【60】Reptilian-5
気付けば彼は、その生き物の巣を全部食べ尽くしてしまい他の巣を見付ける為に移動する事にした。
彼はある日、大きな川を見た。それは遠くまで向う岸まで見えない程に大きな川だった。変な臭いがする。汗の匂いに似ているけれど違う
。草が水辺で腐った匂いにも似ているけれど、それも違う。
彼は恐る恐る大きな川に近付くと匂いは更に強くなっていく。見たことの無い生き物が岩を這いながら素早く動いている。そんな彼の目の前に大きな川に浮かぶ箱を見付けた。中に食い物でも有るのかと覗き込んだ時に彼は足を滑らせて箱の中へと落ちた。
彼はその箱を出ようと始めの内はもがいてみたが手も届かずにツルツルとしている。そしてその箱の中で出られずに何日も過ぎた。その時間は彼には理解出来なかったが兎に角に腹が減った。
そんな自分の意識が有るのか無いのかも判らない時に箱の蓋が開き大量の魚が塩辛い水と共に流れ込んでいた。それは見たことの無い魚であったが
(食べる事ができる)
そう思った彼は魚に噛りついた。食っても食っても無くならない魚を。腹は膨れたが水の中では寝る事も出来ない。彼は水で浮いた体で有れば出口に手が届くと思い、手を伸ばせば遂に箱から出る事が出来た。
彼が箱の外に出ると目の前には真っ暗な空に有るにも関わらず。キラキラと色んな色に輝く建物が在る。そして彼は周りを見渡すとあちらこちらに自分と似たような形をした生き物が居た。彼はそれを見て思った。
『ここなら食べ物がたくさん有る』
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夜になり水谷探偵事務所で、水谷と乙野が目を覚ますと千香子が煎餅を食べながら恋愛ドラマを観て
「こんな素敵な恋をしたいけど。何で私の周りは変人ばかりなのかしら?」
「貴女も変人だからですよ。」
頭を掻きながら水谷が身体を起こし
「知らない心理を見ると知りたくて抑えられなくなるのは、立派変態ですよ。」
そう言いながら。水谷は流し台へ行くと歯磨きを始め。それを見た乙野が
「あーあ。歯を磨いちゃったよ。ミントの香りなんて動物が1番嫌うのに。」
「じゃあもうお風呂にも入って良いですかね?乙野夜君。」
「ダメだよ水谷くん。殺されちゃうよそんなんじゃ。」
乙野はそう言うと欠伸をしながら立ち上り。千香子へ
「ぺチコは話したい事が有るんでしょ?何でReptilianは動かないの?」
千香子はテレビの画面を消して。真面目な顔をして
「私達や警察はReptilianを獣の様だ。と思ったでしょ?それって人間の持つ本能の範囲で考えてしまっているけれど。Reptilianはその名の通りに私達が思っているよりも原始的なの。Reptilianは繁殖の為に女性を襲っているの。快感を求めているのでは無くて子孫を増やすために。」
「それって結局の所、セックスがしたいって事ですよね。」
「珠樹は本当にそう言った事には疎いのね。違うわよ快感を求めるものと、繁殖が目的の性行為は。人間は獣と違ってコミュニケーションの一環としても性行為の存在は有るのよ。」
水谷と乙野は千香子の話がよく解らないので。テレビを点けて『わくわく動物おともだち』と言う番組を見ながら
「乙野夜君。カピバラって可愛いですね。」
「水谷くん。カピバラは可愛いよ。」
そう言いながら二人でコーヒーを飲んでいる。千香子はテレビの画面をもう一度消して
「はいはい。恋愛の話じゃないから大丈夫よー。恋に臆病なオジさん二人。つまり繁殖が目的だからReptilianは健康な女性の排卵日を狙っているの。だから今までの被害者は全て妊娠していた。」
「つまりReptilianは狙いを定めている女性の排卵日に向けて狩りの準備をしていると。」
「きっと生理を匂いで判断して待っている。と言う事ね。同じ女性して腹立たしいけれど相手は獣よりも原始的な行動だから文句も言えないけれど。」
千香子がそう言うと。乙野はライフルケースを掲げ、時計を見てU公園へと出向く事にした。




