天使とカレ 1
あいしているよ。
きみを、あいしているよ。
きみが『喜び』をくれたから。
ぼくは、永遠にあの『喜び』を味わっていられる。
だから、きみにも、もっともっと、『喜び』を味わってほしいんだよ。
なのにどうして、そんなにも、カレを想うの?
きみがそんなに想っているのに、ほら、カレはデートの最中に眠っちゃうようなおとこだよ?
べーす、とかいうものを、きみよりも大切におもっているんだよ。
それをきみも、知っているはずだろう?
知っていて、いつもさみしい想いをしているじゃない。
それでも、きみは、カレを選ぶの?
どうして、カレを選びつづけるの?
ぼくが、こんなにも愛をそそいでいるのに。
どうして、きみはいちどもぼくを見てはくれないの?
ぼくの愛のシグナルに、いちども気づかず、カレを見てばかりいるの?
そんなにも、かなしいきもちになるくせに。
きみがかなしいと、ぼくもかなしい。
きみがつらいのは、かなしいよ。
きみがかなしいと、ぼくはつらいんだよ。
わらってほしいのに。
きみがわらってくれるなら、どんなことでもしてあげるのに。
ほかの出会いを、あげるよ。
もっと、すてきな出会いを。
きみのこころが、ぽっ、とあたたかくなるようなひととの。
きみをうれしいきもちにさせるものも、もっと、きみの目の前に運んできてあげる。
ちゃんと、シグナルを送るよ。
肩を叩いて、おしえてはあげられないけど。
風が、きみの肩をかわりに叩くよ。
耳ではなく、こころに、声をとどけるよ。
ちゃんと、聞こえるはずだよ。
カレしかいない、なんておもわないで。
きみをあいするものは誰もいないなんて、そんなことはおもわないで。
きみを、あいしているよ。
いつも、いつまでも、どんな瞬間だって、きみをあいしているから。
誰もいないなんて、いわないで。
ぼくを、いないことにしないで…………
「────雨?」
ぽた、ぽた、と頬に落ちてきたしずくに気がついて、マサキは目を開けた。
と、そこにぼんやりと浮かぶ白い影に気づく。
「おわっ。な、……鳥?」
『ねえ、どうして…………無視するの?』
「うっわ! しゃべった!」
白い影は、広げたつばさに見えてきた。
それを持つのは、ひかりのかたまりに見える。
声は、澄んだ鈴のようにあたまにひびく。
だから、子どもの声のようにも聞こえた。
「ユーレイか? あ……それか、天使?」
口にして、そんなわけあるか、とマサキはわらった。
横にはサヤカが座っていたはずだが、ふしぎとそちらを向くことができない。
首だけではなく、手足も、ちらとも動かせなかった。
ことばだけは、知っている。
これは、いわゆる、金縛りという現象だろう。
マサキは、もういちど、ひかりのかたまりを見つめた。




