家族会議
「ジャーン! これなーんだ!」
木工職人の父親のアルパと畑仕事に出ていた母親のナールを呼び出し、引きずってきた妹とウルア、四人で囲んだテーブルの上に、白い卵が置かれていた。
「卵だな」
「卵ね」
「ちょっとお姉ちゃん! こんなの見せる為に、朝の忙しい時間だってのにみんなを集めた訳!? 確かにデカいけどさ! とっとと料理しちゃおうよ」
マールの言葉に両親も頷き、台所へ持って行こうとする。
「待った待った! コレは只の卵じゃないんだから! ……多分」
まだ何も分かっていないのに食べられてしまいそうだ。
「買ってきたのか?! いくらだったんだ」
「そうよ〜。正直に言いなさい。なんで物々交換にしなかったの〜」
「そうじゃなくて! ここ見て、ここ!!」
ビシッと指差した場所を皆が覗き込む。
「なに? 落書き?」
「ダメよ〜ウルア。殻だって使い道はあるのよ〜」
「があっ! そうじゃない!」
あまりの話の通じなさに頭を抱えてしまう。
「しかしなんの卵だろうな。どれどれ」
ゴンっと鈍い音が響く。
「硬いなぁ」
アルパがゴンゴンとテーブルに卵を打ち付け始めた。
「だああああ!! ちょっ、ダメだって。やめてぇぇぇえ!」
慌てて卵を取り上げようとするが、その動作に驚いたアルパが手を上げて防ごうとし——
「あっ」
ゴッ
床に落ちた。
……………………
……………………
………………。
草刈り鎌を使用した長女による父親襲撃は、家族の尽力により未遂に終わった。
「それでは改めまして、この卵について検討していきたいと思います」
「欠けてるけどな。はっはっはっ」
「お前が言うなあ!」
ウルアが怒鳴るも、全くこたえた様子はない。
落ちた衝撃で卵は欠けた。
しかし割れてはいなかった。床に凹みを作り、表面の一部を欠けさせたが、その内部はまだ殻で覆われていた。
そして拾った欠けらの側面が黒い。目を凝らせば、びっしりと細かい文様が描かれているように見える。
これらのことから、この卵が通常のものではないと、漸く家族に納得させることができたのだった。
「ダンジョンの卵だと思う人、手ェあげて」
アルパとマールの手が挙がる。が、一人挙げていない人物がいた。
「母さんは違うと思うの?」
ナールは小首を傾げている。
「んー。というか、それって私達じゃ判断できないでしょ〜」
これにアルパも同調する。
「まあ、俺らには知識が無いもんな」
「アルパの言う通りよ〜。それに違うとしても、こんなに怪しげな卵、食べるのはちょっとねぇ」
確かに何の卵かをここで論じていても正解は分からない。
ウルアも納得した。
「じゃあこれ、どうしよう」
「はーい。お母さんからの提案は三つです」
「はい、ではナールさん。どうぞ」
手を挙げて許可を求める母に先を促す。
「まず一つ。ダンジョン見学に行ったリット君に聞いてみる」
「採用!」
「お姉ちゃん、まだ二つあるから」
マールが呆れたようにいえば
「脈あるのか? まあ無駄な努力は無いと言うからな」
アルパが余計な事を言って、ウルアに剃り残しの髭を毟られる。
いつもの事なので、ナールはそのまま続けた。
「二つ目はね、王都の商会で照会してもらう…あらやだ。うふふ」
全員スルーする。
「三つ目はね、他の人に食べて貰う」
「え?」
「だから、とっても怪しい卵でしょ〜。でもスっごく美味しいかもしれないじゃない。もうね、割るのもお願いして、味見もしてもらうのよ〜。様子を見て、大丈夫そうだったらみんなで食べましょう」
「母さん、だったらさ、何も一つに絞る事ないんじゃない? リットさんに見せて、分からなかったら王都にも付いてってもらうでしょ。良い値で売れそうだったら売って、やっぱり分かんなかったら、誰かに食べてもらおうよ」
「おー! いい考えだなマール。食べさせるのは、お迎え近そうなのと体力ありそうな奴、どっちがいいかな」
「ちょっと待って! 犯罪者の家族は嫌よ!」
慌ててウルアが止める。
「やあね〜。冗談よ〜」
「そうだぞ。お前の家族を信じろ」
「そうだよ。(バレなきゃ平気だよ)」
どうしてか家族を信じきる事が出来ないウルアだったが、まずはリットに相談するという事で意見の一致をみた。
まだ1日目の朝ですね……。




