17話 跳弾
「初級冒険者としてはかなりの強さですね。そのレベルで中級冒険者に近い力があります。しかしレベルが上がるごとにその差は埋まりいつかは追い越されるでしょう。腕輪の上位の物品があればよいのですが」
現在の強さを教えてもらえた。初級冒険者は1~15、中級冒険者は16~35、上級冒険者は36以上。強力な聖女の力を使えてパントさんは喜んでいる。でもそうだな、将来的には力法の腕輪より良い物を手に入れたいね。続いてシア。剣技アイスショット、ドネさんの喉元を突く。ドネさんはやはりノーダメ。同じくかなりの強さと褒める、しかもこれから強くなる。将来有望だな。
ディーナの番。彼女は防御力を試すことに。盾を構える。そこへ蹴りを放った。動かない、ほぉ、とドネさんが嬉しそうな顔をする。続けて拳で殴りつけた。少し押される。一旦距離を取り、軽く走って肩で体当たり。ディーナがふっとばされる。攻撃力もかなりのものだ。しかもまだまだ加減しているのがわかる。底が知れない強さだ。彼女は中級ぐらい。ただ、ダメージを与えられる者はいくらでもいるから満身はしないように、と。
最後は俺。しかしどの程度の強さかわからんのだよな。ルフラが弾丸が入った入れ物をこちらに投げてよこした。一番弱い魔法薬で、攻撃力が最も高い調合の弾だそうだ。銃に弾をこめる。
「ドネさん、彼の攻撃力は本当に未知数なんだ」
「そういうことなら、まずは地面を撃ってもらえますか」
それなら問題ない。廃墟の壁をよじ登り、高所から発射することに。地面に狙いをつける。どうせなら現在の最大値を知りたいな。チャージショットも使うか。スキルを発動、引き金が淡く光る。今だ。
大きな爆発音があたりに響く。そして発射された弾丸は地面をえぐる。小さなクレーターが出来上がった。驚く仲間達。そういや全力見せたのは初めてか。
「これは強力ですね。ですが問題ありませんよ」
この威力でも顔色一つ変えないドネさん。しかも大丈夫とか、恐ろしい頑丈さだ。気にせず撃てとルフラ。彼女の種族特性がそもそも滅茶苦茶、全ステータスアップに超回復能力、飛行能力まで持っている、と。お言葉に甘えて、地上に降りて彼女に向かって発射。前方に腕を交差させ弾丸を受けるドネさん。少し後方に動いたが、ダメージは全くなさそうだ。
「高レベル冒険者並の攻撃力ですね、ですが」
瞬時に間合いを詰め、突きを首元に。他の能力は初級の冒険者。力に溺れ見誤らないようにと助言してくれた。この火力でも全く効かない人がいるんだな。力の差がありすぎて、彼女の力の片鱗すら見れなかった。吸精聖女ドネ、恐るべし。
「ありがとうございました」
戦いを終えお礼を言う。上着を着て色付きメガネを付けていつもの様子に戻るドネさん。ではまたと聖女のねぐらへ帰っていった。皆と明日からの予定を相談。全員がレベル6になるまでカニを狩ろうということに。個人の目標、やりたいことも相談。
「私は魔剣が沢山欲しいかな。それから剣英殿の称号がいつかは欲しい」
魔剣は魔法効果を持った剣のこと。魔法武器とも言う。如意銃も一種の魔法武器。魔剣は非常に高価でまだまだ我々では買えないお値段。数は結構あるようで、店で売っていたり、オークションにも出品されることもある。
剣英殿は剣の使い手の地位向上のために作られた組織。数年に1度大会を開きその上位10名には剣英殿から称号が与えられる。1番なら壱英、2番は弐英。大会は世界各地から剣士達が集まり非常に盛り上がるのだとか。
「私はやはり、力を完全に魔力に変換する物ですね」
レミーは予定通りと。
「移動がもっと楽になる方法があれば良いのだが」
ディーナは移動方法。実際どのくらいの力が必要か、一度量ってみたいところだな。……俺は特にない。強いて言えば生き残るために強くなるくらいか。俺たちも宿屋へ。
一夜明け、今日もカニ狩りへ。連れてきたカニをレミーが聖女のスキルを使い撃破する。スキルが使えて嬉しそうだ。金属の戦棍はまだ持ってきている。実は戦棍殴りのほうが威力はある。SPも使わないため、基本はいつもどおりの戦い方になる。それでも回復が有用になったのは心強い。確実に戦力は上がっている。
狩り続け、全員がレベル6に。俺はスキル器用アップ、レアスキル跳弾を覚えた。器用は銃には全く関係がないスキル、いつものやつ。跳弾か、読んで字のごとくとして扱いが難しそうなスキルだな。とりあえず使ってみる。
「おお、これは」
跳弾を使おうと構えると、飛んでいくラインが表示される。撃ってみる。いつもならそのまま弾丸が地面に埋まるのだが、弾が地面に当たると跳ね返り、勢いはなくならず飛んでいった。木に撃っても同じく跳ね返る。障害物の硬さは関係なく弾が跳ね返るようだ。表示的には仲間に撃っても跳ね返りそうだ。