基地へと侵入ス
出来るだけ音を立てないように車両を移動させ、奴らが気付く限界まで近付く。
先陣を切るのは、馬が嘶くように軽快なエンジン音を鳴らす二台のオフロードバイク。
乗っているのはランナー二人。三台の軍用車には軍の隊員が乗車し、車両の開かれた天井部から体を出して、軽機関銃を強く握りしめている。
「では、カウント五で作戦を開始する」
バクバクと破裂しそうな程高鳴る心音と共にカウントダウンは始まる。
「五、四、三、二、一」
耳に付けたイヤホンから聞こえるアレクセイの最後のカウント。大きく唾を飲みこみ――
「零。α部隊突入せよ!」
グォンと音を鳴らして山の斜面を滑り下りるバイク。フェンスより少し高い位置から坂を上手く使ってバイクは空を跳ぶ。僅かな滞空のあと、スプリングを軋ませながら敷地内へと無事に侵入する。
α部隊の軍用車二台はそれを追うようにしてフェンスを薙ぎ倒しながら侵入。それからはバイクと分かれるようにして先に滑走路方面へと向かっていく。
『音楽を鳴らします』
基地内に大音量で響くのは、戦争映画でよく聞いたあの行進曲。バイクは大きな唸り声をあげて倉庫の前を一直線に走り抜けて、滑走路方面に向かって反転。
―――ウォォォォォォォォオオン
狼の遠吠えのような雄叫びを上げて建物の中から出てきたのは、通称ドックと呼ばれる大型犬程の黒い怪物。見つかると雄叫びを上げて仲間を呼び、襲い掛かってくるが、単体では甲殻も薄く、拳銃でも殺せるほど弱い種類。
そう単体では。
「やべえな。どんだけいるんだ」
眼下では、多くのドック達が砂糖に群がる蟻のように一斉に建物の内部から現れて、切り返して滑走路へと向かうバイクを追いかけている。
「こちらも突入します。準備はいいですか?」
助手席に座るあの男がニヤニヤと俺とエリザをミラー越しで見ているが、気にせず運転席に座る隊員に頷く。踏まれるアクセル。
三台の軍用車が一気に前進し、斜面を駆け下りていく。視界左の滑走路側ではα部隊の軍用車に黒い波が押し寄せ、軽機関銃が鉛玉をばら巻き、怪物共の塚を築いているが、どれだけ殺されようとも奴らに撤退などというものはない。徐々にドック達の物量に押されるようにして軍用車達が引き撃ちを開始し始めた。
俺達β部隊は、怪物共がα部隊に気を取られているうちに脇をすり抜けるようにして倉庫群へと向かう。
「ジンさん、機関銃を使ってください!」
「了解! 七.六二ミリ弾の大盤振る舞いだ。しっかり味わっていけ!」
後部座席で立ち上がり、天井から上半身を出して取り付けられている機関銃を握って引き金を引く。反動をいなすようにしながら、照準を合わせていく。金色の薬莢が宙を舞い、硝煙の臭いが鼻に刺さって不快だが、それを超える快感が体を巡る。
他に二台からも同じように上半身を出して機関銃を撃ち始めている。七.六二ミリ弾が、容易くドック達の皮を破り、肉を抉り、地面を穿つ。ポップコーンのように弾けていく怪物達の全員のテンションが上がる。
「くそっ、もう少しソフトの運転は出来ねえのか?!」
車内では助手席に座っていた男が、必死に運転をする隊員へと怒鳴るっているが、ただの八つ当たりだ。
いくら機関銃で滅多撃ちに出来るとはいえ、数も身体能力も優れているドックを全てを車に近付く前に殺せるわけではない。車両の前に飛び出してきたり、体当たりをしてきたりとされれば、車両は右へ左へと蛇行する。
―――ウォォォン!
撃ち漏らした一匹のドックが車の側面に体当たりをして車両が大きく揺れて蛇行する。
「うわっと?!」
「全く、ジンは私がいないとダメなんだから」
飛び出してしまいそうになった俺を、いつの間にか下半身にがっちり組み付くようにして支えてくれているエリザにサムズアップをして答える。




