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哀れな男

あの芝居染みた真衣さんの行動に突っ込もうかと思ったりもしたけれど


これは真衣さんの正体を暴くチャンスにできるのではないかと思いあえて突っ込まなかった


おそらくこの遺跡の奥には理不尽に強い敵が待ち受けているだろう


今からシステムにアクセスして遺跡内のデータをチェックして書き換えてもいいんだけどそうするとどこぞのハッカーに私の正体がバレる恐れがある



でも私なら、どんな敵でも倒せる!


だって私はこのゲームの開発者なんだから


前もって用意しておいたこのゲーム内最強の杖を強く握りしめ


私は2人の後を追って遺跡に入った








「ふふふふふ、まんまと騙されやがって」


あの方が用意した遠隔カメラを通して遺跡内の様子を見て、さっきの女3人が死ぬことを確信した


あの遺跡は5層をクリアしたレベルのプレイヤーがギリギリクリアできるかどうかという難易度であり、ラスボスにいたって50レベルという現段階で倒すのは極めて困難なダンジョンだ


その敵たちのレベルを書き換えそこがあたかも3層のキーダンジョンのように装うことでこれまで10名のプレイヤーをゲームオーバーに追いやった


この調子でいけばこの世界を私たちが支配する日も近いだろう


「あはははは、いい気味だ」


あっちの世界での借りをやつに返せる


そんな日を想像して浸っていると


「モブがこんなところで何してるのかな?」


聞き覚えのある声に身震いしながら振り返ってみると


「ね、牧師さん」


おまえはさっきの」


まるでこちらの正体を見透かしたかのように笑みを浮かべる少女におれはゾッとした


「牧師さんは...黒田さんて言うんだ」


「なぜ、おれの名前を?」


「そんなこと気にしない気にしない。それより黒田さんは何をしようとしてたのかな?」


「おれは何も、何もしてないからな」


「ふうん、そっかそっか」


何か考え始めたと思ったら


「お、そろそろボス戦が始まるよ」


気を取られている間にあっという間にあの3人はボスまでたどり着いたらしい


わりと楽しげに映像を見つめる少女が滑稽に思えてきた


「おまえは知らないと思うがこのボスは50レベというとてつもなく強い敵なんだぞ?そんなやつと戦ったらおまえの仲間はみな死ぬだろうな」


仲間が死んでいく様子を見てこの余裕をかましてる少女がどのようにして絶望していくのか


差し迫っている実に愉快な未来を思い描き勝ちを確信した


この不気味な少女が絶望しているうちにあの方のもとへ連れ去ればいいのだ


勝ち筋が見えたおれは3人の女子高生が早く死なないかと待ち遠しくなってきた


「ボスよ、さっさと殺っちまえ、はははっ」


「50じゃ足りないかな」


高ぶるおれとは対照的に仲間の死に際を前にしてもいたって冷静な少女に恐怖を覚えた


「この3人を倒すなら70レベとかにしないと簡単に倒されるわよ」


「はあ?何を言ってんだおまえは。このゲーム内で1番強いプレイヤーでも34レベなのにどうしてこの弱そうなやつらが50レベのボスを倒せる?」


「いやあの子が本気出しちゃったらねー。それに他2人も強いし」


「ソルイーグニス!!!」


映像から聞こえてくる呪文の名前はおれの知る限り最強の炎呪文の名前だ


「な、なんなんだあいつは?」


太陽のごとき眩い光を放つ巨大な火球はボスをどんどん飲み込んでいった


そして


「解除」


火が消えてそこにはボスの姿はなかった


あいつは一撃で自分よりも圧倒的に格上のボスを倒したのだ


「ちょっとやりすぎじゃないかな」


少女が見入っているうちに


おれはワープ装置を取り出して逃走を図った


だが


「え、どうして、どうしてワープできない。おい、何でだよ」


「ああ、私が結界を張っておいたからね。ワープは使えないし連絡もできないようになってるの」


にっこりと笑う少女は悪魔に見えたが、よくよく考えてみればあいつがおれに何ができるというのか


このゲーム内はPVPなどのプレイヤー同士の戦闘はできなくなっている


だから悪魔がおれにできることはないはずだ


「じゃあ教えてくれない?あなたたちが何をしようとしているか」


「誰が教えるかおまえなんかに。いくらおまえでもおれに直接危害を加えるなんてできないだろ?」


「はあ、しょうがないな」


小声で呟いたつもりかもしれないがおれの耳にはしっかり届いた


この駆け引きにおれは勝った


おそらくおれのことは諦め仲間の元へすぐに行くのではないか?


ひとまずこの佳境を乗り越えられたならさっさと彼の方の元へ行って報告しなければ


この悪魔とチート級に強い魔法使いのことを


ジャキジャキジャキーン


背後から金属の擦れる音がいくつも聞こえた


音の正体を知ろうと後ろを見ようとすると


「それ以上動くと突き刺すよ?」


窓に映る自分を見てみると自分の背後を剣が取り囲んでいる


「こんな呪文おれには効かないはすだぞ?」


プレイヤーの周囲を覆う特殊なバリアが跳ね返すに決まっている


「ほんとかなー」


そう言っておれの首に刃先を当ててくる


「イタッ」


首筋を滴り落ちる何かを感じ、こいつの呪文は自分に効くということがわかってしまった


「な、なんでおまえの呪文は効くんだ?おかしいだろ。PVPにまつわるファイルはおれたちがどうがんばっても入れなかったというのに」


「私もあなたたちと同じような存在だからね。こういうこともできちゃうんだよね」


「おれたちと同じって、おまえはどこまで知ってるんだ?」


「んー、あなたがあのプロジェクトに参加していたことは知ってるくらいかな」


「あの、てまさか、おまえはあいつの」


「あーもうみんな帰ってきちゃう。もう全然話してくれなかったね。まあどっちみち倒すつもりだったけどさ」


「お、おい、まさかほんとに?」


より刃先が強く押し付けられ感じたことのない痛みが襲う


「あなたはちょっと知りすぎちゃったからね。でもほんとに死ぬわけじゃないから安心してね」


「え、死なないってどういうことだ」


「あーあなた何も知らないのね。じゃあほんとに私が知りたいこと1つも知らなかったのかー」


「やめろ、やめてくれっ」


思わず走り出して必死に逃げようとする


「いい夢見なよ」


後ろから追ってくる気配のない悪魔はよくわからない言葉を叫んでいる


ひたすらひたすら結界の外を目指して走り続けようやく結界が見えてきた


あそこを越えればワープできるぞ


ワープ装置を握りしめて結界を抜けようとした


その瞬間


「ログアウト」


ワープしようとした瞬間


哀れな男の姿はどこかへ消えてしまった


「めでたしめでたし。でもちょっとやりすぎたかな。んー、まあいっか」






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