第22話 初めての“長距離走行”
放課後の廊下。
旧準備室の前から、まっすぐ伸びる長い廊下。
人通りは少ないが、完全に無人ではない。
蒼
「……ここでやるの、緊張するなあ」
理人
「いや、ここしか“長距離”を試せる場所がないんだよ。
教室は狭いし、体育館は部活で埋まってるし」
真
「……廊下、好き」
蒼
「毒島くん、廊下好きなの?」
真
「……静か。まっすぐ。
ロボットに似てる」
蒼
「それは……わかる」
理人はロボットを床に置き、
距離センサーの角度を微調整する。
理人
「今日の目的は“実績作り”。
先生に“活動継続していい”って言わせるための証拠だ」
蒼
「なんか急に現実的だね」
真
「……現実、大事」
蒼
「毒島くん、今日なんか名言多くない?」
理人
「毒島はいつも名言っぽいこと言ってるだけだよ」
蒼
「それ褒めてる?」
理人
「褒めてる」
真
「……ありがとう」
蒼
「毒島くん、素直!」
理人は深呼吸して言う。
理人
「じゃあ、テスト開始するぞ。
“まっすぐ進む → 障害物を避ける → 止まる”
これを10メートルの廊下でやる」
蒼
「10メートルって……長いよね」
真
「……長い。でも、できる」
蒼
「毒島くんの“できる”は信じる」
理人
「じゃあ、久保田。スイッチ頼む」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
ウィィィィィン……!
ロボットがゆっくり前に進み始める。
蒼
「おおおお……! 廊下で動くと迫力ある!」
理人
「速度安定してる……
センサーも反応してる……
いいぞ……!」
真
「……かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
ロボットは廊下の途中に置いたペットボトルに近づき――
ピッ、ピッ。
くるり、と右に避ける。
蒼
「避けたぁぁぁ!!」
理人
「よし……!
あとは止まるだけ……!」
ロボットは障害物を避けたあと、
まっすぐ進み――
ピタッ。
蒼
「止まったぁぁぁぁ!!」
理人
「成功……!
10メートル……全部成功……!」
真
「……すごい」
蒼
「毒島くんの“すごい”は本当にすごい」
三人はロボットの前にしゃがみ込み、
まるで“走り切った子ども”を見るような目で見つめる。
蒼
「なんかさ……
廊下を走るロボットって、
ちょっと感動するね」
理人
「わかる。
“学校”っていう日常の中で、
非日常が動いてる感じ」
真
「……ロボット、頑張った」
蒼
「うん、頑張ったね」
理人はロボットをそっと持ち上げながら言う。
理人
「これで……
先生に“活動継続”を言えるな」
蒼
「よし! ロボ研、続行決定だ!」
真
「……続く」
蒼
「毒島くんの“続く”は最高の言葉」
理人
「じゃあ次は――
“名前”だな」
蒼
「ついに来た……!」
真
「……名前、好き」
蒼
「毒島くんの“好き”は世界を救う」
理人
「救わないだろ!」
三人の声が、
10メートル走り切ったロボットの横で響いた。
その音は、
“仲間になる儀式”の前触れだった。




