今ではもう
「 ―― 《空の目》は、ハウアーには、《病》を体にいれることで、なにか起こるかもしれないと伝えてあった。 ハウアーはわかってたんだ。だからあわてずに、『日記』をつけることにした。 忘れないように。 ―― ところが、もの忘れの進行はひどくて、『日記』もつけられないような状態になった。 ・・・青年ほどの若さに戻ったころには、自分で、本が読めなくなっていた。 文字を忘れていったんだ。 『日記』に、必死で《自分の名前》を、練習しなくちゃならないようになった。 感情をあらわしたり、気持ちを伝える言葉も、おぼろげになっていって、簡単なものの名前さえ、書かないと忘れそうになっていった。 ・・・・今、燃やしてるのが、ハウアーの大事にしてたその『日記』のいちぶだ。 これだけ長い時間を、ハウアーは逆行してる。 今の少年期じゃ、完全に、『馬鹿でのろまなハウアー』だ。 ―― なのに・・・、そんな状態になってからでも、《空の目》が、ハウアーを、おまえに差し出せと言ってきた! ハウアーは、今はすっかり馬鹿なんだ。だからおまえのことを、やさしくて好きだなんて口にする! それじゃダメだって教えても、あいつにはもう、自分の《役目》さえわからないんだ! しかも!《空の目》が消したはずの男を、助けるなんてっ!! しんじられない! 」




