第2話 三人の役割
旧準備室。
窓から差し込む夕日で、埃がふわふわ舞っている。
机はガタつき、棚は傾き、床には謎のシミ。
蒼
「ここ、マジで秘密基地じゃん。最高かよ」
理人
「いや、最高ではないだろ。机の水平出てないし。これじゃ作業にならない」
真
「……直す」
真は無言で机の脚を持ち上げ、ガタつきを確認する。
制服の袖にまた接着剤の跡が増えている。
蒼
「毒島くん、なんでそんなに工具慣れしてんの?」
真
「プラモ。家でずっと作ってる」
理人
「なるほど。じゃあ製作担当は毒島で決まりだな」
蒼
「決まりって……早くない?」
理人
「いや、見ればわかるだろ。あの手つき。俺らが触ったら逆に壊す」
真
「壊す」
蒼
「即答やめて」
真は机の脚に紙を挟み、水平を取る。
その動きが妙に手慣れている。
理人
「で、デザインは久保田だろ。スケッチ描いてたし」
蒼
「まあ、描くのは好きだけど……俺の絵、アニメ寄りだよ?」
理人
「いいじゃん。アニメ寄りの方が夢あるし。現実は俺が止めるから」
蒼
「止めるって言い方やめて。なんか悲しい」
理人
「いや、現実的に無理な肩幅とかあるだろ。物理的に破綻してるやつ」
蒼
「アニメロボの肩幅はロマンなんだよ」
真
「……ロマンは大事」
理人
「毒島まで味方するのかよ」
蒼
「じゃあ理人はメカ担当ね。重心とかトルクとか、そういうやつ」
理人
「まあ、俺がやらないと誰もやらないしな」
蒼
「自信家だなあ」
理人
「いや、事実だし」
真
「事実」
蒼
「毒島くん、君はどっちの味方なの?」
真
「……ロボットの味方」
蒼
「名言出た」
理人
「いや名言か? まあいいけど」
蒼はスケッチブックを開き、描きかけのロボットを見せる。
蒼
「とりあえず、こんな感じのロボット作りたいんだよね。180センチで、腕がこう動いて……」
理人
「肩の可動域広すぎ。人間でも無理だろこれ」
蒼
「ロボットだからいいんだよ」
真
「……作れる。たぶん」
理人
「“たぶん”が怖いんだよ!」
蒼
「でも、なんかいけそうじゃない?」
理人
「根拠は?」
蒼
「ノリ」
真
「勢い」
理人
「またそれかよ!」
蒼
「でもさ、三人いればなんとかなる気がするんだよね。
デザインと、理論と、手。
合体したら最強じゃん」
理人
「合体って言い方やめろ。なんか恥ずかしい」
真
「……合体、いいと思う」
理人
「毒島の“いいと思う”は信用できるんだよなあ……」
蒼
「じゃあ決まり。
久保田蒼:デザイン
三枝理人:メカ
毒島真:製作
ロボ研サークル、正式に発進!」
三人は机を囲んで拳を合わせる。
理人
「……で、まず何する?」
蒼
「180センチのフレーム作る」
理人
「いきなりそこ行くのかよ!」
真
「……作る。アルミで」
蒼
「ほら、毒島くんも言ってるし」
理人
「いや、毒島の“作る”は信用できるけど! でも! でもさ!」
蒼
「理人、深呼吸」
真
「……いける」
理人
「……はあ。わかったよ。
じゃあ俺は重心計算する。倒れたら終わりだからな」
蒼
「よし、ロボ研、今日から本気出す!」
真
「出す」
理人
「出す……のか?」
蒼
「出す!」
三人の声が、薄暗い旧準備室に響いた。




