第9話 制御
旧準備室。
机の上にはArduino、モータードライバ、配線、そして昨日完成した“軽量化フレームの足ユニット”。
蒼
「ついに……ついに制御だね!」
理人
「いや、そんな大げさな……
いや、大げさでもいいか。ついにだし」
真
「……動く?」
蒼
「動かす!」
理人
「動くかどうかはまだわからないけどな!」
蒼はArduinoを手に取り、
基板の裏側をじっと見つめる。
蒼
「これさ……なんか“未来の板”って感じしない?」
理人
「未来の板って何だよ。
ただの仕組みだよ」
真
「……でも、わかる」
蒼
「毒島くんの“わかる”は世界を救う」
理人
「いや、救わないだろ」
蒼はUSBケーブルを差し込みながら言う。
蒼
「で、これにプログラム書くんだよね。
“前に進め”とか“止まれ”とか」
理人
「まあ、ざっくり言えばそう。
でも実際は“PWM”とか“デューティ比”とか――」
蒼
「待って理人、授業始まってる」
真
「……PWM、好き」
蒼
「毒島くん、なんでPWM好きなの?」
真
「……音がいい」
理人
「音!?」
蒼
「毒島くん、感性がエモい」
理人はノートを開き、
簡単なプログラムを書き始める。
理人
「ほら、こんな感じ。
`analogWrite(pin, 128);`
これでモータが半分の力で回る」
蒼
「へえ……なんか魔法の呪文みたい」
真
「……呪文、好き」
理人
「毒島の“好き”は万能だな……」
蒼はふと、今日の授業を思い出す。
蒼
「そういえば今日の国語の先生さ、
“人生は制御できない”って言ってたよね」
理人
「言ってたな。
“制御できるのは自分の気持ちだけ”とか」
真
「……ロボットは制御できる」
蒼
「毒島くん、それ国語の先生に聞かせたい」
理人
「いや、国語の先生絶対困るだろ」
蒼
「あとさ、昼休みに友達がアイドルの新曲の話しててさ、
“振り付けがロボットみたい”って言ってた」
真
「……ロボットダンス、好き」
理人
「毒島、好き多すぎだろ」
蒼
「でもさ、ロボットが踊るって夢あるよね」
理人
「いや、まずは“まっすぐ進む”からだよ!」
真
「……進む」
蒼
「じゃあ、いよいよ電源入れるよ?」
理人
「待て! まず配線確認!」
真
「……昨日、焼けた」
蒼
「毒島くんの“昨日焼けた”は重い」
理人は慎重に配線を確認し、
深呼吸して言う。
理人
「……よし。
久保田、スイッチ押して」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
次の瞬間――
ウィィィィィン……!
足ユニットの車輪がゆっくり回り始める。
蒼
「動いたぁぁぁぁぁ!!」
理人
「動いた……!
ちゃんと……動いてる……!」
真
「……かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、でも気持ちはわかる。
なんかペットみたいだなこれ」
蒼
「ロボットの赤ちゃんだよ!」
真
「……赤ちゃん、動いた」
蒼
「うん、動いたね!」
理人は少し照れながら言う。
理人
「……なんかさ。
こうやって動くと、
“俺らでもできるんじゃね?”って思うよな」
蒼
「思う!」
真
「……思う」
蒼
「じゃあ次は“まっすぐ進む”だね!」
理人
「いや、それが一番難しいんだよ!」
真
「……でも、やる」
蒼
「やろう!」
理人
「やるか……!」
三人の声が、
初めて動いたロボットのモータ音に重なった。




