002★断罪と下された処刑宣告
本来なら、こんな各国の王族貴族に国内の貴族達が集まるパーティー会場で、晒し者の断罪をされれば、屈辱で死ねると思うところですが………。
あの限りなくお馬鹿で、脳内がお花畑のどうしようもない、ルドルフ皇太子との婚約が破棄されるなら、嬉しい限りです。
私は表情が歓喜で緩むのを感じて、不自然にならないように俯く。
一応は、口惜しげに唇を噛むような仕草も付け加えて………。
だって、口元が嬉しさで緩んでしまいそうだったんですもの。
チラッとマリエ嬢の様子をさりげなく伺う。
そして、婚約破棄の喜びに表情が緩むのを押さえ込むために、唇を噛み締めて俯いた私に向かって、マリエ嬢がルドルフ皇太子の腕に縋りながら言う。
もちろん、私からルドルフ皇太子が毟り取り、手渡された3点セットの皇太子妃をあらわす装飾品を、なんの躊躇いもなく身に着け行く。
「うわぁ~こわぁーい…睨んだぁぁ~……ルドルフさまぁ~………」
そう言いながら装飾品を身に着けたマリエは、ロコツな嘲笑を滲ませながら、ゆさゆさのメロンをルドルフ皇太子の腕に擦り付け、娼婦まがいの姿でわざとらしく言う。
その姿を見て、私は内心でつぶやく。
いや、本当に……なんていうか………まさにテンプレよねぇ………。
って? ぅん? テンプレって何かしら?
じゃなくて、今はこの状況よね………でも………。
皇家から送られた3点セットの装飾品を外されたときから………。
なんか意識がとてもクリアになった気がしまいわ………って………いや、待って。
えっとぉ……クリアって? なんですの? 自然と言葉が浮かんで………。
ああ…でも、クリアって言葉は、確か透明とか澄んでいるって意味でしたわね。
ふむ、クリアよりも……そう、もっとこう………。
どちらかというと、常に霞みがかっていた意識が鮮明になった感覚でしょうか?
あの皇家より送られたという、3点セット……セットって? ……セット?………。
ああ、一式っていう意味ですわね………。
えっ? やだ…無意識に奇妙な言葉が当然のようにポコポコと湧き出て変ですわ。
じゃなくて、なんかさっきから思考までが変な感じだわ………。
でも、ひとつだけ判ったことは、あの皇家から送られた高価な宝石類が嵌め込まれた3点セットの装飾品には、私の意識を阻害する何かの術式が組み込まれていたということね。
だから、いま現在の私の意識がはっきりとして、ちゃんと思考ができる状態になっているのでしょう。
確かに、私にはろくな魔力は無いけど、我が家は、このハイオシス帝国の北側の辺境部を守護するカイドール辺境伯爵家ですのよ。
そのカイドール辺境伯爵家の長女として生を受け、皇家との約定によって定められた婚約は誕生した時からの運命だと思って諦めていましたが………。
それもこれも、皇家から送られた、未来の皇太子妃が身に着けるという、あの3点セットのセイでしたのね。
クスクス……そう考えると、この婚約破棄の断罪も、ありがとうございますですわね。
こういう、テンプレのイベント…イベント?
ああ…もう、なんか意味不明の言葉が次々と浮かんで来ますわ。
ルドルフ皇太子は、私が意識の困惑で動かないのを、突然の婚約破棄を言い渡されたことで、呆然自失になっていると思い込んだようです。
もちろん、腕に縋るマリエが怖がっているからと、後ろに下がってから、私に指を突きつけて、忌々しそうに言放つ。
「お前のような血筋だけのブサイクが、嫉妬にとち狂いおって………二度と陽の目が見れみれぬ地下迷宮送りの刑に処す」
その隣りでは、ルドルフの腕にマリエがゆさゆさメロンを擦り付けつつ、コテンっとその肩に頭を乗せて、まるで甘える猫のようにスリスリと頬や髪を擦り付けて、怯えを滲ませた声音で言う。
「ルドルフさまぁ~……怖いですわぁ~……きっと、またイジメられてしまいますぅ~………」
そんなマリエに、ルドルフ皇太子の側に控えていた、未来の宮廷魔術師長間違いなしという太鼓判を押されている美少年が、優しく甘い声でみえみえの怯えを見せるマリエへと優しい慰めの言葉を囁いていた。
「大丈夫ですよ、この僕が、あの諸悪の根源のような悪女を、二度と陽の目が見れない世界に封じ込めて差し上げますから………マリエ嬢…そんなに、震えないで………」
愛しそうにそう囁く、未来の宮廷魔術師長と目される美少年は…………。
たしか、ロスノビア侯爵家の次男でしたわね。
えぇーとお名前は、コリウス様でしたか?
なんかご容姿にあった、女の子のような名前だなぁ……と思いましたので、一応はその存在を覚えておりますわ。
まぁー……私はコリウス美少年に興味はありませんでしたので、魔力がとても高いことぐらいしか覚えておりませんが………。
と、いうか、あの3点セットのお陰で、異性への興味はカケラもありませんでしたわね。
お陰で、マリエ嬢に侍る殿方のことも、役職ぐらいしか覚えておりませんし………。
突然の意識の開放によって、生理的な涙が溢れボロボロとこぼれて頬を伝うのを感じつつ、緩む頬を引き締めている為に、見た目は青褪めた?私はゆっくりと顔を上げる。
けして、悲しいからとか悔しいからとかではありませんわ。
その表情を誤解したらしいルドルフ皇太子は、自分に頭を摺り寄せたマリエ嬢の頭部を優しく撫でてから、私に言放つ。
「シルビアーナ、この俺が、婚約者だからといって、慈愛に満ちた優しいマリエへの数々の悪辣なイジメを看過すると思ったか? お前のような、見た目同様に、性根の腐ったおぞましい者は野放しにして置けないっ……よって、身分剥奪の上、地下迷宮への封印の刑と処すっっ………コリウスっ………」
そう高らかに宣言し、側に控えていた未来の宮廷魔術師長間違いなしという太鼓判の美少年・コリウスへと視線を向けて顎をしゃくる。
同時に、皇家から未来の皇太子妃へと下賜された3点セットを奪い、私を拘束していた騎士団長の息子が突き飛ばして素早く後ろへと下がった。
「罪深き咎人 シルビアーナ・カイドールを 彼方へと封身せよ 【深封転移】」
その次の瞬間、皇家から未来の皇太子妃へと下賜された3点セットを奪われた後も、私を拘束していた騎士団長の息子に思い切り、突き飛ばされた。
そんな私の足元を中心にして、フワッと魔法力による紋様が浮かび上がったことで、魔法陣が展開されたことが判った。




