表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

疑問2つめ★


「早月が…自殺した?」僕は目を丸くした。


同時に、頭の中が粉々に砕け散ったように真っ白になった。


え…、え…?なんで…?なん  で…?


気を失いそうになった。吐き気がおそった。


何度も同じ言葉を繰り返して、僕は地べたに足をつかまれそうな現象を見た。


早月が自殺?なんで?


なんで早月が自殺する必要がある?

 


ある日の放課後、先生に僕は呼ばれ、その日休みといわれた早月の本当の事実を知った。


僕はもう、先生の顔さえまともに見ることができなかった。


ただもう、早月のことで頭がいっぱいだった。

 


あれから少し先生は話していたのだろうけど、覚えてなんかいるものか。


僕は上の空だった。

 

だって、それほどショックが大きかったのだから。

 


僕は屋上にいった。


満がいると思って…。


満は、あの幽霊の少女の名前。


僕の良き相談相手。少女なら、きっと僕の話を聞いてくれるはずだ…。


そう思った。 

 

「はぁっ…。はぁっ…!」


僕は思いっきり屋上の扉を開けた。


少女は、やはりいた。フェンスに寄りかかって空を見上げていた。


僕があまりにも酷い表情をしていたのか、少女は一瞬驚いた表情をして、そしてにやりと笑った。

 

「どうした?そんな怖い顔して走ってくるなんて。お前らしくない。」


少女は、きっと僕をからかったのだろうけど、僕はそれどころではなかった。


僕は息を整えてから少女に言った。

 

「早月が…!!」

まだ息が整っていなかったのか、声が途中で途切れた。


しかし、付け足しを少女はした。

 

「自殺した、か?」


少女は僕からの驚いた目線をよけると、また空を見上げた。


なんで知っているんだ?僕はキッと少女を見つめた。


少女は僕をみようともしないでそのまま話した。

 

「あたしだって、この世にはいないはずの人間よ?

それぐらい、分からないといけないじゃない。」


少女は笑っていた。


なんとなくそう思った。


僕は、強く少女に言った。

 

「何でそんなに楽しそうなんだよ。早月が死んだって言うのに…!!」


でも、少女は僕の心をどんどん削っていくように言い放ってきた。

 

「じゃあ、どうして自殺したか、分かる?

分かるはずもないよね。

早月はあんたに隠していたんだから。」


少女は空を見上げたまま、一人で話していった。


僕は、つばを飲み込みながら、ただ聞いているしかなかった…。

 

「知りたいなら教えてあげる。早月はね、いじめられていたんだよ。」


その言葉に、僕はしばらく目を見開いて固まっていた。


そんなの、知らなかった…。


だって、だって早月はそんなこと一度も…!!

 

戸惑いを隠せない僕を分かったのか、少女は不敵に笑った。


でも、すぐ止めた。


なんだろうと、僕はまっすぐ少女を見つめた。


少女は僕に向き直して言った。


「早月があんたに隠してたのは、あんたを巻き込まないためにだよ。」


その言葉が、僕の心にずっしりと置かれた。


もしかして、早月は僕のために?


僕のためにずっと隠していたの?


早月…そうなの?

 


いつのまにか、瞳いっぱいの涙が溢れてきていた。


声には出なかったけど、頭の中では思いっきり泣き叫んでいた。

 


そんな僕を、少女は初めて、悲しい顔をして見つめていた。


僕は、ただただ、少女を見つめ返すことしかできなかった。

 


少女は、僕のほうに静かに寄ってきて、僕の頭を優しく撫でた。


そして、同時に言った。


「早月はね、あんたを巻き込みたくないがために、ず…っと!

黙ってたんだよ。」


柔らかく微笑んで、少女はキッと真剣な表情を浮かべた。


それには一瞬ピクリとしたが、少女の話を聞いていたかった。


「あたしは、早月がいじめられていたことを知っていた。

でも、あんたには言わなかった。

だってお前、早月の親友なんだろ?」


その問いかけに、静かに首を縦に動かした。


首を動かしたとたん、少女は僕の髪を引っ張って、無理矢理少女の顔のほうに向けた。


その少女の瞳にこもる何かが、僕には泣きそうになるほど悲しいものだった。


「ならっ!その親友のイマを、何故分かってやらないっ?!

早月が一人寂しい思いをして、お前を守っていたって言うのに、

お前は何をしたんだ?!

親友なら……!」


少女は、本当に怒っていた。


その勢いを、声として僕に向けてきた。


そして、間を空けて今度は悲しく言った。


「…親友なら…

なんで…

なんで、少しの変化で分かってくれないんだ…。

早月は本当に苦しくて…、

その中を…一人で耐えていたんだぞ…?」


少女は泣いていた。


僕は胸が痛かった。


これ以上、何も言ってほしくなかった。


僕の愚かさが、あまりにも酷くて…


自分で自分を殴りたいほどに情けなかった。




ほんとだ、ほんとだ。


僕は何もしてあげれなかったよ。


早月が苦しんでいたのに、ぼくは、


僕は何もしてやれなかった…。

 


いつの間にか、僕も泣いていた。


でも、僕の涙は、少女よりも大きく、涙が多く流れていった。

 

そんな僕を、少女は苦笑して見ていた。


そして、僕の瞳から流れる涙を片手で拭いながら言った。


「ほんとっ、鈍い鈍感男。」


その言葉は今の僕には温かく聞こえた。


僕は泣きながら、言葉にならない声を出していた。


「僕は…早月が、苛められている、ことを、

自殺した、ことを…

認めたくなか…ったから…!!

僕…僕っ、早月に謝りたい…

謝りたいよ……。」


必死に言葉を考えていっていた僕を、少女はなだめていた。


僕が言い終わると、少女は悲しく笑って見せた。


「あたしは、20年ぐらい前のここの生徒でね、

あたしもね、

自殺したんだ。」


悲しく笑って言う少女のほうを僕は口をパクパクさせて驚いた。


そんな僕を気にせず、


少女はそのまま話を進めはじめた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ