第24話 発進できる…かな…たぶん…きっと
前日・放課後。
旧準備室に、技術科の佐藤先生が顔を出す。
佐藤
「ロボ研。ちょっといいか」
蒼
「えっ、先生……!?」
理人
「なんかやらかしました?」
真
「……怒られる?」
佐藤
「怒らない。
廊下での長距離走行テスト、見てたぞ」
蒼
「見てたんですか!?」
理人
「いや、見られてたのかよ……!」
真
「……恥ずかしい」
佐藤
「悪くなかった。
で、だ」
三人が息を呑む。
佐藤
「明日の全校朝礼で“サークル活動報告”の時間がある。
ロボ研、お前らも出てみないか」
蒼
「えっ……ロボ研が……朝礼で!?」
理人
「いや、急にハードル高くないですか……」
真
「……無理かも」
佐藤
「もちろん強制じゃない。
ただ、ロボ研は“新設扱い”だからな。
活動継続の判断材料として、
“全校生徒の前で動く姿”を見せられれば強い」
蒼
「……活動継続……」
理人
「つまり、ここで結果出せば正式に認められるってことか」
佐藤
「そういうことだ。
時間は30秒。
“前進 → 障害物回避 → 停止”
これだけでいい」
蒼
「……やります」
理人
「おい久保田!?」
真
「……やる」
理人
「毒島まで!?」
蒼
「理人、逃げたらロボ研じゃないよ」
理人
「……わかったよ。
やる。やってやるよ」
佐藤
「よし。
明日、体育館の壇上に集合だ」
──そして当日。
体育館。
全校生徒約800人。
冬の光が床に反射し、
ざわざわとした空気が広がる。
蒼
「……人、多すぎない?」
理人
「いや、全校生徒だからな……」
真
「……無理かも」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、俺も無理かも……」
蒼
「ちょっと! 二人とも弱気すぎ!」
壇上の横には、
昨日磨いたばかりの“ココ”が置かれている。
蒼
「ココ……頼むよ……
今日だけは、絶対に……」
理人
「いや、今日だけじゃなくていつも頼む」
真
「……ココ、できる」
蒼
「毒島くんの“できる”は信じる!」
校長
「それでは最後に、ロボット研究会からの活動報告です」
ざわ……
ざわざわ……
蒼
「うわああああああ来たあああああ!!」
理人
「落ち着け!!」
真
「……深呼吸」
三人は壇上に上がる。
800人の視線が、静かに集まる。
理人(心の声)
(やばい……足震えてる……
なんで俺が喋ることになったんだ……)
蒼(心の声)
(理人、がんばれ……!
俺も震えてるけど……!)
真(心の声)
(……ココ、守る)
理人
「ロボット研究会です。
本日は活動報告として、簡単なデモを行います」
声が少し震えている。
でも、しっかり届く。
理人はココの前にしゃがみ、
最後の配線チェックをする。
理人
「……よし。
久保田、スイッチ頼む」
蒼
「任せろ……!」
カチッ。
体育館の空気が一瞬だけ静まる。
ウィィィィィン……!
ココが前に進む。
ざわ……
ざわざわ……
生徒たちの小さなざわめきが広がる。
蒼(心の声)
(動いた……! 動いてる……!)
理人(心の声)
(速度安定……センサー反応……いける……!)
真(心の声)
(……かわいい)
ココは壇上の端に置かれたペットボトルに近づき――
ピッ、ピッ。
くるり、と右に避ける。
ざわっ……!
蒼(心の声)
(避けた……! 避けたよ……!)
理人(心の声)
(あとは……止まる……!)
ココは避けたあと、
まっすぐ進み――
ピタッ。
体育館が静まり返る。
蒼
「止まったぁぁぁぁ!!」
理人
「久保田、声!!」
真
「……でも、成功」
蒼
「そう! 成功!!」
生徒たちから小さな拍手が起きる。
大きくはない。
でも、確かに“届いた”拍手。
校長
「……素晴らしいですね。
ロボット研究会の活動、今後も期待しています」
蒼
「やったぁぁぁぁぁ!!」
理人
「よし……!
これで正式に“継続”だ……!」
真
「……ココ、すごい」
蒼はココを抱き上げ、
小さく笑う。
蒼
「ココ……ありがとう。
ほんとに、ありがとう」
理人
「いや、泣くなよ」
真
「……泣いてる?」
蒼
「泣いてない! 目が汗かいてるだけ!」
理人
「それ泣いてるんだよ!」
三人の笑い声が、
体育館のざわめきの中に溶けていった。
その音は、
“ロボ研の未来”が始まる音だった。




