第2話 月曜日の静寂
週の始まり、月曜日。その静寂を求めて、私はいつもの「ゲチャウナ」へと足を運んだ。
先週の、あの祭りでも起きたかのような喧騒が嘘のようだ。暖簾をくぐった先に広がっていたのは、ただただ穏やかな、どこか内省的な時間だった。
浴室に入ると、そこは白い闇だった。 外気が氷点下に近かったせいか、それとも湯気が特別に濃かったのか。視界は遮られ、数メートル先も定かではない。しかし、その乳白色の霧の向こう側に、ぼんやりと浮かび上がる照明の灯りがあった。それはまるで、雪の夜の街灯を遠くから眺めているような、切なくも美しい光景だった。
サウナ室の扉を開ける。 熱気のなかに響いていたのは、テレビから流れるマツコ・デラックスの声だけだった。皮肉なことに、その饒舌な声がかえって室内の静寂を際立たせている。
ふと、考えがよぎる。 ここに座る男たちは、一体何を考えているのだろうか。 仕事の綻びか、過ぎ去った週末の残像か、あるいは、言葉にできない孤独か。 そんな他愛もない他者への想像に耽ることができるのも、この静かな夜が与えてくれた贅沢な余白なのだろう。
外へ出ると、夜風は肌を刺すように鋭かった。 早々に退散し、浴室の片隅で「内気浴」に身を委ねる。 天井を見上げると、一滴の雫がゆっくりと重力に逆らえず、私の肌へと落ちてきた。
その冷たさが、心地よい。 微かなトトノイのなかで、私はようやく、新しい一週間が動き出したことを静かに受け入れた。




