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(シリュウサイド)
わたしを突き飛ばしたガーレンはそのままの姿で固まる。
「ガーレン!!!!」
呼びかけても返事はない。
毒に侵されているのか、その顔はドス黒く変色し、その目は濁っている。
ガーレンはその姿で往生しているのだ。
ただ、その口元は、すこし笑っているようにも思える。
どうして?
「ガーレン…」
なんなんだ……
急に目の前にピンクのドアが現れて、出てくる若者…
そして、その腕の中には黒いニャニャー…
白いのは、その姿を見たとたん、嬉しそうに飛びつく…
あの、我々を滅ぼした悪魔がだ…
あまり強そうにみえない平凡な男だ。
しかし、あの悪魔を2匹も使役するとは、かなりの実力者なんだろう。
その上、男の足元には、わらわらと茶色や灰色や白茶や白黒茶が集まってくる。
6匹もいるのか???
あの、1匹で我々を滅ぼした悪魔が…
敵うわけがない。
敵うわけがないのだ!
男は困った顔で私に頭を下げる…
「うちの猫がどうもすみません…」
わたしが負けたのに…男はわたしに謝るのだ。
器が違うのだ。
考えてみれば、わたしは皇帝になんてなりたかったのではない。
少しばかり強かったわたしをまわりが持ち上げたのだ。
冒険者として、みんなにいい格好ができればそれでよかった。
酒を飲んだらすこし気が大きくなるわたしが、酒の席で今の世界について一席ぶった。
ただ、酒の上での戯言なのだ。
よくいるだろう、酒を飲んでたいしたこともないのに、人生・哲学・政治を語りだすおっさんが。
あのレベルなんだよ。翌日には本人が忘れてるレベルの戯言。
それが、セイレンたちによってひとり歩きし始めたのだ。
気がついたときには、もう、引くに引けなかった。
わたしも、いい気になっていた部分はあるのかもしれない。
しかし、この目の前の男…
いままで会ったどんな漢なんかよりも大きいのだ。
底が見えないのだ。
こういう男が世界をかえるのかもしれない。
そして、この平凡な風貌の男に、わたしは怯えるしかないのだ。
それがわたしの器だ。
もう、無理だ。
わたしはニャニャーと男に背を向けて、一目散に逃げるしかなかった。




