会議開始!
お待たせしました!
2020年1月8日、神聖サザンクロス帝国帝都バルショイグラード
ここには明日の会議に向け、各国の船が停泊する。よって港もとてつもなく大規模なものとなる。そして港の係員は海を眺めて、どの船がくるのかを監視している。
「そろそろくる頃だろう…ん?来たな」
監視員は双眼鏡で艦種を識別する。
「んーあれは…アストラルの艦隊か…えっと戦艦1、駆逐1かな。んで隣はパルティシュラ連合の艦隊か。戦列艦5、コルベット小型艦3と」
監視員は記録を取りつつ他の係員に受け入れ準備をさせる。するとどの船よりも大きな軍艦が目に入る。
「お、おい!見ろ!戦艦サザンクロスだ!全長501m、全幅72m、主砲80cm四連装砲四基、副砲31cm二連装砲四基
対空砲、及び対空機銃350基、魚雷発射管60基を備える世界最大を誇る超巨大戦艦。世界最先端の魔法技術をもってこの巨体と大火力、そしてそれに見合うだけの防御を誇る。まさに世界最強の戦艦…」
「おいブツブツ言ってねーで仕事しろ!」
監視員の同僚から注意がはいる。しかしその同僚もサザンクロスに見惚れている。
それもそのはず。戦艦サザンクロスは滅多に人前に出ない。普段は姉妹艦のフェニックスが人目につく。姉妹艦と言っても装備が全く違うため、姉妹艦と言うなら同時期に建艦されたと言う程度なのだが…
しかしサザンクロスは名前自体が有名で、特別な式典で目にすることもできる。中には帝国の守護神。皇帝の鉾と呼ぶ者も多い。それだけサザンクロスは慕われているのだ。
サザンクロスはそのまま通り過ぎて行った。するとその奥から船というより艦隊が現れたことに気づく。
「ん?艦隊?どこの国だ?戦艦2、駆逐か巡洋艦が3、竜母が…1か?やけに重装備だな…」
あまりにも不審な為本部に連絡を取ることにした。
「こちら各国艦隊寄港予定地、不審な艦隊発見。そちらに情報はあるか?」
『こちら本部。少し待て』
3分ほど待つと本部は監視員に旗の照合を求めた。
「赤い丸に放射状に伸びた赤い線か…ああそうだそんな感じだ」
『その艦隊は新たに先進国入りしたニホンの艦隊だ!直ちに受け入れ準備をしてくれ』
「あ、あれがニホン艦隊…すげぇ…アストラルよりもずっと進んでるぞありゃあ…って見惚れてる場合じゃねぇや。おい!ニホンの艦隊だ!受け入れ準備を急げ!信号での誘導もだ!」
こうして、日本艦隊は難なく惑星半周して、目標のバルショイグラードに辿り着いた。
戦艦はりま艦橋
大谷は目の前を通過した船に驚きを隠せず、思わず部下にぼやく。
「見たか、あの船を。我が国にかつて存在した世界最大の戦艦大和をはるかに凌ぐぞ…」
「はっ。見た所大和の三連装砲ではなく、明らかに四連装砲。そして何より口径がバカみたいにでかいです」
「ふむ…衛星で何度か確認こそされていたがまさかここまでとは…」
戦艦サザンクロスは日本の軍事衛星に何度か写っている。その巨体故、担当者がかなり困惑していたが、目の前で見ると困惑どころではない。
「まるで、自分たちがおもちゃになった気分だ…」
大谷はそう言い表すより他になかった。
戦艦サザンクロス艦橋
まぁもちろんながら、はりまから確認できたということは、サザンクロスからも艦隊を確認している。
「…あれが…」
「のようですな」
主語も述語もなく、神聖サザンクロス帝国海軍第一艦隊司令のディミート・ハルザンカとサザンクロス艦長グリゴリー・エルザスは意思疎通を図る。
彼らとしては面白いものを見れた気分ではあった。
「ふむ…まぁ見ものだな」
「全くでありますな」
「さて、我々ら第一艦隊特殊警戒部隊も目標地点へ急ぐか」
「了解です。旗艦最速!目標へ急げ!」
戦艦サザンクロスは任務へとついていった。
2020年1月10日世界圏内会議会場
佐藤はただいまとてつもない圧力に胃に穴があくどころか、胃が潰れそうな気分だった。なにせ、先進国各国首脳の目が佐藤に釘付けなのだから。
ここで、世界圏内会議について説明しよう。
世界圏内会議とは、世界にいくつかある先進国各国首脳が定期的に集まり、世界のあり方を決める会議である。参加国は以下の通り
・神聖サザンクロス帝国
・サンサ王国
・プルーボ共和国
・アストラル軍邦
・パルティシュラ連合
・カルスラ教皇国
となる。
カルスラ教皇国は先進国でも何でもない。だが、宗教としては世界で最も広く信仰されている為呼ばれている。
また、カルスラ教皇国は神聖サザンクロス帝国とは別の意味合いでの魔法_「古代魔法」に精通しており、現代の魔法では太刀打ち出来ない面があるという理由もある。
今回そんな中に日本国という国が参加する。
しかも未だ日本は未知が多い国なのである国を除いて警戒と興味の入り混じる視線が佐藤に向けられているのだ。
だが、佐藤はその視線に胃がどうこうなりそうなのではない。先ほど言った、唯一警戒と興味の入り混じる視線ではなく、ただただ殺気を送り続ける国の代表、サンサ王国国王パルサ・サンサである。
日本は何もしていない。が、間接的に潰したのも間違いない。
佐藤は一切気にはしていないが、この視線を感じ取った各国首脳は「お前ら何したん?」みたいな感じの視線が飛んで来るのでプレッシャーとストレスがマッハなのだ。
そんな視線のやりとりが行われている現場を議長席に座る老翁、神聖サザンクロス帝国皇帝、
シュードル・ラメノフスキーが一喝する。
「全員揃ったのを確認したので、これより、世界圏内会議を開始する。議題に入る前に、まずは新たに参加した国、ニホンの首相、サトウに挨拶してもらおうかの」
シュードルに挨拶を求められた佐藤は席から立ち上がり、全体に向かって自己紹介と国の紹介を行なった。
すると国の紹介が終わったあたりでプルーボ共和国大統領、メルソナ・ロレンツォッティが質問する。
「いくつか伺いますが、ニホンには明確な元首は存在しないとはどういうことでしょうか?お話を聞く限り、そのテンノウというのが国家元首にあたるのでは?また、その場合何故テンノウではなく貴方がここに来たのか、ということです」
佐藤は質問内容に感心する。短時間の簡易な説明でそこまで読み取るメルソナの能力にだ。
メルソナの質問に佐藤は答える。
「天皇陛下は内閣の助言を受けた国事行為しか出来ず、政治的な決定権を有しておりません。それは皇族も同じです。それに天皇陛下は大変ご高齢の為、船での渡航は不可能と判断しました。元首という立場なのですが、政治的権限を有しておらず、しかし国民の総意のもと象徴の立場にあるという何とも微妙なところで、その上憲法にも元首の明記もなく…ざっとこんな感じですね」
その回答にメルソナは満足げに頷く。
すると今度はシュードルから質問が飛んで来た。
「ふむ、では私からも聞きたいことがある。国民の総意と言ったが、その国民の意思は揺らいでおらんのかね?」
「天皇、皇室そのものが長らく共にありました故、“存在して当たり前”になってしまってますから…まぁ一部は納得していませんね」
ほう…とシュードルはとても興味を持った目で佐藤を見た後、また話を聞いても良いですかな?と佐藤に訊いた。これに佐藤はもちろんですと頷き答えた。
「さて、紹介も終わった事だ。早速会議を始めよう。議題は…魔界についてだ」
議題発表に会場はざわめく。佐藤は魔界の話題に触れてざわめく理由は知らないが、魔界についての知識は聞いた事がある。
魔界は現在開発はおろか植民すらされていない未開の大陸。サザンクロス帝国から海峡を隔てて隣接しており、その監視もサザンクロス帝国が行なっている。先ほどの戦艦サザンクロスもその哨戒任務に出ていたのだ。
魔界が未開の理由。それは悪性亜人の存在だ。悪性亜人とは、知能が低く、どちらかといえばケダモノという存在。また非常に凶暴で人間にすぐに襲いかかってくる輩である。この存在故に安易な植民、開発が出来ず未開となっているのである。しかし、その程度ならば戦艦サザンクロスを監視に充てる必要などどこにもない。実は戦艦サザンクロスが哨戒や監視につくようになったのはここ数年の話で、其れ程の危険が起こったということを指し示すに他ならない。
「ここ数年来、古代遺跡の活性化が確認されておる。それと時を同じくして魔界でも悪性亜人の動きが奇妙になりつつあったのは皆も知っておろう。そして最近の活性化は異常を極めておる。おそらく…間も無く何かが起こる。それこそこの世界を変質無しに崩壊させかねん何かが…これは私の予想じゃが、おそらく古代遺跡の主が戻ってくるのではないかと思うとる」
会場がざわめくどころか完全に大混乱を起こした。シュードルに対する罵詈雑言だ。しかしシュードルは構わず話を進める。
「おそらくこのままいけば我々は滅ぼされる。神話と同様にな…故に我々は団結が不可欠じゃ。皆協力してくれるか?」
会場のざわめきはある程度は収まったが、やはりうるさい。しかしシュードルの声が通らぬほどでもない。
各国首脳から反応が返ってくる。
サンサを除き協力の意を示した。サンサはと言うと、確証もないのに協力はしないと答えた。
実際はアシハラとの戦争で軍が壊滅したのだが…
そんなことはみんな知っているし自業自得だと思っている。
結局、その後はあまり進まなかったため、翌日に持ち越しとなった。
長らくお待たせしました。
次回もちと開くと思います