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拾った卵

 西の辺境国で現在確認されているダンジョンの数は8つある。


 ダンジョンとは。それは塔のような建造物であったり、地下深くに潜る物、平原に広がる迷路など形態は勿論、規模においても多様性のある迷宮の事である。


確認されている最大のものは塔型で50階以上あると言われているが、窓もないので外観からは判断が付かず、強い生物が多いので未だ踏破した者は居ない。生息しているのは昆虫や鳥・陸生動物など、ダンジョンごとに決まった傾向が見られ、大抵が大型化している。


 特定生物の生息域で、危険な場所であるにもかかわらず、入るものは後を絶たない。素材として利用する為だ。

 大きくなれば、その体を支える為強度も上がる。肉も大量に手に入るし、脂や皮・骨にだって利用価値がある。ダンジョンの管理者に相応の金を払い、今日も少なからぬ人間達が挑んで行く。

 そんなダンジョンは、卵から生まれる――――。




 ◆




 青空が広がり朝露に光る緑は美しく、とても清々しい朝だった。

 ウルアはガタつく扉を開けて外に出た。そろそろ修繕が必要かもしれない。三ヶ月前からそう考えているので、多分まだまだこのままだろう。


 ひとつ大きな伸びをして、腰に籠を括り付け裏山へと向かう。山菜が沢山採れる時期なので毎日のように山に入っている。

 途中、同じ町に住むリットという青年が声を掛けてきた。そのまま立ち話。

 少々トラブルはあったものの、にこやかに別れてまた歩き出す。


 肩まである栗色の髪を弾ませ、調子っ外れの鼻歌を歌いながらズンズン進んでいると、何かをコツンと蹴飛ばした。


 石かとも思ったが、サイズと重さに違和感があった。目で追ってみると、そこには手のひら二つ分よりも更に一回り大きい、白くてまあるい物がある。


 彼女には、なんとなく予感があったのだ。今朝の卵が双子だった事。いつもちょっかいを掛けてくる、隣の家の息子に会わなかった事。憧れの人リットが、声を掛けてくれた事。それがスカートの裾を下着に巻き込んでいる事を教える為だったとしても。


 つまり、今日はついてる——ウルアはほとんど確信した。

 これはアレじゃないだろうか。コケコ鳥の卵!


 コケコ鳥とは白いフサフサした羽を持つ大型の鳥だ。あまり飛べなく気性も荒いが、騎獣として役に立つ上、肉は勿論、卵も美味い。常に人気はあるが繁殖が難しく、とても高く売れる生き物だ。


「幾らで売れるかな〜。家族で食べるのもいいよねぇ」

 うきうきしながら卵に触れた瞬間、パッと閃光が走った。思わず手を離す。


「え。なにコレ」


 既に光は収まっていた。


 何か危険な生き物の卵だったのだろうか。

 恐る恐る覗き込むと、薄っすらと模様のようなモノが見えた。


 体を出来るだけ離しながら腕を伸ばし、指先で突いてみる。――普通の卵の様に思える。

 更にツンツンと確認していると、コロンと転がった。


 何事も起こらないようだ。


 近寄って手に取ろうとしたとき、ソレに気が付いた。地面に接していた部分が上になったのだろう。白に黒文字が目立つ。

 そこには【ダンジョン】と書かれていた。


「これ、ダンジョンの卵だ……」



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