うさばらし
残虐描写あり。ごちゅういを
――― この世界に、おれの知らない《ほか》がある?
びしゃり
顔にかかったあたたかい飛沫に顔をしかめると、さらにつぶやき続けた。
「 左手 小指に災い 中指に災い 親指にもついでに災い 今度は、右の手に災いだ ―― 」
ここ最近のホーリーは、前にもまして残虐で横暴だった。
《ノーム種族》のジャックを始末したはなしは、種族から種族を伝い、この世界で知らないものはいないところまで広まっていた。
乗っ取った城で、スネイキーからつまらない話をきかされたホーリーは、どうにも暴れたくなり、すぐに外へ出た。
いくつかの酒場をまわり、目があった相手に片っ端から因縁をつけて呪ってやろうと思ったのだ。
ところが、どこの酒場も固く鍵を閉ざし、ホーリーを入れようとしない。
しかたがないので、そのまま麦畑をめざし、実をつけて揺れるそれに、呪いをかけた。
呪った相手の、恐怖におびえる声が聞けなかったのは物足りなかったが、むこうまで広がるその緑が、一斉に蝕まれ、黒く朽ちてゆくのは、なかなか楽しい景色だった。