第16話 避ける
旧準備室。
机の上には、昨日“曲がって止まる”ことを覚えたロボットが置かれている。
蒼
「よし! 今日は“避けるロボット”を作る日だね!」
理人
「いや、避けるとは言ってない。
“避けるかもしれないロボット”だよ」
真
「……避ける。たぶん」
蒼
「毒島くんの“たぶん”は希望」
理人
「いや、希望じゃなくて不安だよ」
蒼はロボットの前に、
ペットボトルを置く。
蒼
「これを“障害物”ってことにしよう」
理人
「いや、ペットボトルって……
まあ、最初はそれでいいか」
真
「……敵」
蒼
「敵じゃないよ!」
理人はノートを開き、
超音波センサーの図を描き始める。
理人
「で、避けるには“距離を測る”必要がある。
超音波センサーで前の物体までの距離を測って、
近かったら曲がる」
蒼
「超音波って……イルカみたいだね」
真
「……イルカ、好き」
蒼
「毒島くん、今日も安定してるね」
理人
「毒島は“好き”の種類が多すぎるだけだよ」
蒼
「そういえば今日の生物の先生さ、
“生き物は危険を避ける本能がある”って言ってたよね」
理人
「言ってたな。
“避けられないやつは絶滅する”って」
真
「……ロボット、絶滅したくない」
蒼
「毒島くん、それは正しい」
理人はセンサーをロボットに取り付けながら言う。
理人
「じゃあ、プログラムはこう。
距離が20cm以下なら“右に曲がる”。
それ以外は“まっすぐ進む”」
蒼
「おお……なんか“AIっぽい”!」
真
「……AI、好き」
蒼
「毒島くん、AIも好きなの?」
真
「……かっこいい」
理人
「毒島の感性は独特だな……」
蒼はArduinoを接続し、
プログラムを書き込む。
蒼
「よし、準備完了!」
理人
「待て! 配線確認!」
真
「……昨日、止まった」
蒼
「毒島くんの“昨日止まった”は重い」
理人は慎重に配線を確認し、
深呼吸して言う。
理人
「……よし。
久保田、スイッチ頼む」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
ウィィィィィン……!
ロボットが前に進む。
蒼
「おおおお! 今日もまっすぐ!」
理人
「じゃあ、障害物に近づいたら――」
ロボットはペットボトルに近づき……
ピッ、ピッ。
くるり、と右に曲がった。
蒼
「避けたぁぁぁぁぁ!!」
理人
「避けた……!
ちゃんと……避けた……!」
真
「……かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、でも気持ちはわかる。
なんか“危険察知した子犬”みたいだよな」
蒼
「ロボットの赤ちゃんだよ!」
真
「……赤ちゃん、賢くなった」
蒼
「うん、賢くなったね!」
ロボットは避けたあと、
そのまま机の脚に向かっていく。
蒼
「やばい! 止まれ止まれ止まれ!」
理人
「止まれって言って止まるわけないだろ!」
真
「……止まらないね」
ガンッ!
ロボットは机の脚にぶつかり、
横に倒れた。
蒼
「倒れたぁぁぁぁ!!」
理人
「いや、でも……
“避けた”んだよ。
これは大進歩だろ」
真
「……避けた。すごい」
蒼
「毒島くんの“すごい”は本当にすごい」
理人は倒れたロボットを起こしながら言う。
理人
「じゃあ、次は“避けて止まる”だな。
制御を組み合わせる必要がある」
蒼
「組み合わせって……なんか格ゲーみたいだね」
真
「……コンボ」
蒼
「そう! コンボ!」
理人
「いや、コンボって言うなよ……
でもまあ、間違ってない」
蒼
「じゃあ次は“避けて止まるロボット”を作ろう!」
理人
「やるか……!」
真
「……やる」
三人の声が、
初めて“避けたロボット”の横で響いた。
その音は、
“次の進化”の始まりだった。




