第30話 行儀の良し悪し
「お帰り。流せたかい?」
アニカが出ていたら……か。
それはそれで似合うだろうな。
なんだかんだ言っても魅力の一部になるだろうし、人だけが持つ特徴らしいし、性的アピールであることに違いはない。
それが大きいということは、性的アピール力も自然と大きくなるわけで……
「モナカくん? 流せなかったのかい?」
「いや、流せたよ。ちょっと考え事をな……この上アニカまで出ていたらと思うと……」
「〝出ていたら〟?」
「あーすまん。忘れてくれ」
やべっ。
思わず口から出てしまった。
「? そうかい」
「痛っ!」
「バカなこと言わないの」
「っはは」
「みんな、ご飯の用意が出来たよ」
お、ナユダさんが夕飯の用意を……え?
床に直置き?
テーブルは?
「どうかした?」
「あ、いや……その」
周りを見渡してもみんな同じように床に皿を直置きにしている。
それがさも当たり前だといわんばかりに、皿を前にして床に座っている。
どうやらここではこれが当たり前らしい。
『こういう感じは初めてだな』
『うん。ボクも初めてだよ。床に置き始めたとき、ビックリしちゃった』
『ここではこれが普通なんだな』
『そのようですね。実に興味深い』
『あ、ナームコ、食べても大丈夫なのか? 前回みたいな危険性はないのか? 後いい加減離れろ』
『そうでございますね……食べても問題は無いのでございます』
『ここの人たちが冒されてないので、問題は無いでしょう』
『そっか。よかった。後簀巻きにされたくなかったら早く離れろ』
くっ、今日はいつになくしつこいな。
簀巻きが通用しないぞ。
ったく。本当に簀巻きにするぞ。
「よし、それじゃ座ろうか」
「パパ、お行儀悪いよ」
「ここではこれが普通なんだ。だからいいんだよ」
「ふーん」
「なんか変だった?」
お、緊張が取れたのかな。
普通に話せているぞ。
「あー、俺たちは床に置いて食べる習慣が無いんです」
遠足とかピクニックの時くらいじゃないか。
運動会とかもか。
「え? どうやって食べるの?」
「机に並べて椅子に座って食べるのが一般的かな」
「机……作業台に載せて食べるのか?! それは行儀悪いな」
「そうなのか?」
「机は仕事をするためのものだから、そこで食べるのは無いよ」
「そ、そっか」
机は仕事専用なのか。
確かにここには机が見当たらない。
こんなにも違いがあるなんて思わなかったぞ。
まだまだありそうだな。
「とにかく食べようよ。私お腹空いちゃった」
「そうですね」
周りを見ると、仕度の出来たところから食べているみたいだ。
みんなで揃って一斉に……じゃないのか。
「アニカ? どうした。早く座ろうぜ」
「だって、お尻が……」
あー、まだ痛いんだ。
「我慢しろ」
「うう……」
次回は萌え萌えキュン☆




