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12.発明家内応
さらに義藤は、間者に密書を持たせて再び村上家へ放った。
密書には、志太家に寝返るように呼びかける内容を書いていた。
間者は今回も難なく村上領に潜入し、信常との接触に成功したのである。
信常は、ここ最近の村上家には愛想を尽かしかけている現状で出奔を検討していた為、信常にとってもこの寝返りを好機と考えていた。
志太家からの密書を確認すると信常は返事二つでうなずき、村上家を離れることとなった。
信常は義藤からの提案で商人の身なりに変装し、警備の厳しい村上島を無事に脱出。
扇山城に到着し、すぐさま志太家に家臣として迎え入れられた。
義藤
「信常殿の活躍は噂でお聞きしましたぞ。志太家でそのお力を存分に発揮してくれる事を願っておりますぞ。」
信常
「村上家の時代は終わりました。縁あって志太家に迎え入れてくださった事を感謝致す。今後は志太家の為に尽くしましょう。」
後に信常は、数々の革新的な発明品を世に放ち「天下一の発明家」の称号を得ることになるが、それはもう少し先の話である。





