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異世界魔法使いVS東京ゾンビ   作者: 竹食いパンダ
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バイオハザード

渋谷109から抜け出した俺たちはおじさんの提案を受け、タクシーという物に乗って次の場所に向かっていた。


途中でおっさんとの会話で分かったのは、やつらのような化け物は「ゾンビ」と呼ばれているということだ。

ゾンビにかまれてしまうと感染して、一定時間の経過後にゾンビになってしまうという恐ろしい話だ。


そしてもう一つ分かったことは、この世界では俺のような魔法使いは存在しないこと。

だからむやみに人前で魔法を見せびらかしてはいけないな。変に目立ったところでいいことがないからな。


「それにしても、町に人が少ないね。いつもにぎわってる道なのに・・・」

サヤはタクシーの中からきょろきょろしながら周りを見渡していた。


「この辺は原宿か。もうすでにここにも騒ぎがあったのかもしれねぇなぁ。車内とは言え、いつ出てきてもいいようにするんだぞ。」


おっさんの言う通りだ。タクシーの中とは言え、大人数で囲まれたら危ない。


「ところで、次の場所はここから遠いのか?」

俺は気になったおっさんに聞いてみた。


「いや、そう遠くはねぇ。新宿二丁目ってところに知り合いの店があるんだ。そこにちょっと用があってな。」


「えぇ!新宿二丁目?!あそこゲイタウンでしょ?初めて行くんですけど!」

さっきまで眠そうにしてたサヤが急に元気になって、目を輝かせていた。


「てかさーてかさー!おじさんってそっちなの?BLなの?ねぇ!」


なんの話してんだこいつら。俺はポカーンと聞いていた。


「ちげーよ。あそこになぜか特別よくしてくれるオネエの知り合いがいてな。そいつがけっこうすげーやつなんだ。」


「すごいって何がだ?」


「タクシーの中じゃちょっと言えねぇが、とにかくすげーんだ。まぁ行ってみればわかるよ。」


「きゃー!おじさんの変態!」

サヤはなぜかウキウキ顔だ。こいつは何を期待しているんだか。よくわからないな。


「でももしかしたら、これは簡単に行かないかもしれねぇな。」

前に座っていたおっさんは遠くを見つめながら難しい表情をしていた。


その目線の先ではさっきまで走っていた車ってやつが、ほとんど止まっていた。


「お客様これは大渋滞ですね。さすがに原宿でもここまでは混まないですけどね・・今日はやはり通り魔事件があったからですかねぇ。」

舵を切っていたおじさんがそう言うと、おっさんは少し考えて口を開いた。


「よし、ここで降りるぞ。たぶんこの道はもう使えねぇ。サツに封鎖されてるかもしれねぇ」


「えー。こっから歩くの?だる~い。」


駄々をこねるサヤを、おっさんが目を細めてじっと見た。


「わ、わかったよ!歩けばいいんでしょ歩くよ~!」


「おっし、じゃそうと決まれば降りるぞ。ほら降りろ降りろ。」

おっさんは俺たちに向かってニッと笑ったあと、舵取りのおじさんに紙切れを何枚か渡してた。

あれは金貨みたいなものか?



全員が車から降りてから、おっさんは俺たちを集めた。


「いいかお前ら。この様子だとおそらく事態を重く見た政府はバイオハザードを発令してると思うんだ。」


「バイオハザード?」

サヤは首を傾げた。俺も聞き覚えがない言葉だ。


「生物災害だ。それが発令されるとただちに発生ポイントから半径3キロ圏内が封鎖されるだろう。」


「封鎖って!出れなくなるの?!」


「いや、まったく出れないことはないだろう。でも出るための人体検査が発生して、かなり時間かかることになるだろう。その間にゾンビに食われてくたばってるかもな。」


「そんな!ひどい。」

サヤが少し怒ったようだ。


「感染を抑えるための仕方のないことだ。」

おっさんはサヤの頭に手を乗せ、なだめた。


このおっさん、ペットの扱いとか慣れてるんだろうなとひそかに思った。


「じゃ新宿に立ち寄る場合じゃないんじゃないのか?」


「いや、新宿二丁目はちょうど発生源から三キロ圏外だから大丈夫だ。」

おっさんは親指を立てて、さっき調べたから安心しろと言った。


「それにもし3キロ圏を守り切れなかったとき、政府による生物災害の阻止が失敗したと考えたほうがいい。」


「失敗・・するとどうなるの・・?」

サヤはなんとなく答えがわかったようで、恐る恐るな表情で聞いた。


「国中が感染するだろう。3キロ以上拡大した場合は基本は止められないんだ。」


つまりこの3キロ圏内の封鎖が最初で最後の砦と言っても過言ではないか。


それを理解した途端、俺もサヤも黙った。おっさんも黙った。

この沈黙の時間は、現実そのものを感じているようで少し苦痛だった。



「だからさ、対ゾンビの武器が必要。わかったろ?」

そう言っておっさんはガハハと笑った。

無理に気を使っているのはわかってたけど、それでも沈黙を破ってくれて少し気が楽になった。


「よしっ、へこんでる暇はねぇ。若いのいくぞ!」

おっさんに背中を強く叩かれた。痛てぇ!

誰かを思い出すな。


「おーう」

テンション低めの俺たちは、まず3キロ地点のハザードラインを突破すべく、急ぎ足で新宿方面に足を速めた。


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