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【66】Psycho Jack-3




 水谷は首を傾げながら周囲を見渡すと。喫煙所へ向い煙草に火を点けた。僕はいつも煙草を吸っている水谷に訊ねた。


「水谷さん。煙草って美味しいんですか?」


「いいえ。煙りに味なんて無いですよ。ファッションの様な物です。昔の探偵の仕草に憧れた名残です。」


そう言うと。水谷は煙を吐き出しながらその形を目で追い、灰を灰皿へと落とすと深く息を吸った。そしてもう一度煙を口に含むと火を消して駅へと向かった。駅へ向かう途中に水谷は僕に


「処で幸島岳大君。賢しい君の事ですから、既にPsycho JackのSNSアカウントはもう調べて居ますね。出来ればそのページを開いたままにしておいてください。」


そう言って歩き続け。少し僕の中では事件の起こったこの場所から離れる事に疑問が起こりながらも、僕は水谷の指示に従いPsycho Jackのアカウントを開いた。そして水谷は駅の中のカフェへと入り、そこでコーヒーを飲み始めた。水谷は僕に


「この事件のおかしな所はですね。普通、遺体をバラバラにすると言う事はどう言う時ですかね? 幸島岳大君。」



「そうか!普通は遺体をバラバラにする行為は遺体を隠す為に行いますね。それを態々(わざわざ)人目に付く様に他人の紙袋に入れた。」



「そうです幸島岳大君。その矛盾こそがこのPsycho Jackを知る事に1番重要な事です。そして、その前の警察を挑発するような手紙。彼は本当は誰かに止められたいのかも知れません。」


水谷は少し一点を見つめると悲しそうな顔をして、コーヒーを飲むとスマートフォンを取り出して。地図アプリを確認しながら僕に


「そろそろ終わった事件を、終わらせに行きましょう。」


そう言って立ち上り、改札を抜けて電車へと乗り込んだ。水谷は電車の中で僕に、まるでこの世界を哀れむかの様に言葉を溢した。


「矛盾はいけない事の様に言われますが、人の心は常に矛盾を抱えていて。それは仕方の無い事であり、それがその人物を投影する光と影の境界かも知れませんね。」


僕は水谷のその言葉の持つ意味を少し考えて


「それが欲望と理性の境界なんですかね。」


そう答えると、水谷は暗くなってきた電車の窓の景色を見ながら


「生と死のジレンマなんて酔狂な物に、人は心を奪われてはいけません。」


そう纏めると、中折れ帽を深く被り溜め息を吐いた。僕達は2つ駅を過ぎると電車を降り、二人で駅前の商店街を抜けると住宅街が在り。街灯は在るが他は家から溢れる明かりだけで周りは薄暗く、たまに人が通る程度であった。


 僕は水谷の後ろを歩きながら周囲を見渡すが、特に変わった風景でも無く。歩いていると、たまにカレーの匂いが鼻を掠めていた。水谷は一軒の家の前で立ち止まり、スマートフォンを取り出して地図アプリを見ている。



 そして二人でまた歩き出すと児童公園が在り、その前の煙草屋で水谷は自動販売機で飲み物を買うと1つを僕にくれた。僕はその缶を見ると『おしるこ』だった。僕は


(何でおしるこだよ。)


そう思いながらも礼を言うと水谷は、おしるこを飲み始め煙草に火を点けた。そしてひと息吐くと


「幸島岳大君。スマートフォンを貸してくれませんか?」


水谷にそう言われて僕はスマートフォンを水谷に渡すと、水谷は地図アプリを開き地図上から行き先を設定すると僕に渡して


「それを飲み終わったら、その位置へ行って待機していただけませんか。」


「解りました。そこで僕は何をやれば良いんですか?」


「そこで目立たない様に待っていてくれれば良いです。それだけで。」


水谷と僕はそんなやり取りをしながら、おしるこを飲み。僕はおしるこの甘ったるさを口に感じながらも飲み干して、ゴミ箱へと缶を捨てると地図アプリに従い移動した。




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