おまけ。
非常に、非常に短いです。1000字ありません。
あの後、ドリュー義兄さんに報告を受けてすっ飛んできた義母によって私たちはべりっと引きはがされた。ドリュー義兄さんはなんとなく私達がこうなることを察して部屋を出ていき、義母の足止めをしてくれていたそうなのだが、義母の特攻にあえなく敗れたそうだ。
魔法使いの『落とし物』を片付けた後、私はサロンのソファーに座り、温かいミルクティーを飲んでいた。……義母に抱き着かれながら。
「……母上」
「何かしら、アンソニー。私今可愛い可愛い義娘を愛でていて忙しいのだけれど」
向かい側に座ったアンソニーが私を取り戻そうと話しかけてくるのだが、義母はうっとりと私を抱きしめたり頬ずりしたり額や頬にキスを落としてきたりと余念がない。
「……エイリーン」
「ごめん、アンソニー。私ももうしばらくこのままがいい」
アンソニーはしゅんと肩を落とした。
「……後でね」
それを聞いてアンソニーはばっと顔を上げ、義母はますます私を強く抱きしめた。
アンソニーには犬耳とぶんぶん振られる尻尾が見える気がするし、義母はふしゃーっと猫毛を逆立てているような気がしなくもない。……何だか可愛らしいな。
暫くにらみ合っていた二人だったが、ドリュー義兄さんが戻ってきてアンソニーを呼びに来たことで終息した。
後ろ髪を引かれながらアンソニーがサロンから出ていくと、義母が甘えるように———すがるように私の肩のあたりに頬ずりしながらぽつりと尋ねた。……ふわふわと石けんと日向のにおいがする。
「……お嫁に、行っちゃうの?」
私は笑いながら返した。
「お嫁に行ってもどのみち私はあなたの義娘ですよ?」
「……そうだけど、」
やっぱりさみしい、と聞こえるか聞こえないかくらいの声で囁かれる。
「まだ時間はありますから、それまではこうしていましょうね」
そう言うと義母はわずかに涙の気配をさせながら、『うん』と少女のように頷いた。
本編のあとがきに入れようかとも思ったのですが、読みやすさを考慮しまして連載形式での投稿といった方法を取らせていただきました。
義母はきゃぴっとした娘ではなくヤンチャな息子たちを育てたせいか、ちょっと肝っ玉母さんぽい感じになりました。たくましくなって……。(T_T)
そのためかエイリーンの美貌に嫉妬するより、義娘ができたことを大変喜び、エイリーンとの関係は良好になりました。むしろ溺愛。そして夫(エイリーンの父)を早くに亡くしたこともあり、夫の分まで子離れを寂しいと感じています。
妖艶な美女に実はこんな一面があるというのに、書いていて自分で萌えてました。
ここまでお読みくださりありがとうございました。