていて全く見つかる気配がない
こんな役立たずな情報をつかまされたことに憤りを感じ調査不足の馬場先輩にチョップをお見舞いしてやりたいくらいだ
「ああー、村があるよ」
全くもって変化のない景色に飽き飽きしていたところでの村の発見は私の疲れを吹き飛ばした
「誰か遺跡のとこ知っている人がいるといいんですけど」
「こんだけモブがいるんだし1人くらい知ってるでしょ」
そう言って聞き込みに行った真衣先輩に続いて私もモブの元へ向かった
「あのーすみません」
「今日は天気がいいなあ」
「え、いやあの、遺跡について聞きたいんですけど」
「今日は天気がいいなあ」
「...」
会話が成り立たない
老人の姿をしたモブだからなのか、耳が悪くて独り言が多い老人の特徴を再現しているからなのか
それとも
この老人は諦めて近くの綺麗な女性に話しかけてみる
「すみません」
「晩御飯何にしよう?」
「ええ...」
「晩御飯何にしよう?」
こっちもダメだ
一体何が起こっているんだろう
今の時代モブ1人1人に会話を考えさせてより自然なゲームを作るものだし、私だってそうしたはずだ
それなのにこんな昔のゲームのような一言しか喋れないモブが存在するなんて
2層でのボスの能力が書き換えられたのもそうだし
これはこのゲーム内にハッカーがいるということになる
でも誰が一体何のために
思わず真衣先輩を見てしまったが、昨日一緒に遊んでいてとても楽しかったし、悪い人だとは思えなかった
だけど他に怪しい人物はいなかったし
「あいちゃーん、こっち来てー」
「はーい」
会長に呼ばれたので行ってみるとそこには
怪しげな中年男性がいた
中年男性は別に他にもいるしそこは何も問題無いんだけど
見るからにハリボテ感が満載の教会とモブのはずなのにステータスが見えることが明らかにこいつがハッカーだと物語っている
おそらくこいつが村のモブたちの言語能力を奪い教会を急いで建ててあたかも牧師のモブになりきろうとしたのだろう
だとしたら遺跡には罠が仕掛けられていたり強い敵が待ち受けているかもしれない
ここは一旦戻って偽モブについて調べたほうがいいのでは?
そう提案しようとした矢先
「ええっ?すぐそこに遺跡があるんですか?しかも中にはボスが??」
まんまと大きな釣り針に引っかかってしまった会長
「会長、何か嫌な予感がするんですけど」
奈々さんの勘が冴え渡っているけど
「大丈夫だって、あのおじさんが私たちを罠にはめようとしてるように見えないでしょ?」
「んー、まあ、そうですね」
奈々さんの押しの弱さが仇になってしまう
無理矢理会長を止めようかと思ったが、ここで敵を倒しておかないと他のプレイヤーが犠牲になるかもしれない
真衣先輩の戦闘を見るいい機会にもなりそうだし
会長に従うことにした
「それじゃあ行ってみようか」
「ううっ」
「ま、真衣ちゃん大丈夫?」
「すみません、ちょっと気持ち悪くて。今日あの日が来ちゃってて」
「えー早く言ってよー、そんな状態で戦ったら危ないし真衣ちゃんは村に残ってね」
「すみません役に立たなくて」
「いいよいいよ、だってあの日なんだからしょうがないよ」
こうして私たちは真衣先輩をのこし遺跡へ向かうこととなった




