第19話 外装試作
旧準備室。
机の上には、昨日決まった“外装デザイン案”のスケッチと、
真が持ってきたプラ板・発泡素材・工具が並んでいる。
蒼
「よし! 今日は“外装試作”だね!」
理人
「いや、試作とは言ってない。
“試作っぽい何かを作る日”だよ」
真
「……作る」
蒼
「毒島くんの“作る”は信頼できる」
理人
「いや、信頼できるけど……
まずは“どの部分から作るか”決めよう」
蒼はスケッチブックを開き、
昨日のデザイン案を指差す。
蒼
「まずは“胸パーツ”から作ろうよ。
ここがロボットの“顔以外のアイデンティティ”だから!」
理人
「いや、胸厚くしたら重心が死ぬって昨日言っただろ」
真
「……でも、胸は大事」
蒼
「毒島くん、それは名言」
理人
「いや名言じゃないだろ」
蒼は発泡素材を手に取り、
胸パーツの形をざっくり切り出す。
蒼
「こんな感じでどう?」
理人
「お、軽いし悪くない。
これなら重心もそこまで上がらない」
真
「……削る」
蒼
「毒島くん、削りたいだけじゃない?」
真
「……ちょっとある」
理人
「正直でよろしい」
三人は胸パーツをロボットのフレームに当ててみる。
蒼
「おお……なんか“ロボットっぽい”!」
理人
「いや、まだ板だよ」
真
「……でも、好き」
蒼
「毒島くんの“好き”は世界を救う」
理人
「救わないだろ」
蒼は次に肩パーツを作り始める。
蒼
「肩は丸くしたいんだよね。
ロボットって肩が丸いと“優しさ”が出るんだよ」
理人
「いや、丸いと重い」
真
「……丸いの、好き」
蒼
「毒島くん、丸いの好きなんだ」
理人
「いや、毒島は何でも好きなんだよ」
蒼
「でもさ、今日の美術の先生も言ってたじゃん。
“丸は安心の形”って」
理人
「言ってたな。
“角は緊張、丸は安定”って」
真
「……丸、安心」
蒼
「ほら! 丸は正義!」
理人
「いや、正義って何だよ」
蒼は肩パーツをロボットに取り付ける。
蒼
「よし、これで胸と肩が完成!」
理人
「じゃあ、立たせてみるか」
真
「……立つ。たぶん」
蒼
「毒島くんの“たぶん”は希望」
理人
「いや、希望じゃなくて不安だよ」
三人はロボットをそっと立たせる。
ロボットは――
一瞬だけ立ち、
次の瞬間――
ガシャァァァン!!
蒼
「倒れたぁぁぁぁ!!」
理人
「いや、そりゃ倒れるだろ!
胸と肩つけたら重心上がるんだから!」
真
「……でも、かっこよかった」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、気持ちはわかるけど!」
蒼は倒れたロボットを抱き起こしながら言う。
蒼
「でもさ……
倒れたけど、
“ロボットの形”になってきたよね」
理人
「まあ……形にはなってきたな」
真
「……好き」
蒼
「毒島くんの“好き”は正義」
理人
「いや、正義って何だよ!」
蒼
「じゃあ次は“軽量化”だね。
この外装をどうやって軽くするか考えよう」
理人
「そうだな。
軽くして、強くして、倒れないようにする」
真
「……削る」
蒼
「毒島くん、削る気満々だね」
理人
「じゃあ、次のテーマは“軽量化地獄”だな」
蒼
「地獄って言うな!」
真
「……でも、地獄」
蒼
「毒島くん!?」
三人の笑い声が、
倒れたロボットの横で響いた。
その音は、
“次の試練”の始まりだった。




