第21話 ロボットの“顔”問題
旧準備室。
軽量化に成功した外装をまとったロボットが、机の上で静かに立っている。
蒼
「……やっぱり、顔つけたいよね」
理人
「出たよ。
久保田の“顔つけたい病”」
真
「……顔、好き」
蒼
「毒島くん、それはわかる!」
理人
「いや、わかるのかよ!」
蒼はスケッチブックを開き、
昨夜描いた“顔案”を見せる。
蒼
「見て! これ!
丸い目で、ちょっと優しい感じの顔!」
理人
「いや、目の位置そこだとセンサーの邪魔だろ。
超音波センサーの前にパーツ置いたら距離測れなくなる」
真
「……でも、かわいい」
蒼
「毒島くんの“かわいい”は正義」
理人
「いや、正義って何だよ!」
蒼は別の案を見せる。
蒼
「じゃあこれは?
センサーの横に“目っぽい模様”をつけるだけのやつ」
理人
「お、それなら干渉しない。
ただし、厚みは1mm以下な」
真
「……作れる」
蒼
「毒島くん、頼もしすぎる」
理人
「でもな……
顔つけると“ロボットが生き物っぽく見える”んだよ。
それって、いいのか?」
蒼
「いいに決まってるじゃん!」
真
「……いい」
理人
「いや、二人で即答すんなよ……」
蒼はロボットの頭部フレームを撫でながら言う。
蒼
「だってさ。
ここまで一緒に作ってきたんだよ?
“顔”があったら、もっと“仲間”って感じするじゃん」
真
「……仲間、好き」
理人
「いや、俺だって仲間だと思ってるけど……
顔つけたら、なんか……
“責任”が生まれる気がするんだよ」
蒼
「責任?」
理人
「顔があると、“感情があるように見える”。
そうなると、壊したくなくなる。
雑に扱えなくなる。
……なんか、怖いんだよ」
蒼
「理人……」
真
「……わかる」
蒼
「毒島くんも?」
真
「……顔があると、
“ごめん”って言いたくなる」
蒼
「それは……わかる」
理人は深呼吸して言う。
理人
「でもまあ……
ここまで来たら、つけてもいい気もする。
“仲間”って言葉、ちょっと刺さったし」
蒼
「理人……!」
真
「……つけよう」
蒼
「よし! ロボ研、顔つけます!」
理人
「いや、宣言するなよ……
でもまあ、やるか」
蒼はスケッチを見ながら言う。
蒼
「じゃあ、まずは“目”だね。
丸いのと、細いのと、三角のと……
どれがいい?」
真
「……丸いの、好き」
理人
「丸いのは軽いし、加工も簡単だな」
蒼
「じゃあ丸い目で決定!」
理人
「ただし、センサーの邪魔は絶対にしない。
位置はここ、厚みは1mm、素材は発泡板」
真
「……作れる」
蒼
「毒島くんの“作れる”は世界を救う」
理人
「救わないだろ!」
三人は机を囲み、
ロボットの“顔”を作り始める。
その作業は、
どこか“儀式”のように静かで、
どこか“青春”のように温かかった。




