第23話 ロボットの“名前”
旧準備室。
長距離走行テストを終えたロボットが、
机の上で静かに立っている。
蒼
「……名前、つけようか」
理人
「出たよ。
久保田の“名前つけたい病”」
真
「……名前、好き」
蒼
「毒島くん、それはわかる!」
理人
「いや、わかるのかよ!」
蒼はロボットの頭部をそっと撫でる。
蒼
「だってさ。
ここまで一緒に作ってきたんだよ?
“ロボット”って呼ぶの、もう違う気がするんだよね」
真
「……仲間、だから」
蒼
「そう。仲間だよ」
理人は少し照れたように視線をそらす。
理人
「まあ……
名前があったほうが、
呼びやすいのは確かだな」
蒼
「理人、素直!」
真
「……素直、好き」
理人
「毒島まで!?」
蒼はスケッチブックを開き、
“名前案”を書いたページを見せる。
蒼
「じゃあ、候補出すね。
“ライト”とか、“ミナト”とか、“アルゴ”とか……
どう?」
理人
「いや、急に人名っぽいの混ざってるだろ」
真
「……ミナト、かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、かわいいって何だよ!」
蒼は笑いながら言う。
蒼
「じゃあ、三人で一個ずつ案出そうよ。
そこから決めるってことで」
理人
「まあ、それなら公平だな」
真
「……出す」
蒼
「じゃあ俺から。
“ルミナ”。
光る感じで、未来っぽいから」
理人
「お前、未来好きだな」
真
「……きれい」
蒼
「ありがとう!」
理人は腕を組んで考える。
理人
「じゃあ俺は……
“ユニット01”。
機能的で、わかりやすい」
蒼
「理人らしい……!」
真
「……かっこいい」
蒼
「毒島くん、なんでも褒めるね」
真
「……いいものは、いい」
蒼
「名言出た!」
理人
「じゃあ毒島、最後の案頼む」
真はロボットをじっと見つめ、
少しだけ口元を緩める。
真
「……“ココ”」
蒼
「ココ?」
理人
「なんで?」
真
「……ここに、いるから」
蒼
「…………」
理人
「…………」
蒼
「毒島くん……
それ、反則だよ……」
理人
「いや……
なんか……
いいな、それ」
蒼
「うん……
“ココ”、いい」
真
「……じゃあ、“ココ”」
理人
「決まりだな」
蒼
「ロボ研の仲間、
今日から“ココ”です!」
真
「……ココ」
理人
「ココ、よろしくな」
ロボットは何も言わない。
でも、三人には
“嬉しそうに見えた”。
その静かな瞬間は、
三人だけの秘密の儀式だった。




