第9幕:本日遠足日和
お餅つきなんて問題にも比較にもならない。
樹根がしなり、巨木がうねり、それ等が津波となって轟く……まるで大地の怒り全てが差し向けられたかのような制圧爆撃は、それこそ数十秒も続いて。
全ての情報が吹き飛んだ。
もう肉の一片……ゲームだからドロップ以外ではそういうのはないんだけど、実際何も残らないのは目に見えて確定的で。
「―――お、おおぅ……おぅ」
「えっっぐぅ……」
「すっぺくたくるですねぇーー」
「本当に呑気な姉……。あーー、妖精王さま? その辺で勘弁してあげても良いんじゃないかなって思うのだわ」
これには皆もドン引き。
そんなにも怒りを覚えたのかと、数人が口々に攻撃の手を緩めない彼へ声をかけて。
「……うむ。―――すまない、逃げられたらしい。あと、止まらん」
「「え」」
「私がお願いしたのは最初の部分のみだ」
「―――後半は?」
「悔しかったのだろうな」
地団太なんだ。
攻撃したけど、逃げられちゃったのが悔しかった樹木さん達が足を踏み鳴らしてるみたいなものなのかな。
私たちの方も誰一人いなくならなかったって点で被害は皆無だし、こっちとしてはむしろ万々歳なんだけど……。
あ、果物拾わなきゃ。
………。
「さぁ、ブンヤ」
「知ってる事がまだあるのなら洗いざらい全部吐いてもらうのだわ」
「勘弁してくれませんかねぇ……。さっき食べたものも全部出てしまう」
「なら一緒に吐きなさい、どうせ実装されていない機能なんですから」
で。
あの後、色々あったけど。
現状目に見える情報としては、そこらを歩き回って散乱した果物を回収する私やルイちゃん、レーネ君とかがいる中で、アミエーラさんとかマリアさんが木に逆さ吊りに縛り上げたヨハネスさんを尋問してたりもする。
ヴァディスさんと悪夢さんも一緒に楽しんでるみたいで、注意するの怖いから皆そのままだ。
「うぅ、む……、善良なジャーナリストたる私がどうしてこんな目に……。この世界にも表現の自由、そして黙秘権があると信じているのですが」
「くたばりなさい」
こっちは粗方終わったけど、向こうはもうちょっと掛かりそうかな。
マリアさん、色々あって仲がいいから容赦ないんだよね、ヨハネスさんだけには。
……後レイド君にも?
「どうでも良いが終わったら縄返してくれよな。縛ってるそれ、結構作んの面倒なレアアイテムだぞ」
「幻想縛りの荒縄……。おー、Bランクか」
「捕獲用アイテム、PLとかにも使える系のやつね。なにに使うのかは知りたくもないけど」
それ私もこの前縛り上げられたよ。
「皆さーん? ほら、こんな不毛な事より、状況整理のが先ではありませんか? えぇ、その通りだと私も思います。ここは一つ、可哀想な一般人を下ろしてあげるのが―――」
「そうね」
「えぇ、情報を整理する時間を作りましょうか。行きましょう」
「あのーー?」
するらしい、情報整理。
………。
現状、人界と魔族領域で戦争が起こりそうな感じ。
元々、先のクロニクルで曲がりなりにも協力してた影響で小康状態っていうか、少しずつ歩み寄りましょうねーみたいなムードだったのが数日前の砦襲撃でちょっと関係悪化。
現実世界でもある領土問題みたいな感じで、些細な事がきっかけとなって、ズルズルと悪化の一途。
「つまりはそのような状態だな。……この場で我々の関係も終わりか?」
「お、やろうってのか? 銃スチャー」
「こっちはいつでも相手になる準備あるよ……!」
ヴァディスさんとレーネ君達がにらみ合う。
確かにビーンさんと二人掛かりならいい勝負になりそうだけど……。
「折角片付けたのに困るよ、それは。こういうのって、どうしてか皆暴力で解決したがるんだ。ね、いっそジャンケンで決めない? 悪夢さん」
「腕相撲じゃダメかしら」
「うーん、せめてあっち向いてホイ」
「指相撲でも良いわよ」
「存亡をんなもんに託すな」
「どうしても力勝負にしたくないらしいな。ルミエールさん。例の、道化師のスキルで筋力を増やせば良いじゃないか」
「それで勝てるならそうするさ、バディスさん。無理だろう?」
「……ふ」
どうしてか勝利の未来が見えなくてね。
あと、レイド君も「んなもん」って言うけど、腕とか指がなくなるのは困るんだよ。
「あ、そうです、妖精王殿」
「うむ? どうした逆さ吊り記者殿」
「襲撃前に言いかけていた言葉。秘匿領域とは、神々が秘匿した地ではない……と。アレは結局どのような意味だったのでしょうか。聞けずじまいでしたが」
Mr.ハングドマンことヨハネスさんがぶらぶらしながら問いかける。
そうだった。
重要人物が重要な事を言いかけた時に襲撃されて、その中で話を聞こうとした人が消されちゃうパターンだと思ってたんだけど、そうはならなかった。
結局おーちゃんさんは元気に一緒にいるわけで、聞けるわけで。
「まさか話せないという事はないですよね? まさか。知っていて話さないのはちょっと少しよろしくないかと」
「どの口?」
「そら記者だからな、論点ずらしも棚上げも得意だろ」
「自分は黙秘権がどうのとか言ってたのに」
外からがやがや投げつけられる切れ味に富んだツッコミ。
空中でぶらぶら避け続ける記者さんは、なんとかそれ等で縄を切れないかと苦心しているようで。
「「……!」」
またまた私達が目的を忘れかけている中で一つ、手拍子の乾いた音がこだまし。
空間を自由に浮遊していた精霊さん達が驚いたように跳びあがる。
手を鳴らしたのはおーちゃんさんだ。
「―――話すさ。途切れたきりそのままというのは不誠実だ。それに、後味も悪かろう? 余はいつまでも残る爽やかな甘みを好んでいてな」
「私も、私も」
「甘いの大好きでーす」
「では、諸君らの時間はあるか? 可能なら、向かいながら併せて話したいのだが」
「―――向かう?」
「ってーと……」
何処に?
「果ての遺跡だ。君たちが求めているであろう、な」
遺跡……。
お? それって。
「もしかして、ここにはあるのですか!? 完全な状態で残ってる遺跡が……!!」
「うむ、ある。そこに、諸君らの求めている答えの一つもあるだろう」
成程、確かにそれは目的の一つ。
彼って本当に相手の記憶を覗けたり出来ちゃうのかな。
それとも、PLの移動遍歴とかを見れちゃったりするのかな。
「けど、それっておーちゃんがずっと守ってる所じゃないんですか? 良いんです? 私達も見て」
どうやらルイちゃんはそこの存在を知ってたらしく。
けど、元々のお友達である彼女でも行ったことはないらしい。
どうして今?
「良いのだ、るーちゃん。隠し物など、やがて見つかる。どれだけ巧妙に隠したとて、それを完全に防ぎぎる事などどだい出来ぬのだ。こういうものは、相応しい者へ見せる。その時を誤ってはならん」
「時が経つにつれて人は忘れるものであるが、同時に忘れ去られていたものが見つかった時、彼等は以前にも増してその正体を暴こうとするものよ。それが人のさがゆえな」
「えぇ、まさに……!」
考古学とか人文科学みたいなものだね。
古い神社から謎の古文書とか見つかると、皆して全力で調査するみたいな。
ヨハネスさんも、感じるものがあるのか、そうだそうだと力強く頷いている。
「盗賊、あなたも隠し事あるなら早いうちに吐いた方が良いですわよ」
「余罪ですねー?」
「意味わかんねー」
けど、中には興味なさそうな側のひとも勿論いる。
特にレイドくんとか―――マリアさんの言葉に返しながら周囲をチラチラしている彼は、実際挙動不審。
「さっきから何してるんです? 貴方は」
「そらお前、見張りだろうが」
「意外、真面目!」
「変な所でちゃんとしてるから困るのだわ、このPK男」
けど実際レイド君ってちょっと変態なだけで現実主義だし。
それが必要だと分かってるらしい。
当然私も理解はしてるよ。
「戦力が足りないから一旦帰っただけで、多分全然諦めてないと思うんだよね、彼等も。前に遺跡を襲撃してたのって暗黒騎士さん達だったんだけど、それがアールさんの命令でやってた彼等だったとしたら―――多分、私たちがそこへ辿り着いちゃうのが一番困る事だろうし」
「そしてこっちも急に頭回る」
「ここら辺の人たちふざけるのか真面目なのかどっちかにしてほしいよー」
まぁ、つまりは、私やレイド君の考えは一つ……、油断はできないという事で。
ここから先で彼等が仕掛けてくる可能性は十二分にあるんだし。
「つまりだね? 私が言いたいのは……」
「「………!」」
「もっと遊びたいからこのまま直行しよう」
「―――相手の準備が整う前にすぐ行動しよう、でしょう!」
あ、そうそう。
それが言いたかったんだ。
「ふ……、考えは纏まったようだな。良いだろう、このまま余が案内する。しかし、本当に地上は大丈夫なのか? 一旦はろぐあうと、というのでも良いが……」
「メタぁ」
「けれど、確かに心配してる人たちもいるんじゃないですか? ルミエールさん」
「砦の件? 問題ないんじゃないかな。ムーン君達にもさっきの皆で仲良く写ってる集合写真送ったし」
「……撮ってましたね、そんなの。撮影技術だけは無駄に良いんですから、このブンヤ」
「撮影技術も、ですよ。お褒めの言葉有り難うございます、マリア殿」
けど、皆して私の後ろに立って頭に指立てようとするんだ、鬼みたいに。
よくある悪戯だ。
バディスさん達の剣ツンツンよりはずっと危なくないからいいけど。
皆で横並びの一枚目。
女性陣が前で男性陣が後ろ、ヨハネスさんが逆さ吊りの二枚目。
これらに関しては木に吊るされた記者さんが水揚げされたマグロみたいで、記念撮影みたいになってて面白い。
で、三枚目は私が皆に指立てられたり剣でツンツンされてる写真。
どれも綺麗に撮れてる。
「確かによく撮れてるよね~、良い思い出だ!」
「ふふっ。今頃ビックリしてるかもね。特に三枚目、私と団長が聖女様挟んでるの」
「いえーい、円卓くんみってるー? 聖女様が暗黒騎士たちにツンツンされちゃってまーーす……、って事だよね」
まさにね。
これで人間と半魔の仲良しアピールも出来ただろうし、多分今頃皆でほっこり……。
「してるわけないでしょう!! おバカ! どう見ても人質の構図……!」
「―――何でそっちの写真送ったのだわ!? 馬鹿なのだわ! 絶対妙な勘違いされるでしょうが! 人質にしか見えないのだわ!」
心配すぎだよ。
「ほら、文面も載せたし。―――こっちは大丈夫だから地上は任せたよ、って。ロランドさんとかチズルちゃんの所と一緒にPL達を纏めて中立的にどうにかできないかなっていうのも送っておいたし、向こうは任せちゃってもいいんじゃないかな」
「当たり前のようにビッグスリー集めて来るじゃん」
「会談でも主催しようってか」
向こうは向こうの人たちがどうにかする。
それよりも、私たちは遺跡さ。
おーちゃんさんも鼻を長くして待ってるし―――お?
「スマンな、余も手持ち無沙汰で……あ、鳥くん留まった」
「本当に一メートルくらい長くなってる……」
「嘘つくと伸びる木製人形かよ」
「……。アミエーラさん……、あれ……出来るんですの?」
「喧嘩売ってるのだわ?」
◇
後片付けも終わり、とうとう私達は最果ての遺跡なる場所を目指して裏・世迷いの森を出発したわけだけど。
どうやら行先にはここからそのままに向かえるらしくて、皆で森の中を行く。
「先の、秘匿領域とは何なのか―――という話だが」
……森の中とは言え、ここは普通じゃやってこれない特別な空間。
明らかに只ならぬ気配の道中。
歌物語に出てくるような真っ暗森を迷いなく進んでいく彼に遅れないよう、決してはぐれないように慎重に歩んでいく。
はぐれたら、本当に消えてなくなってしまいそうなほどの闇に包まれた森。
その中で、唯一の光源たる精霊さんたちを引き連れたおーちゃんさんは例の話の続きをしてくれて。
「勿体ぶる必要もない、簡単な事を言おうとしただけだ。よく言われる言葉―――神々が秘匿した土地。これは誤りだ。秘匿領域は神が秘匿したのではなく、神々へ、秘匿した土地なのだからな」
「「……………」」
………。
「あんまり重要じゃなさそう……?」
「いえ」
「むしろ特大のネタバレっぽそうだ」
事と次第によっては意味合いが全然変わって来るだろうからね。
疑問が増えたよ。
「おーちゃんさん、質問」
「許可する」
「その神々って、天上? それとも地底? 両方……、ではないでしょ?」
「君が今考えている通りだ、ルミちゃん」
………。
「ルミ、どっちなの?」
「―――天上だってさ」
秘匿領域は、天上の神々から観測できないように秘匿された世界だった。
……どういう事?
それで行くと、天上の神々黒幕説が濃厚なお味に。
「確かに裏付ける話はありますわ。前に博物館で見たジオラマ……妖精種に身を護る術、壁を与えたのは無明神ですし……地底神こそが味方だった?」
「けれど神話では、生まれ落ちた魔獣達の脅威に怯える人たちを不憫に思った天の神様たちが秘匿領域を作って、そこに妖精種を住まわせたって話だったのだわ。それに、妖精種とかの創造主が天上の神々っていうのも当たり前の話。その前提が覆って来るとなると……」
……。
……ん。
神々に秘匿した……。
「シアちゃん?」
「―――――」
居ない。
普段あんなに自分勝手に視界の端っこをうろうろしてるのに、そういえばここ暫くは反応すらない。
「あ。確かに、今ってチャット機能が使えないですわ、どうしてか」
「あーー、そういえばこの機能って神さまの力がどうのって話だったか? 確か」
「本物の神さまだけじゃなくて、神さまモドキシアちゃんでもダメなんだ」
「はーーい不敬罪」
「聖女がこれなんだもんなぁ。一般人がPKくらいしたって罰なんて当たらねえわな」
「変態は黙ってなさい」
これに関してはあとで調べるとして。
あと、気になってる事がもう一つ。
「もしかしておーちゃんさんもこの世界のシステムそのものに干渉できたりするの?」
「あぁ、出来る」
だよね。
良いこと聞けてスッキリだ。
「……。―――会話終わるなや!!」
「んう?」
「んむ?」
「いやそっからが大事な所オ!! どうなってるのか教えてほしいのだわ!」
「どういう事ですか? ルミエールさん」
「んーー? 彼のステータス見てみれば分かると思うよ」
皆の鑑定の視線が一斉に彼へ向く。
「おかしなところ……。妖精種に疑問符があるくらいですか」
確かにそこもだね。
あと一つ。
「皆っておーちゃんさんの名前どう思う?」
「ほほう、そこから気付いたか。ルミちゃん」
「実はね。……あ、ステータスをさっきコッソリ見ちゃったんだ。事後報告になっちゃうけど、ごめんなさい」
「良いさ。気付いていた。ゆえ、少し遊んだのだ」
やっぱり?
そんな感じした。
「名前―――妖精王……ですね。nameは普通に。特におかしなところは……」
「えーー? 私は普通におーちゃんですよーー?」
「私にも妖精王としか見えないわ」
ほほっ。
「因みに私にはおーちゃんさんって名前になってるよ」
「論外すぎる……」
けど、これこそそれぞれ映ってる画面が違うってコトにもなるよね?
「見ている人によって異なる見え方。そんなステータス画面今までになかったと思うけど……となると、これもまた見えているものが違うという事になって来るよね」
「……気付くなぁ、色々と」
「―――本当に全てを疑わなきゃいけなくなってきますわね、そう来ると。……王ってついてますけど、ノクスの方々とは関係ありませんよね? これは」
「流石に失礼じゃないのだわ?」
「あるぞ」
「「―――え」」
ほぼ冗談みたいな質問へ、おーちゃんさん自体が一瞬で肯定してくる。
ノワールさんやシャア・リさんとかと一緒? おーちゃんさんが?
「私は、大精霊が生んだ最初の残滓だ。彼等ノクスの王位らもまた、地底の大神たちが落とした無明の落とし児だ。その本質は何ら変わるものではなく、彼等と私は同一のものと考えても問題はない」
「……どゆこと?」
「種族的には同じ、みたいな」
「うむ。単に、生まれた場所の違いだ。私はここで生まれた。だが、彼等は帰るべき場所を失った。その最終目的は、大神を復活させ再構築された世界の上で再び故郷たる地底へと還っていく事にあった」
「帰りたいなら勝手に帰ってくれればよかったのに……」
「逆だろ」
「んー、そだね。多分、帰ろうとした結果が今までのクロニクル付随するクエストだったんじゃないかなー」
「うむ、鋭いな。その通り、あれらが地底へとかえるためには、今ある土台を完全に崩落させなくてはならない。でなければ門は開かぬのよ。もし彼等の宿願が叶っていたのなら、今ある世界は滅びていた。あっさりと」
「かるぅーーい」
まるで世間話みたいに重要な事が次々と出てくる。
本当に情報の宝庫だ。
「―――小出しだな」
「ヴァディスさん?」
と、今度は今までずっと聞き役だった彼女が主導権を握る。
「妖精王殿。あなたは知っている。過去に起こったことの多くを、恐らくは。だが、己の口からはあまり多くを語らないようにしているようだ。あるいは、何らかの術で語れないようになっているのではないのか?」
それは疑問。
確かに、おーちゃんさんは聞かれたことに大体答えてくれる。
けど、逆を返せば聞かれた事にしか答えないスタンスにも見え、回答の言葉も選んでいるように感じられ。
実際、前を行く彼は暫し口を閉ざし。
「……君たちは、遥か古の者たちが何故遺跡を作ったかは理解できるか」
「暇だから」
「やる事ないから」
「……。後世に自分達の事を伝えたいから、では?」
皆が答えるけど。
急にどうしてそんな事を……。
「数ある。私もまた、その当時から生き続ける一人だからな、知っているのだ。人は神が創ったもの。我ら妖精種もまた、天上の神の産物。それはまさに正しい。どれだけ禄でもない親であろうと、親は親であるように。どれだけ強くなったとて、神器を授かり神をも討てるほどの力を手に入れたとて。真には、我らは神々へ戦いを挑む事など出来ぬ。分かっているからだ、打ち込まれた楔、己らは決して逆らう事を許されぬのだと」
「数十年前に地上で起きた戦いもそうだ。あくまで魔族領域から襲来した者たちと、12聖という人界の守護者らの戦い。それは言うなれば神々の代理戦争。神そのものを相手にしていたわけではない。単純に、人は神に勝てぬから―――というわけでもない。実力の問題ではなく、繋がりの問題なのだ」
「笑うがいい。仕組みとして逆らえんのだよ、我らは。神々の不興を買う事を恐れているのだ、いまだにな」
「ぷぎゃー」
「ぷーくすくす」
「―――では、やはり、情報に制限が?」
「うむ。忌々しい事だがな。―――だからこそ」
「だからこそ、我らはそこを遺した。見るがいい、我らのせめてもの抵抗を」
「「……………」」
今におーちゃんさんが前方を出し示す。
そこには、見る限りで何処までも広がる、影で出来たジャングルのような森ばかりがあって、めぼしいものは何もない。
いや、多分―――。
「またそっち系か?」
「って事は―――先生、お願いします」
「うむ、しかとみているがいい……」
今に指を振った彼の前方に出現する、私たちのモノより数倍は大きな叡智の窓。
様々な情報が次々に表示されては消えていくそれは一瞬で形を変え、槍にも鍵にも見える……透き通った棒状の物体へと変化する。
「クリア・ランス―――無色の大鍵よ、道をひらけ。制限解除」
虚空へ……まるで鍵穴にソレを差し込むような動作があった。
彼が呪文を唱え、私たちが幾度か瞬きをして……やはり、変化は起きた。
「「!」」
………。
現れたそこは、未知領域で幾度か見たような水晶洞穴を思わせる……いや。
全てがクリスタルで構成されたような、透き通る空間。
遺跡の様式は今までに見た全てのモノが統合したようなごちゃ付いたもので、統一性はなく、あまりに広大。
気付かない方が逆におかしな、巨大な建造物群。
やっぱり私達が見えるものと見えないものは明確に区別して存在しているようで。
「全てのはじまりの場所。全ての遺跡の始祖―――深奥領域オルトゥスだ」




